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尚、士気については旺盛であります!  作者: 固太 陽
第一章
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第32話 決 裂 ~同じ目的、同じ目標、異なる道~

「サクラ姫の治療はコピードールに任せて西の都を出ていこうなんて考えは持っちゃダメだね。」

「・・・え。」


静寂を破るアルフの言葉に庄野は驚きを隠せなかった。


「サクラ姫が可哀想だね。自分のせいで庄野さんが出ていったと、自分を攻めるだろうね。不甲斐ない自分が許せないとしても、それだけは、ダメだね。ワシも悲しいね。」

「はい。(・・・見透かされていたか。)」



デルとの口論の最中から今に至るまでサクラの泣く姿はいっこうに変わらなかった。鑑定士が必死になだめるも効果はなく匙を投げ庄野にバトンタッチした。




「で、どうやって治すんだね?」

「治癒を行います。皆、頼むぞ。」

「キュッ!」「キュッ!!」「キュッ!」



コピードールは庄野の指示によりサクラの頭に向かって治癒の魔法をかけていく。



「頭を治癒して治るのかね?」

「俺の世界でで似たような症状の病気があるんです。疲労が溜まっているのに休まず頑張りすぎて、それが原因で心が疲れて脳が正しく働かなくなって、正常な判断ができなくなるんです。そういう脳の機能が低下する病気があって・・・最悪の場合自ら死を選択する場合があります。専門家じゃないので細かい事は分からないですが、脳の神経を少しずつ修復すれば良いらしいです。恐怖という状態に対応できるかどうかは分かりませんが、少しずつ治ってくれるはずです。」



「ふぅん。専門家じゃないっていう割には詳しいんだね。もしかして・・・?」

「・・・。」



「・・・そうかね。頑張ったんだねぇ。」

「・・・。」



あえてアルフも深く聞かなかった。庄野もあえて語らなかった。

コピードールの治癒により少しずつサクラが泣き止んでいくが、会話がままならない状態は続き、気がつけば朝日が登り始めていた。







(朝か・・・。)



「入るぞ。」

ノックの後にデル達が部屋に入る。





「・・・サクラ姫の調子はどうだ?」

「まだ何とも言えないね。でも昨日よりは少しずつ良くなってるね。普通なら2日目には発狂してるね。」


「そうですか。」

「・・・。」



アルフとデルの会話は昨日から引き続き険悪な状態が続いている。ボラブとリーも口を開こうとしない。

そんな中開口一番どんよりとした空気を乱したのは修道服の女性であった。



「おはようございます。サクラ姫の状態を見ます。・・・凄い。昨日より良くなってます。恐怖状態が僅かですが軽減している!・・・一体どんな方法で?」




鑑定士の一言に皆がため息と安堵の表情を表すがデルだけは険しい表情であった。




「そうか。治る見通しがあるなら・・・お前達に頼るしかないな。だが・・・魔王討伐の一件についてお前達に手を出させられない。お前と魔王の関係にはまだ納得がいかん。」

「・・・デル、お前さんの母君が生きてたらそんな事言わなかったと思うけどね?」




「・・・母を・・・知ってるんですか?」

「まぁ、伊達に長生きはしてないし、あの人とは色々とあったからねぇ。・・・だからこそ、あの人に託されたサクラ姫には、ちゃんと元気になってまた笑顔でこの西の都を歩いて欲しいね。故に、昨日のお前さんが剣を向けたことをワシは許せてないね。」




険悪な雰囲気が続く中、コピードールの魔力が尽き休憩をしている間に鑑定士から不意に声をかけられる。



「あの・・・庄野様は異界の来訪者なんですよね?何かスキルはお持ちなんですか?」

「えっと・・・スキルとは?」


首をかしげた庄野に鑑定士は丁寧な口調で説明する。


「来訪者のスキルとは簡単にいうとその人を表す代名詞です。この世界に住む方々のスキルとは魔力を使わずに使用できる特別な能力を指します。例えば、物凄いスピードで走れたり、剣捌きがとても早く出来たり・・・、それらは魔物を倒す、仕事をこなす過程で得た経験値に応じて獲得出来ます。」

