第33.5話 慕 情2 ~伝達事項一件~
「・・・。」
朝になり全く状況を掴めていない男が1人。
身に覚えのないベッドに横になっている。
頭の周りにはコピードールが寝ている。
そして庄野を抱き枕のようにして眠る少女が1人いる。
(コピードールがここにいる理由はわかる。たまに俺の頭の近くで寝てることはあった。・・・しかしながら、何故姫様が俺に抱きついて寝てるんだ?というか・・・ここ、姫様のベッドか?昨日は椅子に座ったまま寝落ちして・・・た?)
起きて直ぐに頭を回そうとするが庄野の頭はそれどころではない。何を考えても自分に抱きついているサクラの事で頭の中は満たされる。別の事を考えても目の前の女の子の顔が目に入り浮かんでは消えるを繰り返す。
どうでもよくなり考えることを諦めサクラ姫の頭を優しく撫でた。
(あー・・・。・・・。サクラ姫の髪、サラサラだ。シャンプーの香りがほんのりと残ってる。寝顔が可愛い。沢山泣いたからまだ目が少し腫れてる。ご飯もずっと食べられてなかったからかなり痩せたな。元気になって、また笑顔を見せてほしい。)
ドクン、ドクンと寝起きではあり得ないほどの心臓の跳ね上がりを感じながらサクラを見つめる。
(俺はサクラ姫が好きだ。色々考えたけどこれだけはちゃんと伝えたい。どんな結果になろうとも実行しなかった事による後悔だけはしたくない。)
しばらくすると、女性の頭を撫でながら悶々としている自衛官を抱き枕にしているサクラが目を覚ました。
「ん・・・んん?」
「お・・・お早うございます。」
寝起きでまだ意識がはっきりしておらずぼやーっとした反応をする。
「うん・・・。」
「・・・朝食にしますか?」
サクラは何も言わず首を横に振って拒絶する。依然として庄野に抱きついたままである。
「食欲、無いですか?」
首を縦に振る。
「まだ、起きたくないですか?」
首を縦に振る。
「・・・俺も一緒に寝てて良いですか?」
首を縦に振る。
「・・・サクラ姫の事が好きです。約束もちゃんと守ります。だから・・・これから先も貴女の側にいて良いですか?」
反応がない。
(・・・寝ちゃったか。俺も抱きつかれて動けないし、二度寝するかな。)
サクラが目を覚ます。目の前には「庄野」と書かれた名札が縫われている迷彩柄の服がある。見上げると好意を寄せる人の顔がある。
(あれ?私・・・そうだ、怖い思いずっとしてて、何も出来なくなったんだ。それで・・・てつや様がずっと看病してくれてた。昨日の夜、起きた時にベッドに引き込んだからてつや様と一緒に寝てるんだ。)
看病されていた時の記憶が徐々に鮮明になる。
(私が泣いてたとき、ずっと撫でてくれた。・・・また、撫でて欲しいな。)
看病されていた時の記憶がクリアになっていく。
(ご飯・・・食べさせてくれてたんだよね。てつや様・・・ありがとう。)
顔が熱くなる。涙が不意に流れてしまう。
(・・・好きって・・・言ってくれた。・・・私も・・・てつや様の事・・・ちゃんと、伝えないと。)
時刻は昼を過ぎていた。ベッドで抱き合うように寝ている二人はほぼ同時に目を覚ました。
「サクラ姫、おはようございます。」
「う・・・うん・・・。」
(ん?サクラ姫の反応が悪い。何より顔が赤いのが気になる。体調が悪いのかもしれない。)
サクラの心中を察することが出来ない庄野はサクラのひたいに手を当てる。
「あ・・・う・・・。」
(熱は無いが・・・さっきより顔が赤くなった気がする。大丈夫だろうか・・・。)
「サクラ姫、大丈夫ですか?」
「う・・・うん。大丈夫です。」
「・・・無理しないでください。ホントに大丈夫ですか?」
「はい、ホントに・・・。あ、あの!」
「どうしました?」
「あ、あの・・・私・・・あの!あの・・・。」
サクラの目に涙が滲み始める。
「・・・サクラ姫?」
「あ・・・う・・・(ダメ!泣いたら言えない・・・泣いたら・・・言えな・・・!!)」
「大丈夫です。ゆっくりでいいですから。」
庄野はサクラの頭を優しく撫でる。サクラの目から涙が流れていく。
「・・・うん。ぐすっ。・・・ありが・・・とう。私の・・・こと・・・ひっく。う・・・たすけ・・・く・・・て。あり・・・うえぇ・・・。」
(恐怖状態からここまで戻ったのも昨日の今日だ。無理はしないでほしい。ゆっくりで良い。大切な人にこれ以上辛い思いはさせたくない。それに・・・好きって言えた。ちゃんと伝えたいことを言葉に出来た。サクラ姫には伝わってない。いつか、ちゃんと伝えよう。その時はもっと、素直な気持ちで。)
(・・・好きって言えなかった。まだ頭のなかに浮かんだ言葉を上手く喋れない。でも・・・お礼はちゃんと言えた。ありがとうって言えた。少しずつで良いから1つずつ伝えていこう。次は泣かないで伝えられるようにしよう。いつか、ちゃんと言葉にしよう。その時はもっと、好きだって気持ちで。)




