第47話 兵 器1 ~異界の武器~
破裂音が1回。空気を裂き、鉄の塊は高速回転しながら何もない空に向かって飛んでいった。
アルフの体も後方に1メートルほど飛んでいった。
「・・・か、肩が抜けるかと思ったね。こりゃ、支えが無いと・・・。ふぅ・・・凄いねぇ、庄野さんは。」
初めて拳銃を撃ったアルフは仰向けに倒れている。
アルフは銃を持ったこともない。当然、撃ち方も知らない。知っているのは片手で射撃をする庄野の姿だけであり、『引き金を引けば目の前の敵が倒れる』という代物としか認知をしていない。
何より、庄野はヌークとの戦い以来、左手を十分に使えなくなり片手で拳銃を構えている。アルフもそれしか見たことが無いので、両手で構えるという発想が無かった。故に片手で構えて引き金を引いたため、弾丸はあらぬ方向へと飛んでいった。
そうこうしているとマジックゴーレムがアルフの目の前で腕を振り上げている。
「おっと、それはさせないね。」
すぐさま立ち上がり、即席の壁を作る。
壁は、マジックゴーレムの一振りで落とした携帯の画面のようにバキバキとヒビが入る。
「・・・よし、今度はこっちの番ね!」
再びアルフは後方に吹っ飛ぶ。
発射した弾はマジックゴーレムを貫き、沢山のブロックが血流のように吹き出す。
1秒もかからず、一体のマジックゴーレムは大量のブロックになった。
「はぁ、はぁ。とりあえず、今のうちに人を呼ぶね・・・。」
アルフが立ち上がろうとすると先程より小柄なマジックゴーレムが突進してきている。
(倒したマジックゴーレムの後ろにいたのかね!気が付かなかった、壁の展開は間に合わないね。・・・。)
即座にマジックゴーレムの拳が真っ直ぐ飛んでくる。
意識してなのか、長年生きてきた人間の勘なのか、アルフは後方に自ら倒れた。
「これなら・・・どうだね!」
倒れた事によりマジックゴーレムの拳は空を切り、拳銃の弾はマジックゴーレムを貫いた。
余談ではあるが、『接近戦なら拳銃よりナイフの方が強い』のは二人とも立位(立ったままの姿勢)で戦うことが成立しているから成立する話である。今回のアルフのように突っ込んでくる相手に対して拳銃持ちがいきなり仰向けに倒れた場合、有利だったナイフ持ちが一時的に不利になる。理由はシンプルで、膝より下をナイフで攻撃する方法は少ないため、そして、走りながらでも容易に攻撃を出来るナイフのメリットが失くなるため。(一時的にという表現をしたのは地形や足場、武器の練度、双方の体格及び装備品に左右される部分が多いため。)
「あ、危なかったね・・・。むっ!?・・・肩が・・・。これ以上は、使えないね・・・。」
壁を展開する。残り8体のマジックゴーレムが拳銃の発砲音に気付き。のそりのそりとアルフに近づいてくる。
(・・・ここまで、かねぇ。もう少し若ければ無茶出来るんだけどね。・・・。)
アルフは座り込んで空を仰ぐ。
(ふぅ。思えば、庄野さんがこの世界に来てから忙しくなったね。ドラゴン使いはぶん投げるし、ガラ王と殴りあいはするし、気がついたら他国の英雄と仲良くなってるし。国の魔石事件に巻き込まれるし、魔王ともお友達だし・・・何なんだね、あの男は・・・。何かとワシを振り回してね・・・。
でも・・・。)
アルフは再び拳銃を握った。
(・・・楽しかったねぇ。
だから、もう少し、生きないといけないね。
この人がどこまで行くか、見てみたいね。)
「・・・庄野さんに感化されたかねぇ。全く・・・。まだ、死ぬわけにはいかないね!
おおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「は、はぁ。はぁ。あと・・・3体・・・はぁ・・・はぁ。」
限りある魔力と拳銃を駆使してアルフは奮闘した。
肩と腕は拳銃の衝撃でボロボロになり、コピードールから治癒の魔法で魔力を補給しながら壁を利用して戦った。
しかし、ここは現実の世界、ゲームやアニメとは違う。
一撃でも頭にかすれば頭は吹き飛ぶ。体をかすめれば内蔵が溢れる。そんな死が目の前にある。変動する心拍数が、流れ続ける血流が、通常では味わうことの無い緊張感が存在する。呼吸は乱れ、思考は乱れ、整えるために体力を消耗し、相手から距離を取るために走って体力を消耗し、体を守るための鎧の重みは体力を奪いし、アルフの体は限界を超えていた。
(ま、魔力は余裕があるのに・・・体力が持たないね。いくら治癒でも、そこは・・・回復しないね。くぅ・・・あと、10年若ければ・・・こんな事は・・・。)
意識が朦朧としているアルフの真横からもの凄い速さで四角い物体が飛んでくる。
「なんっ・・・!」
咄嗟に防護壁でガードしたが間に合わず、飛んできた一部があばらに突き刺さる。倒れたアルフの体の横に直方体のブロックが転がった。
「ぐふぅぅ!・・・ごほっ、ごほっ!」
(あいつら・・・倒した・・・マジックゴーレムの体の一部を・・・投げて・。)
直撃したブロックの影響で呼吸が十分に出来ない。立つことすらままならない。倒れたアルフの後ろにはマジックゴーレムが立っている。
(まだ・・・まだ、だね・・・。まだ・・・約束が・・・。)
マジックゴーレムの腕が天に向かって振り上げられる。
(・・・に・・・返すものが・・・。)
振り上げられた腕が地面に落ちる。
アルフの後ろに立っていたマジックゴーレムはバラバラと崩れ、ブロックになった。
アルフの目の前に銀色の鎧を纏った女性が立つ。右手に細目の剣を携えて。
「・・・助太刀する。」
「おぉ・・・デル。すまんね。」
「オッサン、大丈夫かよ?年なのに無茶したらダメだぜ?」
「おぉぉ!庄野ぉぉぉ!どうしたぁ!顔色が悪いぞぉ!こんなところで寝るなぁ!!」
リーがアルフに寄り、抱き抱える。
ボラブはぶっきらぼうに庄野を持ち上げ、肩に担ぐ。
「これはこれは・・・各国の英雄達じゃないかね。すまんけど、ワシらを西の都まで運んでくれんかね?」
「へっ。任せな。デル!そっちは任せ・・・って。もう倒したのかよ。」
「さすがっ!さすがだぁ!」
「・・・さぁ、行くぞ。」
「いやー、助かった、死ぬかと思ったね。庄野さんが急に倒れると思わなかったからねぇ。」
アルフはベッドに腰掛け、包帯を巻かれている。
「おぉ!そういえば、庄野はだいじょうぶなのかぁ?」
「あぁ、今はデルと姫ちゃんが看てる。ほら、これで大丈夫だ。しばらくは無茶しないこったな。」
「すまんねぇ。」
しばらくして、デルが戻ってくる。
「デルぅ!庄野は大丈夫なのかぁ?」
「酷い高熱でうなされている。あの様子だと、かなり前から我慢をしていたようだ。今はサクラ姫が看病をしている。」
「かなり前って・・・あいつ、今日の昼頃に釈放されたんだろ?そしたら・・・。」
「・・・ワシが気付くべきだったね。ふらついていたからおかしいとは思ったんだけどねぇ。」
ショックを受けているアルフに対し、三人が聞けなかった疑問を投げ掛ける。
「・・・アルフ殿1つ聞いても?」
「ん?何だね、改まって。」
「その・・・庄野が使っていた武器を手に持っていらしたが・・・使ったんですか?」
「うーん・・・庄野さんには黙って欲しいんだけどね・・・でも、使わなかったらワシはここにいないね。」
ガバッとリーがアルフに覆い被さる寸前まで迫る。
「お、おい、オッサン!どうなんだ!威力は、使い勝手は?マジックゴーレムを何回の攻撃で倒せるんだ?」
「な、何だね、いきなり・・・。威力は・・・そうね、一撃でマジックゴーレムを粉砕するね。ただ、ワシには上手く使えないねぇ。使ったときの衝撃が凄いし、狙って当てるのが難しいね・・・それで、肩と腕を痛めてこの様ね。」
「ガッハッハッハ!一撃で?!おいおい!そんな小さい武器が!!」
「・・・ワシも最初は信じてなかったね。」
三人が顔をあわせ、アルフに迫る。
「な、何だね・・・ちょっと、離れて話そう、ね?ね?」
「アルフ殿、単刀直入に言う・・・庄野が使ってる武器を量産して対魔王軍用の武器として生産したい。協力して欲しい。」




