第26話 反 省 ~庄野、外禁だってさ~
「反省を実施する」
この単語を耳にして嫌な思い出を思い返すのは昭和に入隊した自衛官、若しくは過去の風習を踏襲し現代に残っている悪しきもあり善き文化が残っている学校教育等であろう。
何をするか、というのはここであえて省略するが。
その中の罰則として悲しいものの1つに『外出禁止』がある。
「・・・てつや様。私との約束、覚えてますか?」
「はい、無茶しないことです。ですが、俺からの約束では」
「てつや様?わ・た・し!との約束ですが。」
「・・・はい(・・・このパターンはヤバいやつだ)。」
庄野が目を覚めて約1ヶ月、無事に回復しベッドから降りて歩いたり自分で生活をする分には十分動けるようになった。
左手の一部の指を除いては。
「てつや様は今回の件、反省してますか?」
「してます。」
「2度と、同じような事はしないでください。」
「・・・努力します。」
「努力じゃどうにもならないです!全然反省してないじゃないですか!許しません!てつや様は私が良いっていうまで屋敷から出ちゃいけません!左手の指がちゃんと治るまでは・・・ダメです!」
「な!それは・・・お願いします!せめて西の都の中・・・姫様。その・・・。」
「・・・ひっく。・・・また、無茶して・・・起きなかったら・・・また、てつや様が・・・ぐすっ・・・うぅっ・・・起きるの・・・待つの?また・・・同じ、思いしなくちゃいけないの?嫌だよ・・・。ちゃんと・・・ぐすっ、怪我・・・治し・・・て・・・お願い・・・。」
「姫様・・・ごめんなさい。」
(・・・何回、泣かせてるんだ、俺は。サクラ姫を悲しませないようにって誓ったのに。)
庄野は左手が完治するまでの間、外出禁止(外禁)となった。
(簡単な物を運ぶ作業なら出来るが重いものは持てない、左手で掴むことが出来ない。コピードールの魔力が満たされている時は治癒で少しずつ治していく。・・・そして。)
庄野が抱えている問題は2つ、自身の左手が元通りに動くかどうか。そして、今後についてである。
(ヌークが最後に残した言葉・・・自害したとは思えない。もし、サリアン王がすんなり失脚したとして・・・、まぁいい。先の事を気にしすぎてもしょうがない。リハビリで左手を使う訓練をするか・・・そうだ。)
「アルフさん、聞きたいことが。」
「ほっ。元気そうだね。あんまり姫様を泣かせちゃダメだからね。・・・あの子が泣き虫っていうのもあるけどね。で?なんだね?」
「紙が欲しいです。」
「紙?それだけで良いかね?書くものとかはいらないかね?」
「紙だけです。もう使わないくらい古いものとか、捨てる予定のものが良いです。」
「変わったものを欲しがるね。ええと、確かここに、ほら。失敗したり汚した紙はそこにあるね。」
「ありがとうございます。」
「せっかくだから何に使うか見せてもらおうかね?」
(せっかくだから広いところでやるかな。・・・俺が小さい頃、親はすぐに亡くなって遊び道具なんて無かった。学校の皆が使わなくなった紙を集めては折り紙にして遊んでたな。)
庄野は広間に移動し折り紙を始める。左指が上手く動かないので折る速度は遅いが片手で作ったとは思えないほど完成度は高い。
「出来ました。紙飛行機です。」
「ほぅ。これは・・・鳥にも見えないし・・・何だね?」
「飛行機という俺の世界にあった空を飛べる乗り物です。理屈は小難しいですが、こうやって飛ぶんですよ。」
「ほぉー。あんなに遠くまで行くのかね。どうやって作るんだね?」
「じゃあ、一緒にやりましょうか。ここをこうやって折って、そうです。なるべく左右を均等にしないと真っ直ぐ飛ばないので。」
「こんな感じかね。じゃあ、それ!・・・うーむ。飛びはしたけど全然だね。結構難しいね。」
残された紙を折って様々な作品を披露する。庄野の表情は楽しそうに見えはしたが何かを思い出し僅かに悲しそうでもあった。
「あとは、こんなのも作れるんですよ。」
「庄野さん、思った以上に器用だね。紙折るのには指を使う練習になるね。早く治るといいね。」
「ありがとうございます。」
「姫様も本気で心配してるからね。あんたが眠っている間、ずーっと泣いてたからね。いつ起きるのか、このまま目を覚まさなかったらって毎日泣いて、魔力が切れても治癒を使おうとしたりしてね、大変だったからね。・・・ちゃんとお礼は言っといた方が良いね。」
「・・・はい。アルフさんもありがとうございます。」
「ワシはむしろ姫様を守ってくれたあんたに感謝したいね。魔力切れを起こすなんて、鈍ってるね。お礼じゃないけど庄野さんがやる気あるなら大分前に言ってた修行、手伝ってあげるからね。まずはちゃんと治してね。」
(アルフさんと修行か・・・。魔法使い相手にどういう攻撃が有効かを学べる良い機会になる。その時は・・・。あぁ、その前に・・・姫様にちゃんとお礼を言おう。)
庄野はサクラの部屋の前で深呼吸をする。
(外禁にされて以来まともに会話をしていない。緊張というか、罪悪感が強い。・・・まずは謝ろう。)
コンコン。
「サクラ姫、庄野です。入ります。」
「・・・どうぞ。あいてます。」
「失礼します。」
「どうしましたか?」
「・・・その。謝罪と感謝を述べに参りました。」
「はい。」
「あの・・・眠っている間、ずっと治療をして下さっていたと伺いました。そんな事も知らず怪我をちゃんと治そうとしませんでした。すみませんでした。」
「・・・。」
「それと・・・俺の命を救って頂けたことは本当に感謝してます。ありがとうございます。もし、よかったら姫様に何かお礼がしたいです。」
「お礼、ですか。では・・・。」
ギュッ。
「へ・・・?・・・あの。」
「てつや様はいつも私を助けてくれました。闘技場で私との結婚が景品にされた時も・・・ガラ王に酷い事を言われたときも・・・ヌークさんからも。お礼を言うのは私の方です。」
「あ・・・はい。えっと・・・。」
「でも、その度に、私のために戦って傷ついてるてつや様を見るのは辛いです。治癒で癒せるのは形あるものだけです。心の傷は癒せません。だから、今日はてつや様が私の心をを癒してください。しばらくこのままで・・・。・・・てつや様?」
(抱きつかれると落ち着く。こうやって女性に抱きしめて貰えるのは子供の頃以来か。よく母親に甘えてた記憶がうっすらとある。でも、あの日から、ずっと1人だった。仲間や友人はいた、でも家に帰っても家族はいなかった・・・。この世界に来てから仲間も友人もいない・・・1人で・・・こんなに、優しく・・・されて・・・何で・・・。何で俺の・・・は・・・。)
「・・・。」
「・・・泣いてるんですか?」
「え?あ・・・。あぁ・・・。」
「大丈夫ですよ。私が側にいますから。」
「・・・ごめんなさい。俺・・・ごめんなさい。」
「1人で頑張りすぎです。これからは私やアルフを頼ってください。てつや様はもう西の都の一員なんですから。」




