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尚、士気については旺盛であります!  作者: 固太 陽
第一章
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第30話 対 立 ~任務が変われば地位も変わる~

「杉村・・・お前、何やってるんだ?」

「久しぶりだなぁ?庄野ぉ。怪我の具合はいいのか?」



杉村の表情はいつもと何も変わらない。そんな彼に庄野は違和感を感じる。



「お前が俺達にあのメガネをけしかけたんだろ。その癖に心配するのか?御存じだろうに。・・・それより、お前。」

「そんなに怒るなよぉ。冗談だ。・・・おぉ?庄野ぉ!お前のその横の女の子!可愛い子じゃねぇか!これか?ほれ、言ってみな?えぇ?」


小指を立てながら「ん?んん?」とムカつく顔を繰り返す杉村という男は日本に居たときと何も変わらない。しかし庄野は違和感を感じていた。同じ防衛大学で、同じ習志野駐屯地で全てを共有していた庄野にとっては。



「・・・お前こそ、晴香ちゃんにはちゃんと別れを言ったのか?」

「あ?・・・そうだな、うん。・・・言えば良かったな。」



(反応からしてこいつも突発的にここに来たのだろう。俺と同じように気が付いたら異世界にいた。しかし、迷彩服がやたら綺麗だ。何より・・・あいつの89式が()()()()。何だ、あれは。)




自衛官である以上、同じ部隊で同じ階級であれば貸与される武器はサイズ以外同じものである。立場や運用、部隊の補給状況や職種によっては拳銃だったり、未だに64式小銃を使う所、一部例外も存在する。

それなのに杉村が手に持つ89式小銃は庄野の持つものと見た目は同じだが様子が違う。



「答えろ。何をやっているんだ?」

「何て答えたら良いんだかな。ま、手っ取り早く言うと魔王だな。」


(まぁ、そうだろうな。そんな感じの連中を引き連れてるようにしか見えない。)



「いつからここにいる?」

「半年前位かな。お前を探してたらここに来た。そして・・・()()()()()。だから今、ここにいる。」



(・・・冷遇された異界人の末路・・・、消息を絶ったと言われる魔族・・・。アホな王の暴挙・・・。)



「お前、もしかして」

「なぁ・・・。庄野ぉ?!・・・お前なら何で俺がこんな事してるのか、わかるだろ?」



(・・・そういう事なのか。)



「・・・サリアンへの復讐だろ?」

「そうだ!この世界、この国は!!来訪者、異界人は!!!強い魔力を持ってるか、強い魔物を引き連れてるかってだけで!産まれ方を否定し、生き方を奪う国だ!そんな国に未来はない。だからこそ、この国を、この世界を正しい方向に導く!全員が平等に、道をまっすぐ歩めるような国を作る!・・・自衛官として、国民が安心した生活をできるようにする事が俺の役目だ!そうだろう・・・?単刀直入に言う、庄野、こっちに来い。お前はこっち側だろう?」




(サリアンから異界人を追い出すシステム・・・あの王様は異界人が集まると強くなると思ってたんだろう。都合のいい異界人だけをサリアンヘ引き込む。その実はかつての英雄を崇拝しているサリアンの信仰心を利用して国を保つために祭り上げる事と強い使い魔を無償で手に入れられる最悪のシステムだ。それが原因で・・・もしかして、かつての魔族討伐も実は・・・?いや、それは憶測だ。だか結果的に異界人を結束させてこうなった訳だ。策士策に溺れるとはよく言ったものだな。)



「断る。理由になっていない。自衛官としてお前に・・・」

「・・・。」

(・・・断って・・・5秒・・・右肩に・・・。)

杉村のすぐ横に黒いフードを被った男がぼそぼそと呟く。それを聞いて庄野を煽るかのようにニタニタと笑い歯を露骨に見せてくる。


「何がおかしい、杉村ぁ!」

「来いよ、庄野ぉ!」


バァン!と空気の破裂音が2つ。数秒後に金属が地面に落ちる。





庄野が撃った9mm弾は杉村のどす黒いオーラを放つ89式小銃の5.56mmの弾によって文字通り()()()()()()()




(弾丸同士が・・・当たった?当てたのか・・・どうやって?・・・まさかっ!)





「・・・杉村。お前は!」

「平和のためなら命を捨てる覚悟を持て。・・・俺は、()()()()。仲間のよしみだ、1つだけ教えてやるよ。この89式小銃から発射した弾は俺の意思で好きなものに、好きなタイミングで、好きな軌道を描いて着弾させられる。だからお前の発射した拳銃弾に当てた。発射上見とその効果の発動条件は1つ、『引き金を引くこと』だ。当然、今ここでお前達全員の頭に穴を開けることも出来る。・・・試してみるか?なぁ、英雄さん達よぉ・・・!一歩でも動けばこの鉛弾と同じ運命を辿るぜ?なんなら弾丸を切り落としてみるか?なぁ!?」



罵声を放ちながら銃口を庄野の後ろにいるデル達へ向ける。




「・・・流石各国の英雄達だ。お利口で助かるよぉ・・・。おい、庄野ぉ、もう一度言うぞ・・・こっち側にこい。」




(・・・どうする?あいつの口車にのるのは癪だが、人質を取られてるようなもんだ。・・・クソっ!)













