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尚、士気については旺盛であります!  作者: 固太 陽
第一章
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第38話 激 変 ~それはありきたりなRPGの世界~

「『菩薩の心』というものがあります。菩薩様は古今東西、人間に対してなにもしてくれませんでした。でも我々は何かあれば菩薩様に感謝をして、菩薩様にどうかして欲しいと懇願します。菩薩とは、とどのつまり、心の拠り所なんです。『余計なお世話』という言葉がありますが、誰かに何かをする事は全て余計なお世話なんです。菩薩様は今の今まで、誰にも何もしてないでしょう?そういうことなんです。だからこそ、人が苦難に会いし時は側に寄り添ってあげるだけで、何もしなくて良いんです。それが菩薩です。」






(困った人を助けるときは余計な事だって教わったな・・・しかし、困ってる人を見たら助けなくちゃって思うことは悪いことじゃない。)







「おい、何してる!」

ボロボロの女性とそれを追い回している男性の間に入る。男たちの手にはこん棒のようなものが握られている。


「・・・。」


男達は言葉を発しない。庄野の制止を聞かず真っ直ぐに女性目掛けてダッシュしてきた。



「聞く耳無しかよ・・・!」


突っ込んでくる男の腕を掴みその場で一回転して間接を極める。動けなくなったその男を突飛ばし別の突っ込んできた男とぶつけると二人は動かなくなる。突き飛ばした直後、もう一人の男の正面に直ぐ様詰め寄り、右腕を男の喉元に、ラリアットの形のようにかますと一回転して男は倒れた。



(なんだったんだ、こいつはら・・・。)





「お嬢さん、大丈夫ですか?」

「あぁ・・・どうして私が・・・。」



女性は歪んだ十字架を空に向け何かを祈っている。



(・・・キリシタン?いや、待て。この人、異界人じゃないのか?初対面にそんな事を聞いて良いのか分からないが・・・。)



「とにかく・・・、えっと。」



女性に怪我が無いかを確認しようと全身をくまなく見る。顔はフードで隠れており、包帯でほとんど見えないが首から下の露出が多く、とてつもなくきわどい格好をしている。

目のやり場に困り庄野は迷彩服の上衣を脱ぎ女性にかける。



「あの・・・まずは安全な場所に移動しましょう。」

「安全な場所・・・。だったら・・・私の場所に・・・。」




女性が手招きをする。そこには平原の何もない場所であり、地面には不思議な模様が描かれている。




「ここは・・・?」

「私の・・・場所。場所を作りたい。でも・・・魔力が足りない。」



(説明を必死にしてくれているんだが、わからない。何を作ろうとしているんだ・・・?)




「えっと、何を作ろうとしているんですか?」

「私の・・・場所。」




「・・・それは何のための場所なんですか?」

「何のため?わからない・・・私は作れと言われた。わからない。()()()()()()




(ダメだ、会話にならない。もう夜になるっていうのに。)



気がつけば辺りは暗くなっている。庄野は月の明かりを頼りに周辺の石と木の枝を集める。集めた石を円の形に並べ、木の枝を積んでライターで火をつける。



(煙草は吸わないが、ライターの利便性は残すべきだな。遊びで使うなと言えどこのサイズでいつでもどこでも火が出せるのは良い文明だ。)



「もう遅いですから、話は明日聞きます。今日は休みましょう。」

「大丈夫・・・、今、休んでる。もう少し・・・。」





「いや、休んでないですよ。ほら、座って。」




庄野が女性の腕を掴んで簡易に作った明かりの近くへ誘導する。引っ張った瞬間、余りの軽さに驚く。



(軽すぎる。腕しかないみたいに・・・ちゃんとご飯を食べていないのか。逃げ回っていた理由も気になるが、細かい所は明日になってから聞けば・・・。・・・え?)






