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尚、士気については旺盛であります!  作者: 固太 陽
第一章
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第28話 壁 ~破るもの、越えるもの、立ちはだかるもの~

「さぁて・・・と、どこから話そうかねぇ。」


空を見上げながらアルフは話を始めた。





独りの青年がいた。彼はサリアンで落ちこぼれの騎士であった。攻撃魔法は何も使えない、防御魔法だけしか使えない、年端もいかない若者にも実力差を見せつけられて居場所を失い国を出ていこうとした。そんな時に1人の異界人がその青年を引き留めた。

『お前に興味がある。来い。』

青年は次の日からその異界人と魔法の研究に没頭した。青年の防御魔法は対魔法、対物理に特化したもの、土、風、炎、雷、水の属性を持つ防御魔法。いつしかその魔法壁は魔法を反射し、次元を越える力を得た。様々な防御魔法を壁として生み出し、その壁はかつての英雄を助け多くの伝説を残した。

彼は後に「城壁人間」と呼ばれた。



「って語られてるけどねぇ。」

「その話なら聞いたことがあります。」



「ほっ。それならワシが「死神」って呼ばれたのって知ってるかね?」

「噂だけですが。」



「そうだね。・・・魔族って一言にいっても前に庄野さんが戦ったオニトンボみたいな魔物もそうだし、基本は魔境にすんでいる生物はみんな魔物って呼ばれてるんだよね。うん・・・。だからね、普通の人のなりをしてて、ワシらと何ら変わらない生活をしてても住んでる場所が魔境だったってだけで魔族扱いを受けるんだよね。」

「・・・。」



「魔族討伐も初めは獣ばかりだったんだけどね。戦いが進むにつれてね、最後には魔境で・・・全部、ね。村とか、町とか一杯あったけどね。全部、壊して、全部、殺したね。前線でガードしながら壁で圧殺するのがワシの戦い方でね、ワシがやるしかなかったんだね。魔境に住んでる住民は・・・それこそ魔法なんて全然使えない・・・その、人間ばかりでね。抵抗してくるから殺したけど、端から見ればただの虐殺行為に等しかったね・・・。それがあってからワシは、魔法が嫌になってね、何十年も使えなくなったね。」

(・・・何かを隠してるような言い方だな。やっぱり魔族ってのは・・・。)




「でもね、お前さんに会ってまた魔法を使おうと思ったんだね。姫様が闘技場の景品にされた時があったね。あの時もまだ使えなくてねぇ。だからワシよりは勝算のある庄野さんを無理やり連れていったんだね。で・・・お前さんは相手を殺さずに勝ったよね。自分が殺されるかもしれないのに、殺さないで相手を無力化させたのを見て・・・魔法が使えるはずなのに使わないだけでいじけてる自分に嫌気を感じてね。また頑張ろうと思ったんだね。だからね、気負いしなくていいね。ワシも一緒に頑張るからね。お前さんの目の前にある壁は一人でぶち破らなくても良いね。ワシ、壁には詳しいからね。じゃ、おやすみ。」

「・・・ありがとうございます、おやすみなさい。」



(壁は一人でぶち破らなくても・・・か。俺の場合は・・・()()()()()必要がある。このままじゃダメなんだ。誰かとぶち破って進むことが出来ても同じ壁に当たった時にどうも出来なくて立ち尽くすしかない。ならばこそ、一人で壁を越える力をつけなくちゃいけない。人を殺めてしまった、それを無理やり忘れる必要もない。これに慣れていく必要がある。ここは日本じゃない・・・生きるか死ぬか、だ。)




庄野の心がほんのりと熱くなる。



(今の俺には守るべきものがある。日本にいた時のような漠然とした対象ではない。一人の女の子だ。それが良いことなのか、悪いことなのかは分からないが。)


頭の中にあった映像から感じられる暗い感情が晴れていく。


(やるしかない、そうだろ?悩んでも苦しんでもやらなければ殺られるのは俺だ。殺すために引き金を引くんじゃない。守るために引くんだ!たとえ、左腕が十分に動かないとしてもまだ心は折れていない。口癖のように何回も唱えてたじゃないか。今!そういう状態にいるじゃないか!!


尚、()()()()()()()()()()()()()()!)



「スキル発動『???』」


庄野は立ち上がった。その目には力強い決意、その背中には一切の迷いを見せない勇ましさがあった。
























「報告します。魔石による実験ですが、対魔法、対物理を同時に体表面に反映させるのは現段階では不可能です。」

「でもさー、そういう生物をかき集めてそいつらの皮で全身を覆える防具作れば良いんじゃないの?」

「無理!頭部!露出!無意味!」

「人間が人間である故、頭部に被り物をせず守れる術があれば、へるめっと、というものも兜も必要ありませぬな。」

「・・・。避けられない。戦う運命。」

「あぁ・・・また、戦うのね。」


「まぁまぁ、ヌークが殺られたのは想定の範囲内だ。相手が悪かった。魔石の実験は結果的に失敗はしたが、出来ない事が早めに分かったし、人間をそのまま魔石にするって事は成功した。強力な魔獣を造れるってのが分かったんだ。今後の戦略の組み立てに変更も無い。次の段階だ。」



6人を仕切る男はどかっと玉座に座り話を続けた。



「今サリアンの連中も隣国どももあのアホな王に責任をとらせるかどうかで頭がいっぱいだ。今、サリアンを襲撃する絶好の機会だ。邪魔な隣国とは連携を取れない。あの3国が手を組みさえしなければ・・・いや、組んだとしても俺達が負ける要素は何もない。明日、出発する。サリアンに気付かれないギリギリの地点に空間魔法を作って一気に攻める。門をくぐったら各人は所定の方向へ攻撃を仕掛ける。反撃を食らっても生還出来る分の魔力だけは残しておけ。・・・各人は装備品を確実に点検するように。それと、ゴル。ヌークの処理に呪いの炎を使ったな。闇魔法を使うと遺体は残らないが魔力の痕跡が残る。次は使うなよ。」

「はーい、気を付けまーす・・・()()()。」

「以上、質問!・・・各人、準備にかかれ。」

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