「てつや様は渡せません。」








返答に渋っていた庄野の横から強い口調で答えたのはサクラだった。


「ひ、姫様?!」

「おいおい、嬢ちゃん!俺は冗談は好きだけどよ?・・・笑えねぇ冗談は大っ嫌いなんだよぉ!」

「渡しません。てつや様は私の騎士です。だから、私が守ります。」



姫様の顔は真剣そのものであった。その返答を聞き杉村は何故か満足そうにしている。




「・・・は!あっはっはぁ!最高だなぁ、嬢ちゃん!その目・・・マジだな。おぉい!庄野ぉ!お前も見習った方がいいぜぇ?俺を撃つとき明らかに殺したくないって顔してたな!俺の肩狙って撃ってよぉ!覚悟が足りねぇんじゃねえの?なぁ!・・・だがよぉ、嬢ちゃんの目は()()目をしてやがる。こりゃ楽しみだなぁ・・・。ま、今日は・・・挨拶だけだ。『集まれ!』。」



杉村の号令と共に6人の異界人が集まる。



「聞け!サリアンで、この世界でのうのうと暮らす愚民ども!!俺の名は杉村秀誠(すぎむらしゅうま)。そこにいる庄野哲也とは前の世界では友人であり・・・仲間だった。しかし!今は、この世界で俺は魔境の長として、魔境の王として!魔王として!!ここにいる!!!そして、ここにいる6人は世界を平和にしたと将来英雄として祭られる予定の我らが魔境の精鋭達だ。」



杉村の顔から徐々に笑顔が消えていく。その表現は殺意に満ち溢れていた。



「今日俺がサリアンに来たのは他でもない。サリアン国への復讐、そしてこの世界に平等をもたらす事を宣言するためだ!望みもせずこの世界に足を運んでしまい、この国から望まぬ待遇を受け追い出された異界人と呼ばれる人間に告ぐ。お前達は何をした!魔力を持たないから、使い魔が強くないから・・・そんな理由で追い出された俺達は何も変わらない!お前達と何も変わらない人間だぞ!!・・・人間の・・・人の怒りと悲しみを、同じ苦しみを味わうがいい!・・・全てが終わった後は、この世界を再興する!我らと共に歩みたいものは魔境へ来い!異界人じゃなくても構わない、再興を望むものならと共に戦おう!・・・それに反して、俺達と戦うというなら、再び俺達と相間見えるまでベッドの下で震えてるがいい・・・。さらばだぁ!」



黒いモヤがかかったトンネルが出現し一人ずつ順番に入っていく。


「まおーさまぁ?挨拶だけなんだよね?なら・・・挨拶代わりにやってもいいよね?ね?ね?」

「んあ?あー、そうだな。・・・そっちの方が面白くなりそうだ。良いぞ。」



「やったぁ!エー子ちゃん!あの女、止めといて!」

「えぇ。私好みの女の子相手ならいくらでも。」



長い髪のエー子と呼ばれた女性が指をパチンと鳴らす。庄野達は何をされたのかわからずキョロキョロと回りを見渡す。






サクラを除いて。




「あれ?・・・何で?」

「はぁ、可愛い。身動きとれなくなった女の子ほど興奮するものはないわ。唇も、乳房も、秘部も・・・。全てを喰らいたいわ。」


(こいつ!・・・だが、ヌークと同じで腕を使えないようにすれば!)



瞬時に拳銃を構えて発砲する。



弾はエー子に直撃する直前で何かにぶつかったわけでもないのに回転した音だけ残しながら空中で止まっている。



「なっ・・・?!」

「はぁ・・・魔王様に当たらないなら私にも当たらないと分からないのですか?ドラゴン使い、オニトンボ、ヌーク(糞メガネ)を倒せたら我々も倒せると?あなたが倒した連中は言うなれば・・・最初の村の外に出てくるスライム、雑魚です。私のレベルは、そうですね・・・物語中盤の中ボスと思ってください。ここまで言えばあなたと魔王様との力の差が歴然なのも理解できると思いますが・・・。そんな事より、可愛いお姫様をほったらかしにして私に玉を出してる余裕があるなんて、騎士としてなってないですね。」



庄野が気をとられてる間に小学生位の女の子がサクラの前に立っていた。



「じゃ、これは挨拶代わりってことで・・・『恐怖』をプレゼントー。じゃね。」




動けなくなったサクラの頭にチョンとふれモヤに消えていった。



「えっ?・・・何これ?・・・何?いや、嫌、イヤ、嫌ぁぁぁ!!!!!!助けて、怖い、・・・ぃ・・・。」





「お前、姫様に何をした!」

「人に向かって発射()しといてその後はポイ捨て・・・だから男は嫌いなのよ、ムカつくから一発いれますね。」



エー子のスレンダーな足から想像できない威力の蹴りが庄野の左腕ごと脇腹に直撃しゴキッと鈍い音がする。



「ヴゥッ!(なんつう蹴りだ!・・・腕もあばらも折れたどころじゃない・・・ガラ王以上の・・・。)」

「はぁ・・・私も挨拶代わりってことで。それでは。」



うずくまり吐血する庄野に背を向けモヤに消えていった。モヤの前には杉村が腕を組み仁王立ちに叫んだ。



「はっはぁ!情けねぇな!庄野ぉ、言っとくがエー子は6人の中じゃパワーは一番下だぜ?俺とやりあう時にはデコピンで死なないくらいに鍛えておいてくれよなぁ・・・。」



杉村がモヤの中に入ると静かに風と共に消えていった。城下町の広場は逃げ惑う民衆と傷付いた城の兵隊、そして・・・






倒れる庄野とその傍らで泣き叫ぶサクラをただ見ることしか出来ない3人の英雄とかつての英雄の一人だった老人が立ち尽くすだけだった。

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