第65話 決 戦2 ~庄野VS杉村~
~AAMに触れる5秒前~
「ひとまる。合図を送ったら俺の左手だけ覆わないようにシールドを使ってくれ。」
「キュッ?!・・・キュウ・・・。」
(・・・これは、賭けだ。
考えられるAAMの性能は3つ。
大当たりは完全追尾。先端が当たるまで追尾するだけ。
当たりは完全追尾+対魔法特化、もしくは魔力を関知したら爆発。天馬かひとまるに当たりさえしなければ全く問題ない。
ハズレは・・・生き物に触れたら爆発。この性能は考えられる可能性が高いうちのひとつ。これだけは引きたくない。
大ハズレは触れたら爆発若しくは魔力関知で爆発+対魔法特化。シールドを張っても貫通するならもうお手上げだ。
だが、可能性は極めて低い。そこまで改造をしてくることは無いだろう。
89式の時に違和感を感じていたが、アパッチを見て確信した。
好きなところに当てられる銃なのにわざわざ全弾を律儀に単発で撃っていた。単発で撃たなくちゃ効果を発揮しない、としてもその効果を発動させないで、連発でばらまいた方が良い距離にいたのに、あえてやらなかった。
アパッチもそうだ。弾切れ、燃料切れをしない、OH-1程の運動性能があるのに魔法攻撃は回避行動しないのに、槍や岩の攻撃は過剰に避けている。
・・・つまり、杉村の改造した武器にはメリットを得られる分、デメリットを抱えなければならない制約のようなものがあるんだろう。
そう考えれば、アパッチのFCRが簡単にリーの槍で外れた事に納得がいく。恐らく、デメリットは・・・いや、今はいい。
天馬に対してはデロデロの飛竜で対処をしていた。・・・とすれば、AAMを可能な限り改造してるとは思えない。必要最小限と考えるべきか?
・・・俺はギャンブルには弱い。せめて、大ハズレの予想だけは当たってくれ。)
AAMがまもなく庄野に直撃するタイミングで手綱から手を離し、後方へ飛ぶ。
(後ろから触れれば・・・そうすれば・・・複製した時に正面に発射できる!。)
左手を伸ばす。伸ばすと同時に左手首から先を残してシールドを張る。
(当たりだった時にシールドごと触ってしまえば魔力を関知して大爆発されたら天馬も巻き込まれるかもしれない。だから、振れる手だけはシールドの外に残して触れれば・・・。
・・・しかし、・・・ハズレを引いたら・・・。)
一瞬、目線を左下におとす。
数分前にはあった左足が視界に入る。
(・・・悔やむな。無いものは無いんだ!
・・・左手がどうなったって、しょうがない。
今、こいつを止められる可能性が一番高いのは俺なんだ。
・・・やるしか、ないんだ。)
手がAAMに触れる。
触れた瞬間に世界が真っ白になる。
耳の奥が直接叩かれたような衝撃を受け、意識が朦朧とする。ほんの数秒、気を失っていたのか、はたまた意識が無いままなのか分からない。
時間と共に視界の映像がくっきりとし、頭の中もはっきりとしていく。
庄野が唯一理解出来たことは3つ。
生きていること。
空中を落下していること。
ハズレを引いたこと。
左の手首から先にはあったはずの手と皮手(手袋)が無い。変わりに赤い液体がドバドバと垂れている。
「・・・。・・・うぅぅぅ!
