第29話 再 会 ~それは避けられなかった運命~
「戦争で人を殺した事がある人間の7割はPTSDになる。残りの3割は殺人を犯しても何も思わない狂人かサイコパスだ。・・・という文献をみてどう思う?俺達もその3割になればいいと思うか?そんな人間で形成された部隊に居たいか?大切なのは、『撃たなければいけない時に撃つ覚悟をもつ』事だ。心が壊れたらゆっくり治せば良い。治ったら壊れた連中を助ける。それが出来るのは7割の人間だ!・・・辛い時は支え合う!仲間とはそういうものだ!」
(夢であの時の教育を思い出した。なかなか難しい内容でピンと来なかったが、俺は7割側だったようだ。)
起床と共に日課の駆け足をしようと屋敷の前に出ようとする庄野にサクラが声をかえる。
「おはようございます、てつや様。その・・・。デルからの手紙です。」
「ありがとうございます。」
手紙の内容はとてつもなくシンプルで「この手紙を見たなら速やかに3人でサリアン城に武装して来い」というものであった。
「3人で来い、ですか。何なんでしょう?(てつや様の勧誘じゃなかった、良かった・・・)。」
「そうですね。朝食をとって準備ができたら行きましょう。」
「準備が出来ました。行きましょう。」
「筋肉痛が、痛いね。今日は、休ましてほしいね。」
「筋肉痛が痛いことは無いです。疲れたら俺が運びますから。」
サリアンの門前に到着すると気だるそうにしている男の代わりに陽気な雰囲気の女性門番が待っていた。
「おぉ!お待ちしておりましたぁ!デル様から話を伺ってますよね?私も伺ってます!!城内の話し合いばっかりする部屋へお願いしまーす!あ、今日から門番に上番しました、マルクでーす!よろしおね、あ、ちょっと!最後まで話聞いてくださいよぉ!ねぇ!」
(うるさい女だ。ああいうタイプは一番苦手だ。)
門番にうんざりしながら庄野達は前回大荒れとなった部屋へと案内される。
(椅子の数が1つ足りないまま、壁は修繕されている。そして部屋には・・・懐かしい面子だな。)
「久しぶりだな、庄野。怪我の具合は良さそうだな。」
「おぉ!我が王と殴り合いをしたとは!お前!バカだなぁ!」
「うちの嬢ちゃんもお前さん達が帰ったあと、泣いてたぜ?罪な男だなぁ、おい。」
「皆さん、お久しぶりです。」
「初めまして、サクラです。」
「ほっ。英雄が勢揃いだねぇ。」
かつてオニトンボ、もとい巨大トンボと共に戦ったデル、ボラブ、リーがそこに座っている。3人とも見た目に変わりは無いがトンボ退治とは非にならない程装備を固めている。
(顔つきは穏やか・・・だが。多分、話し合う内容は穏やかじゃないな。)
西の都から来た3人が席に座るとデルが話を始めた。
「今回、西の都から来てもらった3人には魔石事件について話をしてほしい。特にヌークの最後について。まずはアルフさんからお願いします。」
「ワシは一番遠くでへばってたからあんまり見えてないね。近かったのはそれこそ庄野さんとサクラ姫だね。」
「では、サクラ姫。」
「口から煙が出てて・・・口の中から僅かですが黒色の炎が出てて、まるで内側から燃えていったように見えました。それ以上は」
バァン!と机を叩きながら勢いよく立って声を荒げたのはリーだった。
「はぁ!黒いの炎って!おい!まさか!」
「リー、気持ちは分かるが落ち着いてくれ。」
いつもクールな反応をするリーが興奮を押さえされないほど牙を剥き出し獣のように荒く鼻から息をしながら着席する。
「続けよう。庄野は?」
「尋問をしました。黒いローブを着たものから魔石と『呪いの炎』という魔法の使い方を教えてもらったと言ってました。」
庄野が話終えるとデル、リーの2人は顔を見合せ『やはり』という顔をしている。ボラブはその2人の顔をみて難しい顔をしている。
「結論から言う。今回、各国の英雄に集まってもらった理由は2つ。今回の魔石事件に魔族が絡んでる可能性がある。そして、サリアンの現状では協力を得られる環境に無いことだ。先程の証言だが、『呪いの炎』は魔族が使う闇魔法で飛距離は無いが当たれば対象をを永遠に燃やすという効果は恐ろしいものだ。この魔法の特徴は魔石を着火装置として使用する。扱いを間違えるとその魔石は燃え、自身を燃やしてしまう。特に闇魔法を上手く使えない魔族以外が使用すると・・・自らが燃えてしまう代物だ。」
