第26.5話 自 伝 ~庄野哲也という男~
この世界に来てから約半年、色々な事があった。どうかこの文章を見つけた者は陸上自衛隊、習志野駐屯地に届けて欲しい。
私、庄野哲也の幼少期のあだ名は無人「むじん」であった。
いるかどうかわからないほど発言もない、誰かと関わろうともしなかった事と体力だけは並外れており無敵人間を略した2つの意味を込めてそう呼ばれていた。この時の自分は家族を1日にして失ったショックから立ち直れず何を言われても何も思わない。ある意味人間から離れていたのだと今になって痛感する。
小学校までは親戚の支援を頂けたこともあり、学費や給食費等は問題なかったが中学校に入る際にその親戚から「お前の親に金を貸していたのを忘れていた。」と言われ家や土地全てを勝手に売られた所まではうっすらと覚えている。
それからは親戚の家で住み込みで深夜まで仕事をさせられた。学校ではボロボロの制服を着て登校していたため生徒からだけでなく先生からも半ば虐めのような行為をされた。そんな生活を誰も問題視はしなかった。自分自身も「お前は不幸な人間だからしょうがない」と言われて育ったため何も疑問を持たなかった。
高校を決めるときに親戚の経営が急激に右肩下がりになった。「庄野の所の財産がもう無くなる」という声が聞こえこの人間と関わる必要は無いと判断した。「ここの経営が戻るように頑張る、仕事をくれ。金は俺が増やすから担保をくれ」と嘘をついたら簡単に残った金を俺にくれた。
俺は貰った金は全て少年工科学校(現在の高等工科学校)に入るために使った。あいつらが今何をしているかは知らないが時効になる前に俺の家族が俺に残してくれた物を奪ったツケは払わせた事は良いことである。
高校生活は新鮮だった。体力面、精神面で辛いことはたくさんあったが同じ生活をした同期とは仲が良く卒業後も年末は会ったりした。
俺は高校卒業後、防衛大学へ入学した。
大学生活は一言に楽しかった。高校生活の延長のような部分が多く新しい面は少なかったが高校3年間を勉強に費やしている同期は本当に頭がよく羨ましくもあった。そんな彼らと切磋琢磨する日々は充実した日々だった。あの頃の同期とはほぼ全員会えていない。・・・たった1人を覗いて。
防衛大学を卒業、幹部候補生学校を卒業した後は第一空挺団へ配属となった。大学からの腐れ縁、杉村という男と共に。
ここで杉村について軽く記載する。彼はよく笑い俺に何度も絡んでくるウザったい男だ。話しかけるときは必ずと言って良いほど「はっはぁ!」と肩をバシバシ叩きながら話しかけてくる。
部隊では多忙だったが仲間との仕事はそれはそれでやりがいもあった。よく酒を飲みに行く機械が多かったが杉村からしつこく誘われて何度も行くうちに少しずつ楽しくなっていた。そんな時間が何年も続いて欲しいと思っていた。
数年後、俺は元の生活に帰れなくなった。火を吐くトカゲを食べながら森をさ迷い、とてつもなく大きい城に招かれかなり頭の悪そうな王様に「君はサリアンの規則に乗っ取って説明すると、使い物にならないんだよ」と言われた。立場、階級がなければぶん殴る所であった。
帰り際、門番からも罵られるが急に目の色を変えて少し前までの態度を覆してきた。人を外見のみで蔑んだくせに良いものを持ってるとわかった途端に手のひらを返すのは許せなかったので厳しく指導した。
その後、使い魔と呼ばれる動物3匹とお姫様の騎士になるよう言われた。この辺りから「日本人」から「異界人」と呼称名が変わっていった。
この世界の基準がずれているのか分からないがいきなり闘技場で戦えとアルフというおじさんに頼まれることになった。ドラゴンはとてつもなく強い力を持っている使い魔だろうが使い手は人の命を軽視した悪人であったため投げ飛ばして厳しく指導した。
それからの生活は・・・
(よし、今日はここまでにするか。)
「ななよん、きゅうまる、ひとまる。寝るか。」
「キュッ!」「キュッッ!!」「キュッ!」




