第60話 開 戦5 ~VS魔王軍~
※閲覧注意
庄野の目の前にいる10体近くのゴーレムがゆっくりと歩み寄ってくる。
(・・・とは言ったものの、正直厳しい。どうにか出来る具体的な策があるわけじゃない。
コピードールに魔法を使わせようにも魔力が足りない。
魔力が帯びてる武器の生成はコピードールの魔力消費量がわからない。リスクがでかすぎる。
銃は全く効かない訳じゃない。当たった部分は僅かに欠けている。鉄帽が弾くようなものなら、垂直に直撃させれば・・・いや、それが出来なかったら意味がない。
消費魔力の低いもので効果のあるもの・・・。
・・・俺の知っている効きそうな武器、何かあったか?)
ゴーレムから距離を取る。幸いマジックゴーレムに比べて固い分重いためか、動きは鈍い。
頭に手を当て、中指をコンコンと何度もつつきながら過去に使ったことのある武器を思い浮かべる。
(俺が昔に触ったことがあるもの・・・。
64式、62式ではどうにもならないだろう。7.62mmでやれるとは思えない。89式、MINIMIは尚更だ。
79式、87式、01式、84mmは効果があるとしても使う魔力が多いだろう。何となくだが、サイズが大きかったり形状が複雑だったり、重いものは複製の魔力消費量が多い。感覚だがそんな気がする。無理だろう。
対戦車地雷は炸薬が実際に入っているものを触ったことがない。形だけ複製しても意味がない。
となると・・・。
手榴弾、TNT・・・。やれるのか?)
「きゅうまる、手榴弾を複製だ。」
「キュッッ!!」
コピードールの頭の上から手榴弾が1つ複製される。庄野はそれを手に取り、 外観を確認する。
(手榴弾・・・俗にいうM26手榴弾。少し前、『触ったことがあるものなら複製出来るのではないか』と思い付きで複製をしたわけだが・・・あの時にちゃんと確認をしてなかった。
外観・・・ピン・・・問題無しだな。よし。)
「きゅうまる、TNTを複製。」
「キュッッ??」
首を傾けながら気合いの入ってない抜けた返事が返ってくる。
「・・・TNTだ。」
「キュ??」
首を傾けながら気合いの入ってない抜けた返事が返ってくる。
(・・・そういえば、あの時に手榴弾を最初に複製出来たのはひとまるだけだったか。爆弾を複製するには、頭の良いひとまるじゃないとダメって事か・・・ん?それなら、何で手榴弾を複製出来た?
いや、待てよ・・・?
・・・そうか、能力値か。コピードールの中でも経験値を積んで上がる能力に差があるのかもしれない。
きゅうまるは他の奴らと比べて魔力量が多いのもそれなんだろう。
個性だと思っていたが・・・同じコピードールでも個体値が違う、と考えれば今手榴弾は複製出来たのにTNTが複製出来ないのに理由がつく。
・・・あー・・・、そうか・・・。
TNTは試しに触らせてもらっただけだ。
手榴弾は幹部候補生学校で実際に使用した事がある。
複製のルール、何となくだが理解したぞ。
物に関しては、触ったことがあるかどうか。そして、使用した事があるかどうか。この二つが能力値に影響して複製の可否に関わるって事だろう。
その長さや使用頻度で色々変わるんだろう?まだわからない事はこれから調べれば良いとして・・・。
・・・やるか。)
ゴーレムが徐々に距離を摘めてくる目の前で手榴弾を右手に持つ。
(・・・手榴弾を勘違いしてる連中が多いんだが、投げた後が問題なんだよな。アニメや漫画みたいにその辺にポイッと投げて適当に伏せたり隠れたりする映像がある。
アホだ、あんなの。
手榴弾が爆発して怖いのは、衝撃波とたかが数ミリしかない金属の破片だ。衝撃波は避けられない。数メートルしか離れてなければ死ぬだけ。伏せてようが何をしようが、衝撃波は避けられない。
金属の破片だってそうだ。小石位の大きさがものすごい速度で飛んでくる。顔面に当たれば皮膚が裂けるだけじゃ済まない、貫通して顔の内側まで刺さる。目に直撃しなくとも、刺さり方が悪ければ運が良くて失明、最悪は・・・死だ。
・・・投げて届く距離まで来たな。)
「・・・ピン抜け!・・・投げぁぁぁぁ!!!」
ゴーレムの集団へ向けて手榴弾を投げる。投げた直後、ゴーレム達へ背中を向け、コピードールを抱えて全力疾走をする。
(・・・1・・・2・・・さんん!!!!)