痛ッッッッッッッ!!あぁぁぁぁぁ!・・・くッ・・・そがぁ!!」
落下しながらも止血帯を取り出し腕に巻き付ける。
同時に天馬が庄野の下に入り、やんわりとその背中に乗せる。
(止血帯・・・次に使う所要が発生したら、複製だ。余計な魔力は使えない・・・大怪我は出来ないぞ・・・。)
自衛隊が使っている止血帯の『CAT』と呼ばれるものは高性能であり、米軍が主流で使っている。
『怪我をしたらまずCAT』と言われる程に性能が良い。実際、動物の足が出血した際にどの止血帯が有効か検証をした結果、CATの止血が他の物に比べて圧倒的に性能が良いものである。故に信頼度は高く、その使用方法が正しければ死ななかったであろう米兵も少なくない、と言われている。
唯一欠点を挙げるとすれば、この止血帯は使い捨てという所である。止血帯は2回使えない。2度目は締める際に弛んでしまい、十分な効果を発揮しない可能性があるからである。
天馬に股がり、無い左手をアパッチの方向に向ける。
(・・・距離がある。爆発の煙で見えないから、俺が生きてるかどうか分かって無いだろう。2発目のAAMが発射されてないのはそれが理由だな、おそらく。
・・・じゃあ・・・俺のAAMをくらえ。)
コピードールが庄野の左肩に乗る。
庄野の左手の前に発射後のAAMが出現する。
(そうか、発射中のミサイルだから・・・熱が・・・ッ!・・・左手が・・・いや、手だけじゃない、腕が、焼ける!!
だが、ここが正念場だ!行けぇ・・・っ!)
~現在~
「ふぅっ!ふぅぅぅ!!許さねぇ!!許さねぇぞぉ!庄野ぉぉぉ!!!」
アパッチから何十発ものASRが庄野の乗る天馬に向けて発射される。
(・・・感情に流されて判断力が落ちている。とは言っても、このまま攻撃されたままじゃこっちもAAMを撃てない。どうにかして攻勢に転じないと・・・。)
ヒラリとかわしながら次の手を考えるが、アパッチからの無限に発射されるASRを避けるので精一杯。
庄野を攻撃しながら地上に対しても逐次ASRは発射されており攻撃の隙が無い。
膠着状態が続いているかのように見えたのは数秒の事だった。
「・・・聞こえるか、従理。」
「・・・魔王様?!無事ですか!」
「・・・あぁ。・・・桜間が死んだ。」
「・・・私に言ってくれたら、いつでも会えますから。」
「・・・今は良い。マジックゴーレムを出せるか?」
「・・・マジックゴーレム?何で今更・・・、いや、出せます!すぐに出せますよ!」
「・・・出現場所は・・・。・・・だ」
「・・・へ?えーと・・・わかりました。合図を頂ければ、すぐに・・・。」
(マズい、天馬の息が上がってきてるな。このままじゃもたない。1度アルフさんの後方にいって、地上からAAMをもう一発撃った方が良いかもしれないな。)
城門前へ移動し、攻撃のタイミングを掴んだ方がいいと考え、高度を下げて城門へ向かう。
(・・・ん?あれは・・・?)
見ると、城門の入り口付近にマジックゴーレムが立っている。位置としてはアルフとリーの後方であり、二人は気が付いていない。デルも同様である。
(マジックゴーレムを召喚したのか!アルフさんとリーが・・・。・・・。
ん?
何で、マジックゴーレムを召喚したんだ?
というか、何であの位置なんだ?すぐに気付かれてバラバラにされるのがオチだ。
何より、ASRをぶっ放してたら巻き込んでしまうだろうに・・・。
何か、理由があるはず・・・。ASRでも壊れにくいゴーレムではなく物理に弱いマジックゴーレムの方が良い理由・・・。
・・・。物理に弱い・・・だから・・・。
・・・魔法防御力が高い・・・。
・・・ッ!
ヤバい!!!!)
