第64話 決 戦 ~庄野VS杉村~
(おいおい・・・マジかよ・・・。
何で、見つけられた?
いや、そんなことより・・・俺の『探知』で見つからなかった・・・?)
リーは腕を組んだままボーゼンと立ち尽くす。
「・・・よし。動けそうだな。飛べるか?」
「オォーーーーン!」
復活した天馬は翼を広げ、空に向かって叫んだ。
(・・・ヒヒーン、じゃないんだな。羽が生えてるけどそれ以外は馬だし、一緒だと思ってたんだけど・・・。
まぁいい。これで・・・やつと戦える!)
「あー、ちょっと低くなってくれないか?」
「オォーーン。」
天馬は動かない。
庄野は天馬に乗ろうとするが、片足しか無いため足が上げられない。
(乗馬する時に何か方法があるんだろうか?リーに聞いてみるか。)
「リー、天馬の乗り方なんですが。」
「・・・。」
「・・・リー?」
「・・・あ?あー、悪い。天馬に乗れねぇよな、その足じゃ。
待ちな。抱えてやるからよ。」
リーの肩を借り、庄野は天馬に乗り手綱を握った。
「よっこらせっと。天馬に乗るの初めてだろ?とりあえず手綱を持っとけば良いからよ。天馬に付いてるこの手綱は乗り手の意思をそのまま天馬の脳内に伝達する事が出来る魔道具だ。だからお前が手綱を掴んでる限り、指示をしたりする必要は無い。
仮に手を離して落馬したときは・・・。」
「いっかんの終わり、ですね。」
「いんや、さっきまで掴んでたやつを追いかけて背中でキャッチしてくれるよ。地面に激突するまでに間に合えばな。」
「・・・わかりました。」
(AIが搭載されてようなものか。
とりあえず、アパッチとの勝負中に余計な考えが減ることは良いことだ。)
「じゃあ、行きます!リーは引き続きアルフさんの援護を。可能なら攻撃を試みて欲しいです。」
「おぅ。引き受けたぜ。」
勢いよく天馬は空に向け飛び立った。
(・・・アパッチの位置はあそこか。ヘリコプターの死角から近づきたいんだが、あいつらもリーが使うような探知で接近を察知するだろう。
俺は普通科、あいつは航空科。空という戦場においては向こうに地の利がある。
いや、知の利がある、かな。
三次元の戦いならやつの方が圧倒的に有利だ。策もへったくれも無いな。
突っ込んで一気に接近してケリをつける。
対応の暇を与えたら・・・殺られるだけだ。)
「杉村さん、生き残りと思われる天馬の一頭がこっちに向かって接近してきます。」
「何ぃ?今更天馬が単騎で突っ込んできて、何が出来るってんだ・・・。
・・・ん?
・・・んん?
・・・後進だ。
後進だ!!高度上げて後ろに下がれぇぇ!!
迷彩服着てるやつが乗ってるじゃねぇか!!
生きてやがったのかぁ!!庄ぉ野ぉぉぉぉぉ!!!」
「行くぞぉ!杉村ぁぁぁぁぁ!」
(とにかく、接近しないことには勝負にならない!可能な限り・・・いや、限界まで突っ込めぇ!!!)
突風の如くアパッチに向けて天馬は空をかける。
その天馬に向けてアパッチの下部に装着されている兵器が牙をむける。
「舐めんじゃねぇ!ヘリコプター史上最強と言われたアパッチが、羽つきの馬なんかに負けるかよぉ!」
「急上昇だ!30mmガンなら、上には撃てない!
・・・もらったぁぁぁ!!」
アパッチの発射する弾を避け、後ろに廻ろうと急降下を始める。
下を覗くとアパッチの機関砲は尚も庄野の方へと向いている。
「はっはぁ!!
こちとら改造アパッチだ!OH-1と同じ運動性能を兼ね備えてんだよ!
空中で1回転出来るに決まってんだろぉ!!」
「クッソ!
(左右に振りながら離れるか・・・。
いや、離れても勝てない。
・・・行くぞ。)」
急降下していた天馬は急旋回をし、アパッチにめがけて速度を増していく。
「相討ち覚悟で来てますよ!杉村さん!
今の態勢じゃ回避出来ないですし、対象が見えてないから俺も『テディベア』を出せないですよ!」
「・・・クックックッ・・・。あぁ、そうだなぁ。回避できねぇなぁ。
でも、それはよぉ。
お互い様だよなぁ!!
死ねやぁ!AAMだ!!」
本来出るはずのない方向にミサイルが発射される。
「あーーッハッハッはぁ!!避けられねぇよなぁ!そんな速度じゃあ!車や自転車とは違ぇ!空を飛ぶ者にブレーキは無ぇんだよぉ!」
「・・・想定通りだ。
行くぞぉ!!」
天馬は更に加速を続ける。庄野も目を開くのがやっとであり、ミサイルとの距離を正確に把握できていない。
「(多分・・・)ここだぁぁぁ!!」
2秒もすればミサイルと直撃すると思われるタイミングで庄野は手綱を離してジャンプする。
ミサイルは天馬と庄野の間をすり抜けて、急上昇し再び庄野と天馬を追い続ける。
「はっ!避けたか、運の良いやつだ!