『3』を心の中で唱えた瞬間に地面へ向けてダイブする。ズザーッと何メートルかヘッドスライディングをかます。
空気が割れる音が響く。
「・・・何の音だね?庄野さん、何をしたんだね?
・・・大丈夫かねぇ? 」
「おいおい、空気が揺れたぜ・・・?(庄野の持ってる武器か・・・?やっぱ、強力な武器を隠し持ってたか。へっ。ますますうちに欲しいねぇ。こりゃ、生き残らねぇとなぁ。)」
「グルアァァァァァ!!!」
「おぉぉぉぉぉぉ!!!」
全身が毛むくじゃらの獣人、全身が岩のような男が両手を掴み合って膠着状態にある。
「やらせないぞぉ!サリアンはぁ!俺達が守るぅ!!」
「サリアン!粉砕!ガラ人!邪魔ぁ!」
「サリアンがぁ!君たち異界人に対して悪い待遇をした事は悪い!しかしなぁ・・・!!今ここに住む民を!無関係な人間を巻き込む必要は無いだろぉ!」
「・・・無関係。」
獣人の方が手を離し、距離を取る。
「そうだ、無関係だろう。貴族や上の連中は酷いことをしただろう。だが、民は何もしてないだろぉ!・・・だからこそ、城内で暴れる事は俺が許さん!!」
「・・・民、してない・・・ナニモ?」
「あぁ、そうだ!やりあうならここじゃなくても良い!どうだぁ!」
「不要玩。你知道什么。」
「ん、何だって?」
「不要玩ッ!你知道什么!!!(ふざけるなっ!貴様らに何がわかる!!!)」
「おぉ!言葉がわからんぞぉ!人間の言葉で話してくれぇ!」
「・・・『変異』」
呪文のように唱えた言葉と共に先程までの獣の姿はなく、長く白い髪がスラッと流れ、手足は細長く、一言に美しい女性がそこにはいた。
「・・・。女、だったのか。」
「ええ。私、女。言葉、苦手。片言。」
「・・・どうして、こんなことをする?戦う必要は」
ボラブが言い終わる前に、返事もせずに一瞬で距離をつめる。
顔、胸が触れるか触れないか。それほどの距離までその女性は接近をした。
女性は握りこぶしを作る。ボラブとその拳の距離は数cmも無い。
「無いだ・・・おぉ?!」
「・・・『寸勁』。」
瞬間、女性はその場に僅かに落下したかのように宙に浮く。その瞬間に出した拳によりボラブは何メートルも吹き飛ぶ。
女性は決して筋肉質ではない。つき出した拳は振りかぶったり、時間を止めて何発も入れた訳ではない。
『寸勁』という技である。
『発勁を極めた人間からすれば長勁(普通のパンチ)を短い距離でも打てるのが寸勁。実戦で使う技では無い。』という意見もあるが筆者としては大間違いと考える。
というのも、寸勁は短い距離でも殴れる技であって戦いでは使えない、という現代武道に染まった人間が陥る間違った認識であり、それは逆である。
まず、寸勁が出来なければ、長勁は出来ない。出来たつもりになってる長勁が30年後に出来ないなら、寸勁は絶対に出来ない。逆に、30年後も寸勁が出来れば、長勁も出来る。
寸勁の腕を伸ばしたのが長勁だから、である。
そもそも、寸勁という技が存在する中国拳法や日本古武道では『何時いかなるときでもその技を使えるよう』と、力ではなく脱力と呼吸、そして体の使い方で技の威力を最大限発揮することを目的としている。
