第56話 開 戦 ~VS魔王軍~
「よぉ。アパッチについて知りたいんだろ?細部は極秘だ。教えられない。何でかって?そりゃ簡単だ。
それが広まったら
日本の信頼は失われて、人が死ぬんだよ。
ミリタリー好きな奴とか、お前さんみたいなのがしつこく聞いてくるけどよ?答えて、それが広まったらどうなる?
『あぁ、日本は平気で極秘事項をバラす国だ。バレてもいいショボい技術だけ提供しよう』ってなるだろ?
何でも先生にチクる友達に秘密をバラすか?やらねぇだろ?
その辺の子供の方が、まだ分かってるって話よ。
開示請求なんてそれの典型だ。自衛隊の情報を公開して、世界中に自衛隊の弱点、使ってる要図をバラすバカがどこにいる?日本人だけだぜ、こんなバカをやってるのは。
ま、日本人は平和バカだから、してやったと思ってる連中ばっかりだけどな。
それに、それで本当に困るのは現場で戦う人間、特にヘリコプターを操縦するパイロットだぜ?
ショボい技術のポンコツヘリを買わされて、不具合起きまくって落っこちて死ぬんだよ。それも最初に情報をバラしたやつが間接的にパイロットを殺したなんて誰も想像しねぇだろ。
間接的にポロッと漏らした情報が将来何百人と自衛隊を殺すことになる可能性があるって誰も想像しねぇだろ。
でもよお、
日本人ってのは、そうやって間接的に人を殺してることに気付いてない、お気楽殺人鬼の集団だからなぁ。
そういう国なんだぜ?実際。
おい。
何、他人面してんだ、あぁ?
おめぇも、その一人なんだぜ?」
(・・・今頃になって思い出す事ばかりだ。酒の席で自衛隊の記事を書かせろと無茶苦茶言ってきた記者にあいつが写真を見せながら語っていた時の事を。
まぁ、幸か不幸か、狙ってやったのかはわからんが・・・
その記者に渡した写真はアパッチじゃなくてコマンチだったから、本社に帰って全く違うヘリの写真を見せて怒りを買った結果、『信憑性が無い』と突っぱねられたらしい。
そもそも自衛隊の取材をする立場の人間がアパッチとコマンチの違いすら知らない方が悪い。
・・・昔から変わっていない。ノリで生きているような風貌、態度にみえるが独自の切り口で国の未来について真剣に考えている。
今回のこの一件もあいつなりに真剣に考えた結果なんだろうが・・・やり方は完全に狂ってる。何があいつをそこまで動かすのか・・・。)
「桜間。用意できたら入れ換えろ。そっちに行く。」
「行かせるかぁ!」
突風が吹いたのかと錯覚するほどのスピードで接近し、杉村の喉へ目掛けてデルの剣先が突き刺さる。
「はぁッ!どうした、サリアンの女兵士?刺さってねぇぜ?」
「・・・くッ!・・・刃が・・・通らないッ!?」
何度も杉村の胸、喉、目と狙いを変えて突きを放つが突き刺さらない。空中で止まってるわけではなく杉村の皮膚には触れている。それなのに剣先はまるで寸止めをしたかのようにピタリと止まっている。
「タイムリミットだ。じゃあな。」
「待てッ!・・・。
・・・何だ、これは。」
杉村のいた場所にはテディベアが置かれている。
杉村はアパッチに乗り込んでいた。
ヘルメットを被り、マフラーと航空手袋を装着する。
「杉村さん、お疲れした。庄野さんは殺れなかったんですね。」
「・・・あぁ。想像以上だ。庄野の射程範囲には近づくなよ。ありゃ化けもんだ。
よし、準備完了。移動するぞ。
まずは距離をとってヘルファイヤをかます。」
「目標は?」
「サリアン城の門だ。穴を開けて一気に攻めこむ。」
「了解。射撃地域に移動します。」
「あぁ。着いたら言ってくれ。」
「・・・庄野、あれは何だ。」
騒ぎを駆けつけた全員が庄野に詰め寄る。
「空から攻撃をすることが出来る乗り物です。かなり破壊力のある武器を持ってます。それと・・・。」
庄野も自衛官であるがアパッチの性能諸元について詳しいわけではないので簡潔に説明をする。
ふんふん、と皆が真面目に話を聞く中、デルとサクラは聞いている様子はない。
デルは話を聞きながら側近の兵と小声で何か話している。
サクラは庄野からあえて距離を取って話を聞いているのかわからない。
話が終わるや否やデルが口を開く。
「なるほど。何であれ、我々の天馬隊で十分だ。所詮奴等は異界人。あれ以外に空を飛んで攻める術は無い。それに、」
「ふざけるな。」
場が凍りつく。
デルの話を遮るよう、怒りを込めて声を発したのは庄野であった。
「いい加減にしろよ。・・・『所詮奴等は異界人』って言ったのか?さっき、生身の魔王に傷一つつけられなかったのに、何故そんなに余裕なんだ?
