第46話 受 難 ~一難去って~
「これより、裁判の判決を下す。」
(・・・まさか、初めての裁判が異世界になるとは。しかも、被告人として・・・。)
一人の少女の凶悪な魔法によるサリアン崩壊を止めた庄野は英雄となったが同時に罪に問われていた。
「この男は少女を殺した。少女が魔王軍だったかどうか証拠がない。少女の死と同時に魔法が消えたのは偶然だ。仮に殺した少女が魔王軍だとしても、後にサリアンの兵士を殺した理由は何か?ただの殺人である。よって有罪。殺人はこの世で最も重き罪。罪人は死刑である。」
サリアンが出した判決は有罪、そして死刑判決を受けた。
「・・・暇だな。外の情報は入ってこない、面会も禁止、コピードールも俺が持ってた武器もサクラ姫とアルフさんに預けられた。執行日が決まらない以上、筋トレ以外やることがないな。」
牢屋に入れられ約1ヶ月。庄野は死刑判決を受けながらもその執行日が来ないまま日々を過ごしていた。
(・・・足音。誰か来る。・・・一人、かなり年配の歩き方だな。後は・・・四足歩行か?)
筋トレを一時中断し、簡易的なベッドに横になる。
足音が止まり、声をかけられた。
「暇そうだねぇ。どうだね、久しぶりにコピードールと遊んでやってくれんかね。」
牢屋の外から声をかけたのはアルフだった。傍らにはコピードール達が泣きそうな顔をしている。
「お久しぶりです。アルフさん。・・・お前達もな。1ヶ月ぶりだなぁ。」
「ギュゥ!」「ギュゥゥ!」「キュウ・・・」
無理矢理鉄格子の隙間から入ろうとして顔が挟まってしまう。
「おいおい、無理するなよ・・・。ほら、俺の手は外に出るから。よーし、これで撫でられるぞ。」
わしゃわしゃとコピードールの頭を撫でているとアルフが話を始めた。
「庄野さん、死刑は無くなって晴れて無罪だね。良かったねぇ。」
「え、そうなんですか?てっきりもの凄い残虐な処刑をする準備をしてるのかと・・・。」
「・・・あんた、サリアン人を何だと思ってるんだね。」
「・・・。」
「まぁ、良いけどね。・・・サクラ姫にしっかりと感謝するんだね。庄野さんが殺したのは『魔王軍幹部』。でも兵士が害を加えようとしたのは『魔法が使えない女の子』の遺体。法を破ったのはサリアン兵の方だって強く主張してくれて、それを沢山の人が同意したから助かってるんだからね?」
「はい、帰ったら姫様に感謝を伝えます。」
ふぅ~、と長いため息をつき、アルフは牢屋の前にある椅子に腰をかける。
「話が変わるけど・・・前に出現したサリアンの外にある魔方陣、覚えてるよね?」
「はい、スライムばっかり出てくるあれですよね。」
「んー、それがね・・・先週から強力な魔物ばかりが出てくるようになってね。しかも対魔法に特化したタイプばかりでね。対応に困ってるんだよね。」
「なるほど。では・・・。」
庄野はすっと立ち上がろうとするが、ふらついて倒れそうになる。
「・・・。」
「・・・すいません、ずっと動いてないので。でも大丈夫です。」
「寝すぎじゃ無いのかね?全く・・・ほら、一緒に行こうかね。」
「はい・・・。」
(前の時もそうだったが、魔物への対処を俺やアルフさんばかりがやってるのは何なんだ?ここの兵は日頃何をやってるのか・・・。)
釈然としないまま、アルフから戦闘服を貰い着替える。
約1ヶ月見なかった外の世界は1か月前と同じものは無かった。
(・・・は?何だこれ・・・。)
街の半分は廃墟と化し、麻袋のようなものが辺りに並んでおり、その辺りは異臭が蔓延している。
「庄野さんが牢屋に入って1週間目。日に日に増えていたスライム達が急にいなくなったね。次の日からスライムより強い他の魔物が増えてね。対処するに値しない、そこまで問題にしてなかったから放置しててね。それから更に1週間、その魔物も急にいなくなってね・・・そしたら、さらに強力な魔物ばかりが出てくるようになったね。あれらはそれに殺られた兵士達だね。あいつらを倒すには今のサリアン兵じゃ勝てっこないってことだね。」
「・・・こんなに、ですか・・・。」
(酷い・・・。あの災害があった時より酷いぞ、これは。)
「庄野さんはここの兵をどう思ってるか知らないけど、ワシからすればゴロツキの集まりだね。訓練は疎かにしている、そのくせサリアンの兵だからって威張り散らす始末。ここで死んだ連中はそんなレベルのやつがほとんどだね。多少攻撃魔法が使えるってだけで傲慢になり、対魔法特化の魔物であることを見抜けず、無惨に殺られた。経験や知識は日々の訓練で、勉学で補うね。そんな事も理解できていない、生まれだけで能力が高いと勘違いしてる時点でガラやソーラの兵士に比べたら遥かに弱いね。」
「・・・。」
(数十年前の自衛隊もそうだった。それこそ喧嘩しか知らないようなゴロツキしかいない時代もあったらしい・・・。そんな人達が築き上げてきた指導や理念を守ってきたおかげで今の俺達がいる。サリアンも当時のような状況、いや、もっと酷い状態だ。漫画やアニメとは違う。努力を怠った人間に待つものは苦難と・・・死だ。)
数々の遺体を横目に城門に近づく。門の前にはマジックゴーレムと呼ばれる魔物が溢れかえっていた。
「はぁ・・・ワシも可能な限り倒したんだけどね・・・さっきより増えてるね。庄野さん、頼むね。」
「・・・わかりました。撃破します。」
庄野はコピードールから拳銃を貰い、構える。
(・・・何だ?・・・視界がぼやけて定まらないな。)
ゆっくりと魔物は迫ってくる。庄野は拳銃を向けたまま引き金を引かないでいる
。
一歩、また一歩。動きは鈍いがその距離は数メートルまで迫ってきている。
(・・・頭が、ぼんやりして・・・気分が・・・くない・・・。銃、撃・・・。)
9発の弾を発射するが、その弾は庄野の目前にいる魔物には一発も当たっていない。
(・・・?・・・おれ・・・。・・・)
ドサッ、と地面に吸い寄せられるように庄野は倒れた。
「庄野さん?庄野さん!・・・どうしたね!」
アルフが駆け寄り防護壁を展開する。
「庄野さん!庄野さん!しっかりするね!・・・ッ!凄い熱だね・・・全く、無理するなって言ってるのにねぇ。・・・さて、どうしたもんかね。」
壁を展開した状態でアルフは動けない。マジックゴーレムもアルフの壁を壊せない。膠着状態となった。
(困ったね・・・庄野さんを抱えられる力はワシにないねぇ。マジックゴーレムは目の前に10体はいるね。今のワシの魔力で全部倒すのは不可能ね。かといって、長時間ここで壁を展開して時間稼ぎをしても庄野さんへの負担が大きいね。こいつらを倒せれば話しは別なんだけどねぇ。)
むー、とうなり声をあげながら考え事をするアルフの足元にコピードールが寄ってくる。
ふとアルフの頭に考えが浮かぶ。
「・・・お前さん達、ワシに庄野さんの武器を複製してくれんかね?」
「キュッ!」
アルフの手元に一丁の拳銃が渡される。
「すまんねぇ、庄野さん・・・
・・・約束、破るね。」
アルフは拳銃を構えた。




