第4話 解 説 ~兵隊と使い魔~
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「山で動物に食べ物を見せるな。見せれば人間は食べ物を持ってると思われて襲われるケースが増える。ましてや、与えることはご法度だ!野生生物を人間の世界に踏み入れる機会を我々自衛隊が与えるんじゃないぞ!それでその動物が生きながらえ、いつしか食料を得るために人間を襲うようになったら……その責任は誰がとる?
無責任な事はするな。山で訓練を行う俺たちだからこそ、肝に銘じておけよ……。」
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(過去の教育で言われたな……そんな事。わざと餌付けをしたわけではないんだが、ダンプポーチを落としてしまった事が結果として3匹の動物に餌付けをしてしまった。だが、この3匹が俺の使い魔だとすると、餌付けの有無に関わらず俺に着いてきただろう。さっきの門番の話だとそんな感じだな。
そういえば、こいつらの食べるものがわからないな。見た目からして草食動物っぽいんだが、この世界に住んでる生物が俺の世界の生物学と同じとは限らない。よく調べてみる必要があるな。見た目……ん?たしか、こんな人形あったよな、なんだっけな茶色い4足歩行の……カピバ・・・ん?)
しばらくすると、外壁が丸太を並べてある門に到着した。門はすでに開いており、そこからは田畑と瓦屋根の家が散見され、森の近くには日本と同じ墓石があり、遠くの丘の上には小さな屋敷が建っているのが見える。サリアン王がいた城に比べれば遥かに小さいが、庄野から見れば立派なものであった。
(ここが西の都か?都と言うには随分と田舎だが……。とりあえず、門番に聞いてみるか。)
庄野が門に近づくと、一人の老人が門の前にヨタヨタと出てきた。お世辞にも綺麗とは言えない鎧の重さで背中は丸まっており、使い込まれたと思われる盾は杖代わりにされている。
「……すいません、サリアン王にここへ来るように言われたのですが。」
「へぇ。……ほぉ。使い魔3匹も連れてる英雄をよこすとは王も太っ腹だねぇ。したら、サクラ様にお会いになりますかねぇ。そうら、案内しましょうかね。」
「(英雄……?なるほどね。)ありがとうございます。」
庄野は老兵に案内され、丘の上にある屋敷へと向かった。道中、西の都の様子をみると、サリアンとは異なり街のようなガヤガヤとした活気は無いものの、住民の顔には柔らかさがあった。
(似てるな、実家の田舎に。似すぎている。)
屋敷に着くと、庄野は誰もいない部屋に案内された。中には少し大きめのテーブルが1つと椅子が4つ、部屋の隅の古い時計はカチカチと時を刻んでいる。
「ここでお待ち下さいね。姫様をお呼びしますね。まぁ、堅苦しく構える必要はないですからね。」
老人が部屋を出ると、3匹の使い魔は部屋の中をグルグルと走り回りはじめる。森の中から休みなく歩き続けて疲弊している庄野は椅子に腰かけた。
数分後、ドアのノックがした。
「失礼します。初めまして。ええと……。」
「庄野哲也です。」
「てつや様ですね。私はサリアン王の三女、サクラと申します。あら……使い魔『コピードール』ですね。3匹と契約されてる方を寄越して頂けるなんて……お父様に感謝しないと。」
「コピー・・・?同時契約?」
「お父様からのお話を受けなかったのですか?」
庄野はサリアン王と会ったときに使い魔を連れていなかったこと、サリアン王からここで騎士としてサクラ姫に仕えるのが良いとしか言われていないことを説明した。
「そうでしたか……。」
「改めてサリアン王にお会いしたほうが良いでしょうか?」
「いえ、父は今更撤回するような方では無いので大丈夫です。
では、今のてつや様の扱いについて、そして使い魔について私が説明しますね。」
簡単に言うと以下の内容であった。
・かつて、この世界に魔物が現れた。
・魔法によって弱い魔物を倒す事ができたが、強い魔物は魔法では倒せなかった。
・強い魔物を討伐する能力(武器)を持つのは異界人だけだった。
・強い魔物は数百年前に滅び、魔法が使えるものが世界を統治するようになり、徐々に異界人=弱者となった。
(強い魔物に対抗出来たのは異界人だけ、しかし今はもう不要ということか)
「次は使い魔についてです。」
・使い魔には大きく四種類あり、『戦闘型』『補助型』『回復型』『特異型』がある。
・『戦闘型』は攻撃特化、ドラゴンやワイバーン
・『補助型』は魔法特化、グリフォンやゴーレム
・『回復型』は治癒能力があるユニコーンやフェニックス
・『特異型』は戦闘能力が低いが特殊能力を持つ(コピードールは特異型)
・使い魔は1人1匹が原則だが、主が異界人の場合多数連れていることがある。(2匹以上で勇者の素質有)
(なるほど。だから3匹のこいつらを見てサリアンの門番があたふたしてたわけか。……時代の流れで、異界人の評価は魔力の大きさや使い魔の数や能力で評価されるようになったと。つまり……俺は運が良かったらしい)
「ありがとうございます、概ね理解できました。一つ尋ねたいのですが、西の都に俺以外に異界から来た方は住んでいないんですか?」
「いえ、いませんよ。それと、ええと、その。てつや様の能力をお聞きしても良いですか?」
庄野はサクラ姫に『使えない武器を持った兵隊とはいえないほどの力』についてさらっと説明をした。
(どうせあの王様の娘だ。鼻で笑う。まともに説明する時間も惜しい。とにかくここで生活の基盤を確立出来たら元の世界に帰る方法を探そう。それ以外に俺がここで出来る事なんて無いだろうからな。)
「以上が俺の能力がです。」
「分かりました。では、これからよろしくお願いしますね。」
「……それだけですか?使えない異界人が来たのに落胆もされないんですね。」
「ふふ、ご謙遜なさらず。コピードールの能力があればあなたはこの世界で最高の騎士になります。時間はありますから、ゆっくり頑張っていきましょうね。」
「……はい。」
サクラ姫は金色の長い髪を揺らしながら笑顔で庄野を見つめた。その眼差しから目が逸らせず、庄野の時間は停止し顔がほんのり赤く染まった。
(……くそ、こんな簡単に心が動じてしまう自分が情けない。
……まずはこいつらの能力を把握、じ後は俺の武器が通用する戦い方を模索する。帰る方法を見つける為にも、使えるものは何でも使えるようにしないとな。)
話を終えると、庄野は老兵に別の部屋に案内された。中はビジネスホテルとまでは言えないが1人部屋としては十分な大きさの個室だった。
「今日からここで寝泊まり出来ますからね。ああ、あと何も」
「何も言わず出ていっても構わない、過去の異界人も同じように出ていったから。・・・ですか?」
後編があります