この戦いは、遊びじゃないんだ。
失敗がなく順調にいったとしても、相手の力量を見誤っていれば、全員死ぬぞ。」
「何を心配していると思えばそんな事か。
言ってなかったが、このサリアン城は強力な結界を張ることが出来る。サリアン、ソーラ、ガラの3国から集めた防御に特化した魔石で作られたものだ。
この世界に存在するどんな武器でも傷はつけられない。そして、その魔石にサクラの治癒で魔力を増強することで更に強力な効果を発揮できる。心配することはない。
・・・各人は配置につけ!予定では相手の出方を見るまで城内であったが、大したことはない。全員城の外に出ろ!一気にカタをつけるぞ!」
「・・・(慢心。その一言につきる。この様子だと結界が壊された後の事は考えていない。遠方に待ち構えているマジックゴーレムには気付いてはいるだろうが・・・。
この戦いは負ける。・・・せめて、サクラ姫とアルフさんだけは守りきる。)」
庄野の怒りをよそにデル達は城門の外に兵を配置し、アパッチを攻撃するために魔法を放つ準備をしている。
(・・・俺は俺でやれることをやろう。)
庄野は武器の確認をし、城門の配置された兵から遠く離れる。
(俺が任されているのは発生した魔物の討伐だ。あれだけの数を一人でやらなくちゃならないが。・・・やるしかないか。)
不意に肩をポンと叩かれる。
「ワシは、あんたの味方だね。」
「・・・アルフさん。」
「んー、サクラ姫は庄野さんの考えに賛同すると思ったんだけどね。まぁ、この戦いに生き残ってたら、きっと分かってくれるね。それと・・・単純な疑問なんだけどね。
空飛んでるアレ・・・何してくると思うかね?」
「俺の予想ですが、向こうも魔法で防御してくる事は予想はしてると思います。それを破壊するための武器を用意している可能性が高いです。」
「ふーん。で、どうやって攻撃してくるんだね。」
「・・・そろそろ来ます。」
「・・・予定地域到着。」
「了解。射程問題無し。
・・・。
ヘルファイヤ用意・・・発射。」
空気が大きく揺れる。
アパッチから対戦車ミサイルがサリアン城へ発射される。
「ふん。予想通りの攻撃だな。結界を張れ!」
サリアン城全体をドーム状に結界が張られる。
「・・・あっはっは!予想通りのバカだな、サリアン人はよぉ!平和ボケした脳ミソじゃあ気付けねぇか?!
対魔法兵器だ!
結界の魔力が高ければ高いほど、その魔力を吸って爆発範囲はでかくなる!
終わりだ!終わりなんだよぉ!」
城門に直撃する。爆発と同時に黒煙が広がる。
『防いだぞ!』というサリアン兵の声がちらほらと聞こえる。
その声を聞いて歓声が上がる。
黒煙が徐々に消えるとともに歓声はどよめいた声に変わっていく。
張っていた結界は消え、城門は吹き飛ばされる。爆発の範囲は想像以上に広く、直撃した門は消えてなくなり城下町は丸見えである。
(・・・やはり、こうなったか。構築した監視台も壁も消し飛ばされた。)
「あーあ。もう終わりだな。後は雪崩式にマジックゴーレム達を送り込んだら・・・幕引きだ。」
「くっ!・・・反撃だ!遠距離に届く魔法を撃ち込めぇ!」
アパッチに向けて魔法弾が何発も発射される。
数発がアパッチに命中するが、びくともしない。
「おいおい・・・あのアマは脳ミソまで筋肉なのかぁ?
俺に剣が刺さらなかったんだ、ショボい魔法でアパッチが落ちないよう強化してるに決まってんだろ。こんなのがサリアンの兵をまとめてるのか?終わってんな、サリアンは。
(って事は、庄野はサリアンの指揮下に入ってねぇ、指揮もとってもねぇのか。
異界人相手ならサリアンの現戦力で十分と思ってんのかねぇ。ま、そっちの方が俺らからすれば楽勝で良いんだけどな。)」
「そんな・・・効いてないのか?どうして・・・。」
先程まで血気盛んに叫び、武器を持ち、魔法を放っていたサリアン兵の士気がみるみる低下していく様子が目に見てわかる。
「・・・何て、威力だね。」
「・・・。」
(異世界に転生して、強い能力を貰って、順風満帆に冒険をする。
敵や魔物を強い能力で蹂躙し、英雄となる。
良くある漫画の話。
漫画だけの話だ。
そんな世界はどこにもない。
現実にそんな事はない。
体を犠牲にして戦わなくちゃならない。
1度評価を得ても、別の悪い評価を受ければ終わり。
友人が悪人のリーダーと分かれば同じ悪人。
努力は誰も認めてくれなくなる。
チート能力を持った友人が操縦する対戦車ヘリコプターと戦うことになる。
武器は拳銃と過去に触ったり使ったことのあるものを複製出来る魔法だけ。
死んだら終わりの一回勝負。
・・・俺は最後まで諦めないぞ。
士気については旺盛だ。)