気が付くとアパッチから地上へのASRの発射が止んでいた。
同時に庄野が城門前に到着すると、庄野を狙っていたASRも発射が止んでいた。
「庄野さーーーん!大丈夫かねぇーーー!」
地上からアルフの叫び声が聞こえる。
「アルフさん!リー!!逃げろぉぉぉぉ!!!」
庄野の叫び声と同時にミサイルが接近してくる。
狙いは庄野でもなく、地上のアルフ達でもない。
ミサイルは城門へ目掛けて真っ直ぐに飛んでいく。
「ひとまる!拳銃寄越せぇ!!」
「キュッ!」
すぐさま拳銃を構え、飛んで来るミサイルに狙いを定めて命中させる。
庄野とミサイルの距離は思ったより近く、爆風に巻き込まれて天馬もろとも地上へ落ちてしまう。
「ぐぅぅッ!(片足が無いと五点着地も不十分だ。衝撃の緩和が出来なかった・・・)。」
「おい、庄野。しっかりしろ!」
「無茶し過ぎだね。大丈夫かね?」
アルフとリーが庄野に駆け寄る。
「はぁ、はぁ・・・。逃げ・・・逃げてください!
・・・2発目が、来ます!出来るだけ被害の少ない・・・遠くに!早く!」
気が付くと2発目のミサイルが発射されている。
「・・・クックックッ・・・あーッハッハッハァ!!判断を見誤ったなぁ!庄野ぉ!
俺がマジックゴーレムを狙ってる、それに気がついたんだろう。流石だ。
だが!対応要領は極めて不良だ!あのままマジックゴーレムに命中させてその辺のゴミどもは見捨てるべきだった・・・。結果、お前は巻き込まれて死ぬんだ。
魔法防御力が高ぇマジックゴーレムに!
対魔法特化の高ぇ!魔力を吸い込んで爆風を拡大するヘルファイヤをぶち当てれば!
即席の大爆発兵器が完成だ!
今度こそお別れだな!じゃあなぁ!!!!!」
「チィ!・・・オッサン!庄野を頼むぜ!俺はデルと他の兵を可能な限り避難させる。」
「分かったね!庄野さん、壁の裏に入るね!」
「わかりま」
言葉が言い終わる前に。
庄野が壁の裏に入る前に。
ヘルファイヤはマジックゴーレムに直撃する。
爆風はマジックゴーレムの破片から破片へと続いていき、渦を巻くように様々な方向に物や人を押し込んでいく。
庄野は城内方向へと吹き飛ばされた。
何度も体を地面に打ち付けられ、横たわったまま動けなくなる。
(・・・力が、入らない。このままじゃあ・・・。)
何とか立ち上がろうとする庄野の上から瓦礫が降ってくる。
「・・・。」
(避けられない。頭部を強く打ったからだろうか、全身の痛みが原因だろうか、指一本すら動かせない。
・・・。・・・すいません・・・。
・・・姫様・・・。)
目を閉じる。真っ暗な世界が広がる。
花の香りが脳を貫く。
地面に瓦礫が激突する。
痛みが引かない。自分が生きていることを実感する。
(・・・運が、良かった。助かったみたいだ。)
目をあける。
明らかに自分の真上に瓦礫が降ってきていた。
しかし、庄野は瓦礫の側には居れど僅かしか当たっていない。
瓦礫の下には見知った女性が血塗れになっている。
(・・・え?)
頭の中が真っ白になる。
違う人物であってほしい。そんな思いだけが先行する。
現実は常に目の前にある。
血塗れの女性が着ている服はサクラがいつも着ている服だった。
(・・・姫・・・様・・・?)
目線を上げる。
目の前にあった城門は無くなり、あったはずの場所には再びマジックゴーレムが現れる。
遠くでアパッチが庄野を見ている。
庄野の真っ白な頭の中に黒い感情が流れ込む。
庄野の中にある人格が何度も『殺せ』『殺せ』と告げる。
『殺せ』『殺せ』『殺せ』殺せ』『殺せ』『殺せ』殺せ』『殺せ』『殺せ』
庄野の脳内はそれ以外の事が考えられなくなる。
「・・・殺す。殺す、殺す、殺す、殺す、殺す。
・・・殺す。」
ゆっくりと立ち上がる。
全身ボロボロ、左の手足は無い。殺意だけが庄野を奮い立たせる。
「殺してやる・・・殺してやる。
・・・杉村ぁぁぁぁ!!!!」




