第37話 同 盟 ~人と人の繋がり~
(何故俺はここに座らさせられているんだ・・・。)
「お前たちには俺が常々言ってる事が理解できていないようだな。」
怒るリーの目の前には顔をボコボコにされた兵隊と医療班の女性と妖精が正座をさせられている。庄野は何故かその様子を見せられている。
「ソーラは他国と違って様々な文化を取り入れた多様性を重視している。だからこそ、これだけはするな、無くしていくものがあるって言ってるんだが・・・わかるよなぁ?」
「さ、さぶぇつでふ。」
「だよなぁ!!差別はやめろって常々言ってるよなぁ!!なのにてめぇらはよぉ!呼んだ増援が異界人だからって、帰らせてんじゃねぇバカヤロォ!!そのまま帰ってたら今頃広場で倒れていた553人は死んでんだよ!わかるかぁ!!謝れオラァ!」
「ぐふぅ!庄野様・・・ほんとうに・・・ずびばぜん。」
「・・・あの、もう許してあげて良いですから。」
「良かったなぁー。庄野はやさしーから許したぞ、おい。・・・俺は許さねぇけどなぁ!覚えとけオラァ!」
「ぐふぅ!・・・はぃ・・・。うぅ・・・。」
「お前とチビッ子もだ・・・。わざわざ他国から来て無関係な怪我人を全員助けてくれて、その上サイクロプスも退けてもらってよぉ。魔物が出たらお前ら二人は魔物の動きを止めて怪我人を守れって言ってたよな?・・・医療長と一緒に帰ってんじゃねぇ!!」
「い゛だい゛!・・・ごべんなざい。」
「・・・ぐすん。」
「挙げ句の果てには庄野に暴言吐いたらしいじゃねえか、あぁ!?なぁおぃ・・・、腐った根性してるやつに次はねぇぞ・・・?言われたことを守れねぇならいつでも闇市場に売り飛ばして良いんだからな。」
「ひぃ!それだけは!もうしない!絶対しない!」
「いや・・・あそこはやだ!お願いします!捨てないで!」
「あの・・・二人とも女性ですし、事情があるみたいだし、その辺で・・・。」
「良かったなぁー・・・庄野が女性に優しくてよぉ、おい。・・・俺は容赦しねぇけどなぁ!明日から覚悟しとけコラァ!・・・持ち場に戻れや。・・・早く帰れぇ!!」
「・・・(帰っていいかな。)」
反省?を強いられた三人はイソイソと持ち場に戻っていった。フゥー、と鋭いため息と共にリーはいつもの調子に戻る。先程の怒号を発していた様子は無い。
「よし、終わり。庄野、嬢ちゃんが呼んでっから来てくれ。」
「あの・・・良いんですか?何か・・・その。」
「あ?あぁ、やり過ぎじゃねぇかって事だろ?これくらい厳しくやんねぇと・・・その時に死ぬのはあいつらだ、俺じゃねぇ。あの時もっと厳しく言ってりゃ生きてたのかも、って考えたくないからよぉ。」
(・・・世界は違ってもそういう考え方は同じ、なのか。)
二人はカエデ女王の元へ向かいながらも話を続ける。
「お前さんに無礼な事を言ったのは勘弁な。先日の事件から異界人達がごっそり居なくなってよぉ、それを大半のヤツが『裏切った』って思ってんだよ。もとを辿れば異界人に対して酷ぇことしてたサリアンとかの連中なのに、それを知らねぇヤツが多いんだ。」
「気にしてませんよ。事情があるのはお互い様ですから。」
「・・・お前、何で平気そうなんだよ。あいつらに酷い事言われて、ぶん殴りたいくらい怒るだろ?」
「もう怒りましたから、十分ですよ。それに・・・馴れてますから。」
『馴れてます』と言葉を放つ庄野の表情は怒りなのか悲しみなのか苦しみなのかわからないがヘラっと力のない笑みを浮かべた。
「・・・無理はすんなよ。」
「・・・はい。」
それ以降はほとんど会話もなかった。そのままカエデ女王の待つ部屋へと迎えられる。
「カエデ女王、庄野を連れてきた。」
「お久しぶりです。」
「・・・まずは、座って下さい。リー、席をはずしてもらえるかしら?」
へーい、と適当な返事と共に軽く会釈をしてリーは部屋を出た。
シーン、と静寂が続く。お互い目を合わせた状態で時が止まる。たまらず庄野が口を開く。
「あの、ご用件は?」
「・・・おにーさん、サクラちゃんと良い感じなんだ?」