恐る恐る彼女の腕を掴んだ右手を見る。






右手には彼女の腕があるが腕から先がない。






「・・・。」

「あ・・・とれちゃった。私に怒られる・・・もう一人の・・・私が・・・出て・・・!!!・・・あ、ああああああぁぁぁぁぁ!!!!」





女性の叫び声と同時に顔を隠していたフードと包帯が外れる。庄野はその女性の顔を一瞬しか見ていないが覚えがあった。杉村から襲撃を受けたとき、集合の号令をかけたときに集まった一人にその女性がいたことを庄野は覚えていた。




「お前は!杉村の仲間か!」

「・・・あー?杉村ぁ?魔王様だろうがぁ!」



先程のしおらしさは無い。目付きからは凶暴さが滲み出ている。



「ったく。間違えるんじゃないよ。・・・あ!腕がねぇじゃねえかよぉ!!・・・また引っ付けなくちゃいけないよ。」



(腕がないのに、痛くないのか?いや、そもそもこいつの体は・・・)



火の明かりで鮮明に見るとその女性の体は手術後のようなものがいくつもあり継ぎ接ぎだらけである。



「・・・何者だ?お前は。」

「従理・エット。魔王軍第6番目の従者だよ。やるならやってみろよ。お前のその銃で撃ってみな、ほら!」




(・・・す。・・・ろす。・・・殺す!!迷うな!!!)



「ななよん!拳銃!」

「キュッ!」



庄野は拳銃を構える。迷いを持ちながらもその女性の眉間に弾丸を撃ち込んだ。当たった部分には穴が開き女性はうつ伏せに倒れた。




(・・・撃ったんだ。俺が。最低でもあと5人、やらなければならない。やらなければ、俺がやられる。)



その場に座り込み大きなため息をつく。やってしまったという罪悪感に苛まれながらも1つの疑問を抱いていた。













(そういえば腕が取れた時、やけに軽かった。なにより、この女性から・・・()()()()()()()。どういうことなんだ?・・・。・・・まさか?!)











バッと立ち上がって周囲を見渡す。先程取ってしまった女性の腕が無くなっている。気が付くと目の前で倒れたはずの女性が体ごと消えており残ったのは庄野の迷彩服だけだった。




(・・・どこだ?何処へいった・・・。)



「ばぁー!」



女性は少し遠く離れた模様が地面に描かれたその地面の下から現れた。



「あっはっは!私は従理!この世界に来てから使い魔のアンデットと契約し、私自身もアンデットになった!私は死んでも生き返る!誰も私を殺せない!最弱であり、最強なのだぁ!」



声高らかに空に向かって叫ぶ。従理の足元の模様が赤く光始める。



「さっきは魔力切れでこの魔方陣を発動出来なかったんだけど、お前があたしを殺してくれたお陰で魔力がリセットされた!これで使える・・・。私にしか出来ない最高の魔法を!!」



女性は自らの体にナイフを突き刺した。



「何を・・・?!」

「ぐふっ!・・・この魔方陣は魔物の召喚魔法を永続的に行う魔法陣。ただ、召喚条件が・・・普通じゃなくてぇ・・・魔方陣に命を捧げる・・・生け贄がいるんだよ・・・くっくっくっ。」




魔方陣の回りから有象無象の魔物が現れ始めた。動く水色の粘液、頭が2つある犬、両手が羽で出来た人間、サイクロプスと呼ばれる1つ目の怪人。様々な魔物が何十体と現れる。





「ふふっ・・・あっはっは!私は何度でも死に続け何度でも生け贄になる!故に!無限に魔物が湧くのだぁ!!日中の私はサイクロプス一体出しただけでビビって魔方陣を解除したが・・・夜の私は違う!この世界を魔物で埋め尽くすまで召喚してやる!!あっはっはっ!庄野哲也!お前の命運もここまでだぁ!」




(・・・どうする?いや、考えてもしょうがない。この数を一人で相手は不可能だ。)





コピードールを抱えて庄野は西の都の方向へと全力で走った。







「はっ!逃げたか・・・追えぇ!世界の果てまで追い続けろぉ!」






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