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尚、士気については旺盛であります!  作者: 固太 陽
第一章
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第40話 善 悪 ~それぞれの思惑~

災害から数週間が経ち、各国で落ち着きを見せ始めた。

そんな中、世界では魔王軍討伐のための軍団編成の話で持ちきりであった。














これから魔王を討伐すべく、皆が力を合わせて討伐する。




























そんなお約束展開は無く、


あるのは非情な現実だけ。


















サリアン、ガラ、ソーラの3国で対魔王軍団を編成する計画が()()()のだ。





災害発生以前までは3国は魔王軍の脅威を理解し軍団編成に意欲的であったが、復興が進むにつれてガラとソーラから対魔王軍団への兵の差し出しは出来ないと回答がされた。





そんなニュースは西の都にいる庄野の耳にも入った。




「対魔王軍編成の話がっ!・・・うまくいってないみたいですねっ・・・!」

「そうみたいだね。あの王様からデルに変わって良くなると思ったんだけどねぇ・・・ほら、核を狙って攻撃するね。あー、このままだと分裂するね。早くやっつけないとね。」




庄野は朝からスライム退治に躍起になっている。

『スライムの中にある核を狙えば倒せる』と言われ日々訓練を行っていた。




先日の魔方陣から魔物が召喚されるようになり、平和だったこの世界は魔物にあふれ、まさに暗黒時代に・・・











というわけでもなく、定期的に出てくるのはスライムばかりで強力な魔物は数週間に1、2体出るかどうか。そんなこんなで対策は容易なものであり誰も危険視をしていない。





最弱のスライムばかりが出現し、強力な魔物が出ないのであれば何も問題は無い。が、スライムを倒せない庄野にとっては深刻な状況である。






(倒せる事は倒せる。ただ、方法が・・・シビアだ。スライムの核の大きさは個体差はあれど概ねビー玉位の大きさ。それがスライムの体内をグルグルと動いている。スライム本体の速度は軟体生物とは思えないほど速い。スライム自体の大きさにも個体差があって核の移動速度は体格が小さいほど早い。それに9mm弾を当てるってのは・・・至難の業、いや、曲芸だ。)




拳銃の射撃は小銃より難しい。理由は一つ、支える事が出来ないからである。通常、射撃をする場合は左手で被筒部の下から支えるように、右肩で撃ったときの反動を抑えるようにして射撃を行う。(腰だめ撃ちも存在するが戦術上使う機会が滅多に無いため割愛する。)

拳銃はその固定する機能をほぼ手のひらと腕だけで行わなければならないため難易度が高くなる。

ましてや庄野は左腕を使えない状態、動く物体に対して片手で狙った場所へ撃つには練習量以上のものが必要になる。









数時間、朝から日が暮れるまで撃ち続けたが倒せたスライムは3体のみ。庄野自身も疲弊してぐったりしている。




「庄野さん、暗くなってきたし、今日倒さなくちゃいけない数はワシが倒したし、帰ろうかね。」

「・・・わかりました。」




(・・・3体だけ、か。魔石による強化で集中力とか上げれば狙いを簡単につけられるように出来るらしいが・・・それは最終手段だ。魔石による強化は元々の能力を強化するもの、若しくは魔石そのものにストックされている魔力を使って魔法を使用するどちらかのタイプに別れる、らしい。俺がカエデ女王から貰ったのは前者で、俺自身の元々の能力を向上させる代物だ。故に、心身を鍛えておけば魔石を装備したときの効果がより高くなるというわけだが・・・なかなか上手くいくものじゃないな。)




「キュピー!!」



三匹のコピードールが庄野に駆け寄る。口に拳銃を咥えて。


「おいおい・・・今日はもう撃たないんだ・・・。まぁいいか、これを最後にしよう。」



































~サリアン~


「・・・何故だ!何故・・・。魔族を討伐するまで対魔王軍編成の計画が破綻することは無いはず、それは各国も理解をしている。それなのに・・・何故だ・・・!」




デルはガラとソーラからの文書に目を通し机で項垂れていた。



(災害が発生して、ガラとソーラから支援要請が来た。こちらも復興と魔王からの攻撃に備えて兵を出すのを渋ったのは事実だ。しかし、それとこれは別の問題だ。一体・・・。)




フゥー、と大きなため息をする。気分転換にと街を出ると珍しく人だかりがそこにはあった。



(・・・ん?何だ?)