「なっ!何で・・・?」
「顔にかいてあるわよ?早く帰りたーいって。」
同級生の好きな人を当てた子供の時のようにくすくすと笑う。
「・・・からかわないで下さい。」
「クスッ、ごめんなさいね。最初にサクラちゃんが『恐怖状態』になったって聞いて心配してたのは本当の事よ?それを付きっきりで看病してたって聞いたから・・・まぁ、それはいいわ。この度の協力には感謝してる、ホントにありがとね。あと、もう一つ手伝って欲しいことがあるの。」
「何でしょう?」
「『複製』して欲しい物があるの、これ。」
少女は机の上に置いてある箱を開けた。中から赤く光った石が何個も埋め込まれている腕輪が綺麗に整頓して並んでいる。
「魔石ですか?」
「そう。これは装備している者の物理能力を高める魔石を腕輪として錬成したもの。これを可能な限り複製して欲しいの。報酬は貴方が決めていいわ。」
(赤色の魔石・・・物理能力向上か。色付の魔石を見るとあれを思い出してしまう。)
「わかりました。報酬の話は後でも?」
「ええ。構わないわ。」
(・・・そういえば複製の使える回数が何となく増えた気がする。俺の時の治癒、サクラ姫の時の治癒でずっと使ってたからレベルみたいなのが上がったのか?)
コピードールは休むことなく腕輪を複製していく。気がつけば同じ大きさの箱が一杯になるほどになっている。
「あとどれくらい必要なんですか?」
「可能な限りよ。赤色の魔石は魔力が無いものでも使えるし、沢山つければその分効果は増大するの。」
「なるほど。」
「・・・ねぇ、おにーさん。聞いても良いかしら。その・・・魔族討伐に不参加の理由って、魔王が友人だから?」
「たとえ友人でも・・・あそこまで道を謝ったなら容赦しません。不参加の理由は外されたからです」
「外された?どういう事よ。」
「・・・話せば長くなりますが、端的に言えば、すぎ・・・魔王と同じ服を着ていた事です。デルに『お前は敵性分子』、と。」
「はぁ?なにそれ!ただの偏見じゃないの!・・・あーあ、そういう事だったの。だったらソーラもサリアンへの協力は形だけで今回の一件が片付いたら同盟は破棄しようかしら。」
「そんな簡単に・・・良いんですか?」
「いいのよ。大事なのは終わった後だから。国として誰が行ったことを見本にしなくちゃいけないのか、異界人とどう接して行くのが正しいのか、今回の戦いはそれを決める戦いよ。戦争が終わって皆が平和を感じれるように道を示すのが国の責任でもあるから。」
庄野は開いた口が塞がらない。
(戦いの理由、そして今後についても考えながら今の問題と向き合っている。凄い人だ。)
「異界人に対して劣悪な事をしておいて、上部だけは異界人の味方してるけど、やっぱりあの魔女の娘ね。だったら・・・。」
(・・・魔女?)
カエデは険悪な顔つきで爪を噛み始める。庄野が不安そうに顔を覗かせると、一瞬『しまった』という表情を見せ元の冷静なカエデに戻る。
「大丈夫、ですか? 」
「大丈夫よ。見苦しい所を見せたわね・・・。そろそろ報酬の話をしましょう、何が欲しい?」
(んー・・・欲しいもの、欲しいもの・・・。折角だし、言ってみるか。)
「ちなみに、1つですか?」
「・・・そうね。命を救ってくれたお礼もちゃんとしてないし。良いわ、好きなだけ欲しいものを言って?」
「では2つだけ。・・・。・・・を。」
「1つ目はわかるけど、2つ目は・・・まぁ良いけど。」
庄野は荷物が入った袋を持ち半長靴の紐をぎゅっと締めなおす。
「ありがとうございました。」
「そりゃこっちの台詞だよ、サクラの嬢ちゃんによろしくな。」
「それは私の台詞よ。また何かあったら手伝ってね。私達も何かあれば助けるから、西の都限定で。」
カエデとリーに別れを告げ帰路につく。コピードールと長い道を再び歩く。
(ん?あれは・・・?)
帰り道の途中、ボロボロの服を着た女性が3人の男から逃げ回っているのを見つける。
(・・・災害直後はこういうのが増えるからな。)




