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尚、士気については旺盛であります!  作者: 固太 陽
第一章
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第59話 開 戦4 ~VS魔王軍~

「・・・よし。



きゅうまる。頼むぞ。」


「キュッッ!!」


拳銃を構える。

マジックゴーレムの群れに対し射程ギリギリの距離を(アーク)を描くように移動しながら一体ずつ倒していく。

魔石を装備しておりその効果で素早く移動できる。ストーンシャワーは遠距離攻撃であるため、魔法攻撃を受けることもなく、距離を維持しながら軽快なリズムでマジックゴーレムを崩していく。



その作業の繰り返し、それで終わりだと庄野は思っていた。









残り、概ね50体になる頃までは。








「はぁ・・・はぁ。」



(そろそろ、疲れてきたな。1時間近く緩急をつけた動きをしている。流石に休憩が欲しい・・・だが、ここで休んでる場合じゃない。全部倒してからだ・・・。)





「はぁ・・・きゅうまる。

・・・。・・・きゅうまる?」







「キュウ・・・。」



「どうした、きゅうまる!銃だ!おい、早く!・・・まさかッ!」




(魔力切れ?!嘘だろ!

いつものコンディションなら50丁は複製出来るだろうに!・・・まだ20丁も複製してないじゃないか、どうした・・・?)




きゅうまるをダンプポーチから出して様子を見る。

怪我もしていなければ病気をしている様子もない。

本当にただの魔力切れであった。



「どうして・・・?



ッ!マズイッ!」





真後ろでマジックゴーレムが腕を振りかざしている。

左腕を横に、肘を突きだしている。



(右腕の振り回しがくる・・・バックステップして一旦距離を取るしかない!)





タンッ、と音と共に後ろに下がる。


約50cm程後方へ移動する。



(・・・え?)




もう一度後方へ下がる。


約50cm程後方へ移動する。






(何で・・・!魔石が効果を発揮しない、何で!!何でだ・・・!




・・・!!)




ゴーレムの腕が横に振り回される。




「ぬぅぉぉぉぁぁぁ!!」





すかさず地面に伏せて直撃を凌ぐ。

しかし、僅かではあるが鉄帽にかすり、顎紐が千切れて遥か彼方へ鉄棒が吹っ飛ぶ。




「痛ッッ!クソッ!(・・・顎紐がボロボロで助かった・・・。2型みたいにガッツリと顎を固定するタイプだったら頚椎折れて死んでた。・・・運が良かった。)」




直ぐ様立ち上がり、きゅうまるを抱えて全力で走る。





(・・・考えろ、・・・考えろ!


何で、魔石が使えなくなった?

考えるんだ・・・。

何でだ?いつもはこんなこと無かった。試しに何回か使ったときだって、電池切れのように使えなくなることもなかった。魔石に傷も無かった。壊れることは無い。・・・ならば。



・・・いつもと違う事をしてるんだ。




・・・何だ?)





全力で走りながらも庄野の脳内はフル回転を続ける。








あーでもない、こーでもない、と考えている最中、マジックゴーレムは何も持っていない腕をまるで岩を投げるように腕を上方へ振り上げた。












庄野へ目掛けて岩の雨が降り注ぐ。

鉄帽は先程吹っ飛ばされたため頭は野晒し。

防弾チョッキはヌークに燃やされて灰になったため体は迷彩服のみ。

クラスター爆弾のように広がった多数の岩や石が庄野を襲う。







「ぐぅぅぅ!!!・・・痛ぇ・・・クソォぉぉ!」







岩の雨が庄野へ直撃する。

コピードールを怪我させまいと抱き抱え、岩を受けながら走り続ける。

頭部からは血が流れ、流れた血は目に入る。

背中には尖った岩が刺さり、迷彩服に赤色の液体が滲む。

腕、肩、足にも岩は叩きつけられ、バランスを崩し倒れそうになるのを必死に耐える。



何かを抱えて走るのは普通に走るより体力を消費する。特に、腕が使えない状態で走るのは体感的に通常の倍体力を消耗する程である。




(・・・肺が痛い。全身が痛い。

血が目に入って前が見えない。

いつになったらこの攻撃は終わるんだ・・・。

いや、そんな事より魔石の問題を考えないと、いや、銃を複製して反撃してからでも・・・いや、銃は複製できないから魔石の問題を解決するんだ。)













流血しながらの全力疾走により脳内に霞がかかったかのように考えがわからなくなる。


出血と酸欠は思考を徐々におぼろげにする。


(・・・。


あれ・・・。

何で、走ってるんだっけ・・・?







早く、銃の複製をして・・・。









・・・。


俺は・・・






死ぬのか?)















