第34話 雷 鳴 ~雷鳴ったらへそ取られる~
「雷が鳴ったときはお腹を隠せって言うだろ?あれってへそがとられるからーって昔は言われてたけど要は気温が下がっておなか冷やして風邪引くからっていう教訓なんだよ。わらじをおろすときはーとか、夜に爪切るとーとか。迷信って教訓だからなー。」
今日の教育では不要なものがそぎおとされ必要なものだけが重要視されている、と言われてはいるがそれはあくまでも大人の都合であって子供が成長するのに必要なものすらも不要とみなされている。四字熟語やことわざ、迷信とは過去の教訓を生かすという大事なものであり大切なものではないかと筆者は考える。
サリアンにも同じように迷信(教訓)がある。
サクラの看病も順調であり部屋から離れていても泣かなくなった。
(良かった・・・本当に・・・。・・・ん、雨が降るかもな。)
庄野はふと外を見る。燕のような鳥が低空飛行をしている。それを見て洗濯物を取り込み始めた。
「ん?庄野さん、洗濯物は夕方取り込めばいいんじゃないかね?」
「お疲れ様です、アルフさん。雨が降るかもしれません。」
「んー?今は晴れてるし、雨が降りそうな感じはしないけどね。」
「鳥が低く飛んでますので、雨の前兆かもしれないんです。」
「ほぅ?その心は?」
「空気が湿って羽が重くなった虫が高く飛べなくてそれを食べる鳥が低く飛ぶんです。だから雨が降るかもしれません。」
「ほぉ、詳しいねぇ。」
「迷信の類いですが。」
庄野の言った通り夕方には雨が降り始めた。それも想像以上の嵐のような豪雨が降り注いだ。
「ほっ。庄野さんは天気もわかるのかね。凄いねぇ。」
「たまたま当たっただけですよ。それにしても凄い雨ですね。」
「そうだねぇ。山の雷獣が雄叫びでも上げてるのかね。」
「それも迷信ですか?」
「まぁ、そんなもんだね。・・・もしかしたら山のダムが決壊するかもしれないね。ワシ、もしもの事があるから見てくるね。」
「お気をつけて。」
老兵は見事なフラグを立ててダムの様子を見に行った。庄野は嵐が来たことでやることが無くなってしまう。
(さて、どうしようか。サクラ姫はまだ寝てるかな・・・?)
少し考え事をしてるとアルフが走って帰ってきた。
「は、はぁ、はぁ。こりゃ・・・ダメだね。全然近寄れないね。」
「何かあったんですか?」
「か、雷だね。まだ遠くの方だけど空が光ったね。」
「雷ですか。」
「確か庄野さんの世界ではあまり人に当たることが無いんだよね、でもね、この世界では雷がワシら人間によく当たるんだね。」
「それは危険ですね。」
「理由は分からないけど魔力に引き寄せられるとか・・・。怖いから帰ってきたね。庄野さん、戸締まり手伝ってくれるかね?あと、嵐対策で窓に強化魔法の魔石を置いていくね。」
「はい、手伝います。」
広く大きめの屋敷であるため庄野とアルフ、そして数人の使用人だけでは時間がかかり気がつけば外は夜になっていた。
「・・・みんな、手伝ってくれてありがとね。ワシは・・・もう寝るから後はよろしくね。」
疲弊したアルフは夕食も食べずヨタヨタと自分の部屋に戻っていった。庄野はサクラの部屋に食事を持っていき二人で食事をとる。
「今日、嵐が来ます。もし何かあったら俺を呼んでください。」
「はい・・・ありがとう・・・ございます。」
夜になり皆が寝静まった頃、雷が近傍に落ちた。
ガァン、と銃声のような轟音が屋敷中に響き渡る。
(雷か。音や衝撃は日本とあまり変わらないな。・・・サクラ姫には何かあれば呼ぶように言ったけど・・・大丈夫か?)
庄野の心配は予想通り的中というべきなのか案の定というべきなのか。
サクラは部屋を出てすぐの廊下に両足を閉じてしゃがんだまま動けなくなっていた。
「あ・・・また・・・光った・・・嫌。怖い・・・ひぃ!助けて・・・てつや様・・・。・・・うぅ・・・。」
(声・・・出さないと来てくれないから頑張って出さないと!でも・・・怖いよぉ。助けて・・・。あ、足・・・閉じないと。)
サクラが必死にやっているしゃがんだまま足を閉じるというのは雷がなったときに回避する1つの方法である。
両足で立つと双方の足が電極となり、雷が地表面の水や鉄板等を通電して足から感電してしまう場合がある。それを回避する手段として両足を閉じる事で電極を一本にすることで感電を防ぐという方法があるが100%回避が出来るものでは無い。何より家の中で実行する意味はない。
サリアンではこれが迷信として信じられている。
「ひっく・・・う・・・うぅ・・・うぅぅぅ・・・。助けてぇ・・・。」
(うぅ、どうしよう。このまま朝まで・・・。でも、もし朝になっても雷がおさまらなかったら・・・てつや様が来なかったら・・・どうしよう。)
廊下にうずくまって涙を流すが誰も来る気配は無い。声をあげて泣いているが雨の音と雷で全てかき消される。そんな状態で誰もくるはずがなかった。
たった一人の男を除いて。
「・・・姫様?大丈夫ですか?」
「あ・・・。あぁ・・・、て・・・や・・・さ・・・。うわぁぁぁぁぁあん!」
安心したのかサクラは子供のように大声で泣きじゃくる。庄野はすぐさまサクラを抱き抱え部屋のベッドまで連れていった。
「大丈夫ですか?」
「ぐすっ。ふっ、・・・うっ・・・。いか・・・な・・・で。」
「大丈夫ですよ。雷がおさまるまで側にいますから。」
「・・・はい(雷、鳴り止んでも側にいて欲しい)。」
深夜になると雷の音は消え次第に雨も止んできた。サクラは眠りにつき、それを確認して庄野も部屋に戻り眠りについた。
朝日と共に庄野は目を覚まし体を起こす。寝ているサクラを起こさないように日課である早朝の駆け足をしようと玄関の扉を開けるとそこにはいつもの西の都は無かった。
ほとんどの田畑は水で見えない。
道があったはずの場所は小さな川になっている。
都のほとんどが水没しており人が歩けるような状態ではない。
幸いにも庄野達がいる屋敷は丘の上にあり水害を受けなかった。
(・・・災害。近隣国もサリアンも相当な被害が・・・。いや、俺の出来ることは限られてる。西の都で出来ることをやろう。)
意を決して準備をしようと屋敷に戻ると下を向いて広間をうろうろと歩くアルフと出会う。
「・・・どうしたもんかね。」
「アルフさん、どうしたんですか?」
「あぁ、庄野さん。こんな天災、今まで無かったからね。どうしたらいいのか考えてるんだね。」
「まずは人命救助。それが終わったら水の除去。同時平行で救助した人の生活環境の確立、特に飲み水の確保が望ましいです。」
「ふうむ・・・そうだね。まずは人を助けないとね。流石だねぇ。」
「ですが、人を助けるにもこれだけ水浸しでは動けません。魔法で何とかなりませんか?」
「ワシが使えるのは壁だけだからね。ま、出来るとすれば壁を繋げて足場にしたり、水を押し出したり出来るね。」
「わかりました、お願いします。」
(災害派遣を思い出すな・・・いや、思い出したくもないな。津波、水害・・・特に、3月11日のあれだけは・・・。)