「そんな魔法を!人間に使わせるなんて!何て連中だぁ!」
「しかもヌークは、魔物を放ってたんだろ?つまりは・・・魔族が再起した可能性が高いってわけだな。」
「そんな・・・魔族が。」
「魔王復活・・・ねぇ。思い出したくなかったんだけどね。」
(魔王復活か・・・ただ、魔族の目的が何というか、人間味がありすぎて違和感がある。)
デルは話を続ける。
「二つ目だが・・・これは我が国の問題で申し訳無い、サリアン王が一昨日失踪した。故に各国に声をかけられる王族がいない。ヤエ様もヌークが犯人と分かった日には消えた、シダレ様も王の失踪にショックを受けて寝込んでいる。故に各国の英雄に声をかけた。私がしっかりしていれば・・・すまない。」
「おぉ!まかせろぉ!」
「ま、俺が同じ立場でも同じ事をしてたさ。」
「えぇ、私も協力します。」
「・・・そうね、ワシがどれほど役に立つか分からないけど力を貸そうかね。」
(今回のヌークの行動、それによるサリアン王の失踪、魔王の目的・・・それぞれの目的は何だ?待てよ、ヌークの行動が欺瞞としたら・・・。・・・鉄は熱いうちに、だな。)
皆が協力体制でこれからについて話し合う中、庄野だけは別の視点でこの問題の闇を見出だそうとしていた。そんな彼にデルは疑問を投げ掛ける。
「庄野、何かあるのか?」
「ここにいる皆さんに武装させて来させたのは、もしかしたら魔族が襲ってくる可能性があるから、ですか?」
全員の会話が止まり静寂に包まれる。デルは再び問う。
「そうだ。それがどうした?」
「もし襲うなら準備が出来ていない段階で攻めた方が良い。・・・今回のヌークの行動の目的はサリアンへの復讐ですが、それだけを見れば魔族との繋がりは見えないし、回りくどすぎる。しかし・・・それによりサリアン王への不信感を促し、国の動きを一時的に機能停止させて今後の対応を疎かにすることが真の目的なら話は変わります。魔族の思惑でサリアンがこんな状態なら・・・攻めてきます。それもかなり早い段階で。俺なら今日やります。」
「・・・てつや様、流石にそれは。」
「考えすぎだと思うけどっ、おぉ!・・・なっなんだね!?」
大きな地響きと共に外から爆音がする。鳴り止んだ爆音は人々の悲鳴に変わりその音は徐々に大きくなっていく。
「皆、行くぞ!」
「おぉ!まかせろぉぉ!!」
「へっ。庄野よぉ、こういう時くらい予測を外してくれよな!」
「てつや様、アルフ。我々も行きましょう。てつや様はなるべく戦闘を避けてください。」
「だね。ワシとサクラ姫で守りながら戦うからね。無茶はしたらダメだね。」
「・・・わかりました。」
城下町ではサリアンの兵隊が必死に戦っているが魔王の部下に手も足も出ない状態で劣性であった。
「ふぅ、つまらない。サリアンの兵隊とはここまで弱いのですね。」
「エー子ちゃん、容赦ないねー。弱い人間ほど楽しいから玩具なんだから、いたぶって遊ばないと!」
「人間!雑魚!殴り放題!良い!最高!」
「異世界なれど、拙者は武士道を貫く。さりあんの愚かな民は皆切り捨てる。いざ!」
「・・・来る。」
「あぁ・・・まだ戦わなければならないのね。」
城下町、広場で暴れているのは
風貌も
年齢も
性別も
言葉遣いも
全てバラバラであるが角や羽も無ければ肌の色が紫色でもない、想像していた魔族とは全く異なるどこにでもいる普通の人間の姿、それが6人。
デル達と庄野達、合わせて6人はその魔族達ともう一人のリーダーのような風貌をした男の前に立ちはだかる。
デルは剣を抜き、黒色、緑色、茶色の斑点模様の服を着たリーダー格の男に向かって叫ぶ。
「そこまでだ!・・・その服は。」
「おぉ?似てる服だが、知り合いかぁ?」
「んなわけ・・・ねぇ、よな?」
「てつや様と・・・同じ服?」
「庄野さん・・・まさか。」
「お前、何やってんだ?杉村。」
「はっはぁ!久しぶりだな!庄野ぉ!!!」