デルはその中心に駆け寄る。そこには詩人が謳っており、それを聞こうと人が集まっている。





「・・・たった一人で500人以上の怪我人を治療して、たった一人で人型の魔物最強と言われたサイクロプスを退けた!その英雄は風のように平野を駆け巡り、発生した魔物の大群を引き付けて我々を最後まで守ってくれた・・・。風と共に去った英雄・・・」





(おとぎ話、か。こういう厄災があった後に人情味のある英雄の話はよくある。少々脚色されているのが気にくわないが民衆の安らぎや希望につながるものだ。しかし、回復魔法が使える、魔物を屠れる、俊敏な足を持つ人間なんているわけないだろう・・・。)






聴く必要は無い、とその場を去ろうとしたがある人間の名前が耳に入り足を止める。






「彼の英雄の名は、庄野哲也!このサリアンから少し西にある都の英雄、庄野哲也!彼のその姿は魔王と瓜二つ!なぜならば・・・かつて彼等は一つの体であったのだ!・・・彼等はこの世界で虐げられていた異界人を救おうとした。正義の心は共存を、悪の心は排他を望んだ。いつしか1つだった体は異なる思いにより、英雄庄野と魔王に別れてしまうっ!そして・・・彼等が再び出会うその日こそっ!異界人の行く末と世界の存亡を決める戦いが始まる日なのだっ!」









「・・・何、だと?」







詩人が謳い終わり、人だかりが無くなった後にデルはその詩人に詰め寄る。



「おい、答えろ。庄野についてどこまでが本当の話だ?」

「は、はい?どこまでと言われましても・・・。」



グイ、と胸ぐらを掴み詩人を片手で持ち上げる。

「答えろ。」

「うわぁ!ソ、ソーラで怪我をした兵から聞いたんです!三匹のコピードールが瞬く間に傷を癒して、破裂音を発射する魔法でサイクロプスを倒したって!」




「そこは理解した。後の魔王との繋がりについては?」

「ソーラではそういう噂が流れてるんです!サリアンの魔王襲撃のタイミングが分かってたかのように的確に当てたって兵の団長が言ってて、それを聞いた兵が元々1つの体だから意識を共有しててわかったって!だって、異界人ですよ?魔法も使えないのに何で・・・あっ!痛い!いきなり手を離さないで下さいよ・・・もう、良いですか?」




荷物をまとめてイソイソと詩人は消えていった。






(庄野、哲也・・・あいつは一体・・・。・・・母上、私はどうすれば・・・。)

































~魔境~


「おーいぃ!魔王様!帰ったよぉ!魔物召喚、完了だよぉ!」

「お疲れさん、従理。・・・頭に穴あいてんぞ。誰にやられた?」




「あ、これ?庄野にやられた!」

「・・・へぇ。あいつが人を撃ったのか。結構、結構。まぁ、ゆっくり休んでくれ。」




杉村は従理の頭をポンポンと撫でる。えへへー、と照れながら従理は部屋へと戻っていく。



しばらくすると着物姿の男と全身継ぎ接ぎの巨漢が現れる。




「魔王殿、報告が。」

「戦!準備!完了!」



「戻ったか、二人も休んでてくれ。行動開始は次の段階だ。まずは陽動、魔物を放って奴らが兵を集めてからだ。」



「・・・疑問なのですが、何故あえて刀を握らせ研ぐ時間を与えるのですか?拙者には理解できん。」

「謎!多数!疑問、解決希望!」



「クックックッ・・・俺の趣味さ。ただ勝っても面白くない。これだけ準備すればたかが異界人、簡単にやれる、と希望を抱かせてそれを徹底的にへし折り絶望を味わってもらう!・・・俺達が感じた絶望を遥かに越える絶望を感じて苦痛を糧に生きて貰う。同じ苦しみを味わってもらう為に・・・。」



「・・・。」

「・・・。」


質問をした二人は無言になってしまう。




「なぁーんてな!ジョーダンだよ、ジョーダン。俺達が国取りした後、革命だの反乱だのが出てきたら困るだろ?戦う意思があるやつを兵として叩かないと後々困るのは俺達の後継者だからな。あえて時間を与えて士気が高い人間を戦場で叩くって算段よ。」



「・・・失敬、そこまで考慮されていたとは。」

「称賛!尊敬!敬意!」



冷ややかな雰囲気が和むなか、独りの少女が走ってくる。




「まおーさまぁ?いる?」

「ここだ。どうした?」



「えっとね、たいまおーぐん?のせんへーが無くなったんだって!」

「ゴルや、それを言うなら編成で御座る。」


「そう!へんせー!なんかねー、また仲が悪くなったんだよ?何でだろうね?」

「理解不能!無能!不要!」




杉村は下を向き肩を揺らしながら笑いをこらえている。



「クックック・・・やっぱり国ってやつはどこの世界もバカばっかりだな、脅威が目に見えて近くにあるのに何も対処しないとはな。折角、少しは俺達と戦いになるように時間の猶予をやったのに。・・・タイムオーバーだ。ゴル、先遣として行ってこい。片っ端からやっていい、何しても良いぞ。あと、殺られそうになったら、()()()()()()?」


「はーい!じゃあ、行ってくるね!」



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