だが、俺の改造AAMを避けられるか・・・?こいつは・・・
命中するまで追うぜ|?」
「まだ、追ってくるのか・・・!
チッ!ジャンプして避けられた時がチャンスだ思ったが、そんなに上手くはいかないか・・・。」
庄野はミサイルに追われ続けている。
間隙を狙うようにアパッチからの30mmも飛んできており、避けるので手一杯。
改造アパッチの性能は異常である。下部の30mmだけはほぼそのまま。ASR、AAM等のミサイルは機首 (ヘリコプターの向いている方向)を無視して撃ちたい方向に撃てる。ヘルファイヤは正面にしか撃てないが、その威力は絶大。運動性能は偵察ヘリコプターのOH-1と同等。
故に、どんな態勢からも地上には定期的にミサイルが飛んできており、リーも手が出せない。アルフも壁を張り続けなければならない。
(・・・じり貧だ。このまま逃げ続けても無駄だ。
・・・やるしかないのか?
また・・・姫様に怒られるな。
いや、怒られて済むならそっちの方が良い。
失敗をしたら・・・そもそも失敗しなくても、実行するだけで・・・死ぬだろうな、多分。)
手綱を力強く握りしめる。
「・・・最後に、部隊の皆に会いたかったなぁ。
・・・すいません、姫様。・・・約束は、守れないです。」
天馬の速度が一気に落ちる。ミサイルと庄野の距離は目と鼻の先まで詰め寄った。
「天馬の体力が尽きたか!終わりだなぁ!庄野ぉ!!」
ミサイルが徐々に庄野に近づいていく。
残り5m。手綱を片手で持つ。
(あと少し・・・。)
残り4m。じわじわと距離が詰まっていく。
「ひとまる。頼むぞ。」
「キュウ・・・。」
残り3m。目の前に死が迫る。
「そんな声を出すな。大丈夫だ・・・。」
残り2m。ミサイルの後方から出ている熱がチリチリと伝わる。
(・・・方向が大切なんだ。あとは、タイミングさえ・・・。)
残り1m。手綱を離してミサイルの方へと飛び出す。
「ここだぁぁぁぁぁぁぁ!!!ひとまる!やれぇ!」
「キュッ!」
左手でAAMの側面に触れる。
ミサイルの後方から無理矢理触りに行ったため熱で服と皮膚が溶ける。
それを防ぐかのように小さな壁が展開される。
「あっはっはぁ!掴んで向きを変えようってか?それとも、炸薬を抜いて効果を無くそうって魂胆か?アイデアは誉めてやるぜぇ・・・。
だがな、このAAMは・・・生物に触れたら爆発するんだよぉ!
じゃあな!庄野ぉ!あーーーッハッハッハッハッハァ!!」
空中で爆発音が広がる。
空高くには、凧が上がるように庄野の迷彩服の上衣がヒラヒラと舞っている。
「流石に終わっただろ。いくら庄野哲也でも、AAM直撃は無理だ。」
「・・・。」
「よし、完全にサリアンをぶっとばすぞ。桜間、高度を下げろ。」
「・・・。」
「・・・おい、桜間。」
「・・・。」
「桜間ぁ!聞いてんのか?!」
「・・・杉村さん、すいません。俺はここまでです。」
「あ?てめぇ、何言ってる?」
杉村の言葉と同時に桜間のコックピットのシールドが吹き飛ぶ。
「おい、桜間ぁ!」
操縦席に立ち上がる。
桜間の目の前からAAMが飛んできている。
「何ぃ!どうやって・・・?桜間、テディベアだ!!」
「無理です。たとえ避けたとしても、あのミサイル永遠に追いかけてきます。
・・・爆発するまでは。」
「・・・!!!。待て、まだ、対応策はあるだろ・・・。おい、おい!桜間ぁ・・・!
桜間ぁ!やめろぉ!」
杉村の目から涙が流れる。
「・・・帰ったら、堀ノ内の大津苑で部屋会やりましょう。
杉村さん、銀平の方がいいっていっつも言いますけど・・・俺は堀ノ内の大津苑が好きなんですよね。旨いっすよ?あそこ。
・・・約束、ですからね?
じゃあ・・・先にいってますね、部屋長。」
「桜間ああああああぁぁぁぁぁ!!!!」
再び空中で爆発音が広がる。
爆発音と共に杉村はサイクリックスティックを後方に思いっきり引き、後方へと下がる。
杉村はミサイルの飛んできた方向へと目をやる。
迷彩シャツを着ているボロボロの男が天馬に乗ってアパッチを見ている。
「・・・やりやがったな。
やりやがったなぁ!!
庄野ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
ふぅっ!ふぅっ!・・・許さねぇ!許さねぇぞぉ!!
全員ブチ殺してやる!殺してやるぅぁぁあ!!!」