「なるほど。そういう類いは持ってないと思います。」



「では!ちょっと鑑定しましょう!今回はサービスですのでお金は取りませんから!」

「・・・はぁ。」



グイグイとくる鑑定士におされ渋々承諾し庄野は鑑定を受けた。結果は意外と言えば意外、妥当と言えば妥当なものであった。

















「・・・出ました!『決して折れない心(ブレイブ・ハート)』!・・・。・・・です。」

「どういうスキルなんですか?」



庄野の質問に鑑定士は目を右へ左へと泳がせている。この反応だけで使()()()()ということを庄野は察した。



「・・・ええと。その、」

「鑑定していただいてありがとうございます。あと、貴方の名前を良かったら教えて下さい。」



「え?・・・私に名はありません。産まれたときから死ぬまで修道院のシスターです。皆シスターと呼びますからそう呼んでください。」

「わかりました、シスター。1つだけ、これだけは隠さずに答えてください。『俺のスキルは誰かのためになりますか?』」


意外すぎる質問にその意味を理解できずシスターは固まってしまう。徐々にその意図を理解しはっきりとした声で答えた。








「はい。なりますよ。人のため、世のためになるスキルです。」

「ありがとうございます。それだけ分かれば十分です。」




ほっこりした雰囲気の二人をよそにデルとアルフは口論を続けていた。



「・・・話しは終わったようだな。庄野、答えろ。魔王はお前の何なんだ?」

「杉村は・・・俺の友人、です。」



「友・・・?ではお前はどっちの味方なんだ?」

「俺はサクラ姫のために戦います。」



「・・・。どんなにお前のサクラ姫に対する忠誠心が高くとも、お前は魔王と親しい関係にあった。それだけで十分だ!・・・お前は・・・私の・・・いや、我々の脅威とみなす!!アルフ殿、私は西の都に敵勢分子がいる可能性があると判断し、サリアンとの協定は破棄させてもらう!」

「構わんね。あってもなくてもお前さん達は西の都へ敵襲が来ても守ってくれたことなんて1度も無かったからね。これ以上はもう話し合ってどうなる事も無いね。ほら、話は終わったから帰るね。」





「・・・行くぞ、ボラブ、リー。」

「おぉい!デル!待たんかぁ!」

「おいおい・・・らしくねぇな。何を焦ってんだ・・・ったく。あ、庄野よぉ、姫ちゃんが元気になったらソーラにまた来てくれよな。カエデの嬢ちゃんが会ってまた話が聞きたいってよ。ソーラも俺もその辺は気にしてねぇからいつでも来てくれよ、じゃな。」



3人の英雄達は西の都を出ていった。それぞれの表情はバラバラで浮かない顔をしているものもいれば対して気にしていないものもいた。




「帰ったね。全く・・・。」

「あの、良かったんですか?彼等に敵と見なされたのは良くないんじゃ?」



「ん?あぁ、気にしなくていいね。数十年前もデルの曾祖母様に同じ事言われてサリアンを追い出されてるから慣れてるね。『魔族とつるむ反逆者め!』ってね。その一緒にいた異界人がこの世界を救う大英雄になってサリアンを救って、その曾祖母の娘と結婚するなんて誰も思ってなかっただろうけどねぇ。」

「・・・え?じゃあ、デルのおじいちゃんって・・・ん?アルフさん、何歳なんですか?」



いつもと変わらない笑い声のあとに『この話は次回だね』と言って部屋を出ていった。シスターも仕事が終わったようで『サクラ様の様子が急変したら呼んでください』とだけ言って部屋を出た。




部屋に残されたのはベッドの上で泣いている女の子と昨日までは仲間と思っていた人間に剣を向けられショックを隠せていない自衛官だけである。




(完全に決裂・・・明日からどうすればいいか・・・。まぁ、やることは変わらないな。姫様の看病をしながら左腕を治す。それが終わったら姫様をこんな目に合わせたあいつらとの戦いだが・・・それについては・・・任せよう。俺の出る幕じゃなさそうだ。)





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