第57話 開 戦2 ~VS魔王軍~
(悩んでもしょうがない、やるか。)
「アルフさん。城門の防御をお願いします。どんな兵器を使っているのか判断がつかない。色んな種類の壁で対応して使ってる武器の特性を把握すれば防げるはずです。恐らくですが、対魔法に特化した兵器ですので、魔力をあまり使わない壁なら対応出来ると思います。
俺はマジックゴーレムを倒します。」
「待つね。庄野さんがいないと魔力切れになった時に困るね。サクラ姫は別の役割があって前線には出られないから、治癒が使えるコピードールがいないと、ワシだけじゃ殺られるね。」
「コピードールを置いていきます。ななよん、ひとまるはアルフさんのサポートを。きゅうまるは俺と。」
「良いのかね?一匹だけじゃ、魔力が切れたときに・・・。」
「きゅうまるは他のコピードールと比べて魔力が多いので他の2匹よりは持久力があります。危険だと判断したら逃げます。」
「・・・わかったね。無茶苦茶しても良いけど、帰って来てね。庄野さんの帰りを待ってる人、沢山いるからね。」
庄野はきゅうまるを弾帯にぶらさけでいるダンプポーチに入れてマジックゴーレムに向かう準備をする。
両腕に赤色の魔石の埋められた腕輪を装着する。
(カエデ女王から頂いた魔石の腕輪。身体能力を飛躍的に向上させるもの。基礎的な身体能力に比例して効果が上がる代物だ。日頃は腕輪を着けず筋トレで体を鍛えていた分、効果が現れるはず。これで機動性を発揮できる。)
「・・・おい。」
「?」
庄野が振り向くと後ろにはリーが立っている。
「飛んでいるアレ、落とす方法を教えろよ。」
「・・・どうして俺に聞くんです?そもそもリーは監視と伝達、遠距離攻撃担当なのに、持ち場は?」
「あー、そのための魔法使いが全員デルにとられたからよ。俺がそこにいるとリーダーが二人になって滅茶苦茶になるだろ。」
「なるほど。」
(自然とそれを理解してやっているのは流石というべきなのだろう。指揮の継承や同じ位置に指揮官が重なった場合の序列は自衛隊、特に戦闘職種では大切な要素だ。事前に決めておく必要がある大切な要素なのだが、忘れていたり抜けている事が多いのはそういう経験がないからなのだろうが・・・。)
「で?どうすればいい?」
腕を庄野の肩に回しながら質問を続ける。
「・・・簡単に説明するんで、1分下さい。」
ガリガリと木の枝で地面にアパッチを書きながら説明をする。
「ほー、上手いじゃんよ。」
「ここがエンジンといって、あれの上で回ってるプロペラの動力です。ここを壊せば落とせます。それか、回ってるプロペラを破壊すれば落とせます。あと、あれは長時間飛べません。燃料を補給しないと戦闘は継続できないので持久戦に持っていくのがセオリーです。・・・。」
「ふーん。で?」
「・・・以上ですが。何か?」
「言えよ、お前の考えを。俺がほしいのはセオリーじゃねぇ。お前の見だ。お前はどう見る?」
「・・・魔法じゃ100%落とせないと思います。物理攻撃じゃないと。」
「だろうな。で?アレは何しにここに出てきたんだ?」
「・・・こんな開けた場所に出るものじゃない。もっと遮蔽物を使ってこっそり攻撃を仕掛けるはずなのに、こんな場所にあれを出してきたって事は・・・恐らくですが、陽動です。」
「ほぅ?」
「異界人の弱点は2つ。リーチと機動力です。魔法相手じゃどうしても射程で敵わない。魔石で身体能力を強化しても天馬のように空を飛んだり高速移動ができるスキルも無い。
それを克服するための対魔法に特化した編成、装備。
魔法対策のマジックゴーレム、対魔法に特化した魔石でこちらの遠距離攻撃を対策してくるでしょう。
そして・・・機動力についてはこちらの天馬を落とすことで優位に立つのが狙いだと思います。
その為にあれが出てきた。
目立つほどの高火力を見せつけ、魔法が効かないことを証明し空に滞空する。
・・・デルの性格なら、あれを落とすために天馬隊を出すでしょう。
そこを逆に狙って一気に天馬を落とす。それが向こうの目的だと思います。
天馬さえ落とせばあとは少しずつ押していけば勝てる。
その為のあれです。」
(アパッチって言っても通じないだろうからあれと表現しているが、理解できているだろうか?俺の方がわからなくなってきた・・・。)
「クックックッ・・・。」
リーはヤンキーの様に座り込み、下を向きながら不気味に笑う。笑い終えたと思えば、手に持っていた槍を庄野にパスするようにポイっと投げる。
「・・・何ですか。いきなり。」
槍を掴みながら庄野は文句を言う。
「いやいや、すまん。思い出し笑いだ。