庄野の思考は完全に停止した。



苦痛から逃げるように妄想と逃避のために、脳内は現実から離れた世界に埋め尽くされる。




(あぁ・・・日本に戻るんだ、俺は。



死んだら、幽霊になったら、あっちに戻るんだ・・・。




・・・ここでの生活は、刺激的で楽しかった。



サクラ姫には嫌われてしまったけど。








このまま、終わりか・・・せめて、この戦いが終わって、誤解を解いて・・・一緒に、色んな国を回りたかった。





ガラにももう一度行きたいな。

ガラ王はどうしているだろうか?

とても強かった。もう二度とやり合いたくは無いな・・・。






ソーラにも行きたいな。

カエデ女王とまた色々と話をしたい。

聞きたいことも沢山ある。





そうだ、何で魔石の効果が切れたのだろうか、これは聞いておきたい。

同じ過ちをしないようにしたい。

幹部として、2度目の過ちは恥だ。何としても・・・。





・・・。





・・・。






・・・?



何だろう・・・引っかかるな。



魔石の事、どうすれば良いか、答えを知っているような・・・。



あぁ、確か・・・貰ったときに説明を受けたんだ・・・。






















ちょっと待て。説明されたぞ!

ふざけんな!思い出せ!!)



流血は止まらない、止まっていた思考が再び動き出す。

ダラダラと血を流しながら体に鞭をうち、全力疾走を継続しながら思考を再開する。



















(思い出せ、思い出せ、思い出せ、思い出せ、思い出せ、思い出せ、思い出せ、思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ!!!!!!!!)




念仏のように「思い出せ」と何百回も唱える。そんな事で思い出せれば苦労はしない。それでも庄野は藁をも掴む思いで唱えた。











「思い出せ、思い出せ・・・。







・・・そうだ!確か、あの時ッ!」










魔石の腕輪をカエデから貰った時の事がスライドショーのように流れる。庄野の記憶として鮮明に思い出された。

















「魔石の腕輪、複製したものを何個か貰っても良いですか?」

「別に、構わないわよ?」



「ありがとうございます。」

「でも、おにーさんが使っても効果は最初の数分だけよ?魔石って使用者の魔力を糧として効果を発揮する種類のものだから。体内の魔力を別のものに変換する補助が目的なの。」




「なるほど。ちなみに治癒魔法で魔力供給をし続ければどうなります?」

「それは・・・理論的な話で言えば、おにーさんでも使えるけど・・・。でも、どうやるの?」




「こいつらがいれば、それができるんです。

・・・こういう風に、2匹以上コピードールがいれば可能です。」

「ふーん。でも、それってコピードールが一匹の時は出来ないでしょ?気を付けて使わないと・・・。」





















(バカか!俺はぁ!!!!


何で、こんな、大事なことを忘れていた・・・!





・・・いや、仮に思い出していたとしても同じ事をやっていた。

コピードールには付近の誰かが魔力が切れそうになったら俺の命令無しでも互いに治癒を使うように、と指示をしていた。

だから、付近の魔石の魔力が尽きそうになったのを自分の判断で治癒で回復していたのだろう。

・・・こいつなりに考えてやった行動だ。下手するともっと早く魔力が切れて最悪死んでいた。そもそも、的確な指示をしてやれてなかった事が悪いんだ。)





「きゅうまる!()()()()()()()()()()()()()





「キュゥッ・・・!」




腕のなかぐったりしていたきゅうまるが徐々に元気を取り戻す。




「・・・拳銃、複製出来るか?」

「キュウ・・・。」

(無理そうだな。魔力が少なくて済むものなら出来るかもしれないが・・・。)



「弾倉だけはどうだ?」

「キュッッ!」

(・・・よし。

・・・弾倉だけでも及第点だ。)





弾倉を交換し、再び射撃を開始する。


(まずはこの岩の雨をを浴びせてくるマジックゴーレムを撃破する。以降は近いやつから順番だ。魔力のストックが乏しい。早めに決着をつける・・・!)



一体ずつ、確実に倒していく。

これを倒してアパッチとの戦闘に加勢しようと最後の力を振り絞る。

重い右腕を上げて拳銃を構える。残りのゴーレムに弾丸を発射する。



カキョン。

マジックゴーレムを撃ってきた時とは異なる音がする。

拳銃から発された音ではない。

弾が直撃した目の前のゴーレムからその音は聞こえた。




(・・・弾が、はじかれた・・・?

・・・まさか・・・。



・・・そりゃそうだ。()()()()()()()


・・・こいつは、マジックゴーレムじゃない。物理攻撃への耐性が強化された別のゴーレムだ。)




はぁ~、と長いため息をつく。

落胆、諦め、死期の悟り。もうダメだ、と思いながらも内心は諦めていなかった。


(まだだ・・・まだ、終わるわけにはいかない!


俺の心はまだ折れていない!士気旺盛だ!諦めるかぁ!)



拳銃を握る右手はいつもより強い力で握っていた。

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