本当の戦いがある場所はリングや畳の上ではない。平地もなければ小石も転がってる、下手をすれば階段で戦うかもしれない。そんな場所でステップを踏んでアッパーを打つのか、という話である。
それに、刀が流行った時代に腕を伸ばす技を使うのは当時の刀を使う側からすればカモだった。理由はシンプルだ。剣道の面をうつように振りかざしてくる相手に対しては刀を下から上に切るように構えてるだけで相手から切られてくれる。
腕を伸ばし切るパンチをうつようなら、それにあわせて刀を縦に構えたり、少し刀を降るだけで拳を真っ二つに出来る。
故に、長いリーチの武器と戦うときは懐に入って攻撃されないようにして、かつ、寸勁のように懐で最大限効果を発揮する技で戦うのが中国拳法しかり、日本古武道しかり共通の戦法である。
「ごぶふぅぅぅ!・・・ぐ、がぁ!・・・何だ?今のはぁ・・・。」
「恨み、ある。憎しみ、ある。サリアンの、民。見殺し、した。私、私の、子。殺した。お腹の中。話、終わり。再见。」
「・・・何だって?子供を・・・殺した?」
「・・・『変異』」
女性の雰囲気が再び変わる。何本もの尖った手足が蜘蛛のように地に刺さる。女性の上半身は人間の形は残っているが魔物の姿に豹変した。
「おい!どういう事だぁ!」
「サリアン人は、私ノ赤チャンを殺シタンダヨォ!私は、サリアンに来タ時ニハお腹の中に赤チャンがイタンダヨォ!それを!サリアン人ガ!魔石実験で殺シタンダ!私ノお腹の中で!魔石に変えヤガッタ!
・・・『異界人だろ?赤ん坊を産むのを手助けしてやる、来い』って言うカラ・・・ついて行ったら・・・私の赤チャン!魔石にシヤガッタ!私の体の中デ!許サナイ!
産マレソウニナッテ、道端で苦しんでイテモ!誰も助けようとしなかった!『異界人が子供を産むな』と私を蹴リヤガッタ!許サナイ!!!
殺しテヤル!全員!返セ!私の!
赤チャン!返せェェェェェェェ!!!!」
手足が鞭のようにしなり、ボラブを吹き飛ばし、家屋をバラバラにしていく。
壊した家の中には逃げ遅れた女性と男性がいた。
「ひぃ!助けてぇ!」
「や、やめろ!殺るなら俺だけに・・・ギャァァァ!!」
返事も聞かず、男性は鋭い針のような手足に穴だらけにされて絶命する。
「やめて、やめてぇ・・・アぁぁぁぁぁ!!。」
尖った針が女性器を貫く。ドクン、ドクン、と何かを吸い上げるように管が動く。
「ククク・・・。」
「・・・え?何・・・?あ・・・あぁ・・・嫌ぁぁぁ!!!」
乱暴に針が抜かれる。女性は生きている。
「アヒャヒャヒャヒャ!!!アーヒャヒャヒャヒャヒャ!!お前も!私と同じダョォ!!!」
「あぁ!!赤ちゃん・・・返して!あたしの赤ちゃん、返してぇ!」
「返シテ?良イヨォ?ホラァ!!!アー!モウ死ンジャッテルネ!」
管からビチャビチャと赤い液体が流れる。かろうじてその赤ん坊と思われる皮膚のようなものが少し見える。かえってそれが赤ん坊だったことを物語る。
「・・・あ・・・。」
女性は絶望し、その場に座り込む。
「アーヒャヒャ!!サイコーだよ!ソレガ見タカッタ!
復讐ダ!お前タチへの!サリアンの!赤チャン!全員!殺しテヤルルルゥゥゥァァァ!!!」
化物は更に町の奥へと走り出した。