・・・お前につくぜ、俺は。正直、サリアンのやり方は好きになれねぇ。
指示をくれ、庄野。俺を使ってみてくれよ。」
訳もわからずいきなり下につきたいと申し出るリーの行動に理解が追い付かないながらも庄野はリーに指示をだす。
「えっと・・・わかりました。
リーには空を飛んでるあれを、アパッチをアルフさんと連携して攻撃してください。」
「良いぜ。で?どうやって攻撃するんだ?」
「・・・俺に落とし方を聞いてくるって事は攻撃方法を持ってるって認識なんですが。」
「へっ、まぁな。策はある。そしたら、俺は行くぜ。」
リーは庄野から槍を渡され、一直線にアルフの方へと走る。
(クックックッ・・・。カエデの嬢ちゃん、ドンピシャだぜ。
『この戦いの鍵は庄野の采配次第になる。
仮に、仮にだけど・・・魔王軍の初手が後々の何を狙っているのか、という話を彼から聞くことが出来たら・・・必ず彼に従いなさい。そして、その答え合わせをしなさい。
それで彼が軍師として優秀かどうか、はっきり分かる。それ次第でソーラは方針を変える。頼むわよ。』
・・・初手だけじゃ今後の戦闘がどう転がっていくのか簡単に予想出来るものじゃねぇ。数ある中の1つの方向性の話なんだろうが、この短時間で妥当性のある可能性の高いものを見出だした。
何よりデルの性格を理解した上で物事を考えている。トップの人間が何をしたいか何となくでも理解することはなかなか出来ねぇ。・・・二人とも、恐れ入ったぜ。)
リーがアルフに接近する最中、サリアンの場内が騒がしくなっている。
「・・・天馬隊!出ろ!あれを落とせ!空から攻撃させるなぁ!」
デルの叫び声と同時に100頭近くの天馬に乗って槍を持つ騎士が城の壁を飛び越え、アパッチに向け飛び立った。
「あーあ、ここまで策にハマると哀れに思っちまうな。ま、悪いが、死んでもらうか・・・。やれ、従理。」
「時間だ!さぁ!行くんだよ、あたしの!ドラゴンゾンビ部隊!天馬に突っ込みなぁ!」
地上の魔方陣から現れたのは腐敗したデロデロの体と骨が剥き出しになっている翼を持つドラゴン。その見た目からは想像できないほど速いスピードで天馬に向かって突進する。
「たとえ速度が勝っていたとしても、腐敗したドラゴンなんて相手にならん!撃ち落としてしまえ!」
天馬騎士の鋭い槍の突きでドラゴンはいとも簡単に貫かれ、槍に刺さったままぐったりと項垂れる。
「・・・あはははは!抜かなくて良いのかよ!・・・『自爆』!」
従理の声と同時に槍に刺さったドラゴンゾンビは爆散する。その衝撃で天馬と騎士は何処かへ消える。
人伝に聞いた話だが、何かで使わなくなったTNTを処分のため爆発させる際に、廃棄処分となった車を試しに爆発をさせてみたらしい。結果はどうなったか?
映画のように回転してぶっ飛んだ。
違う。
火柱が上がって大きな穴が空いた。
違う。
空高く舞った。
違う。
消えてなくなるそうだ。
それほど爆弾というのは威力が高い。爆発範囲にいる生物が形を残すことはほぼ無い。
それほど爆弾というのは恐ろしい兵器なのだ。
従理によって召還されたドラゴンゾンビは杉村が造り出した兵器である。攻撃を受けたら爆弾となり、爆発する。その威力はC4爆弾に匹敵する。
槍で刺したドラゴンゾンビは爆発し、天馬と騎士はその衝撃で消えてなくなったのだ。
「・・・天馬隊が・・・そんな・・・。」
空を見上げ絶望するデル。天馬の白色で埋め尽くすほどだった空は青空が広がる。
その傍らの兵達も戦意を失い、手に持っている武器を手放してしまう。
(庄野の予想通りじゃねぇか、糞ッ!もう少し速く庄野から情報を貰えたらここまでの被害は出なかっただろうによぉ・・・。)
歯を食い縛り、悔しさを噛み締めながらリーはアルフの側に到着時、攻撃の準備をする。
「杉村さん。ほぼ全部やりました。まだ十数頭飛んでます。」
「あぁ。引き続き操縦は頼むぜ。・・・おっと、ドラゴンゾンビをかわして俺らに突っ込んで来たぜ。よーし、いっちょやってやるか。
ロックオン完了。
空対空ミサイル準備・・・発射。」
アパッチからミサイルが発射される。
正面から飛んで来たミサイルをかわす。
が、そのミサイルはかわせない。ロックオンされており、急旋回により避けたと思ったAAMは天馬の脇腹に直撃し爆発する。脇腹から上が吹っ飛んだ天馬は空高くから落ち、乗っていた騎士は地面に叩きつけられ動かなくなる。
(・・・あとは、仕上げにマジックゴーレムをサリアン城に突撃させて終わり・・・ってシナリオか。
させない・・・。やらせない!)
庄野は拳銃を片手にマジックゴーレムの大群へ突っ込んだ。




