表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
尚、士気については旺盛であります!  作者: 固太 陽
第一章
20/124

第19話 約 束 ~姫と自衛官~

「どうしてなの?」というサクラの問いに、庄野は口をつむいだ。


(何故、姫様を侮辱されたことがあんなに頭にきたのか。何故、こんなにボロボロになる事が分かっていたのに、無謀な戦いを挑んだのか。戦術的妥当性から考えれば、負ける事は確実、絶対に選ばない行動だ。

 それなのに、俺は……理屈よりも自分の感情を優先した。

 前にも()()()()()行動を起こした事があった。闘技場でサクラ姫が景品にされて、ドラゴン使いを止めることになった時だ。何も考えずに小銃で射殺するだけで済むのに、俺は銃も防弾チョッキも置いて素手で対処し、トドメも刺さなかった。どうしてそんなことをしたのか……答えは分かってる。

 きっかけは、何だったんだろうか。急に異世界に送られて不安で仕方なかった俺に、優しい言葉をかけてくれたからだろうか? それとも、初めて会った時に、一緒に頑張ろうと手を差し伸べてくれたからだろうか? 騎士としての役職を与えてくれて、俺を認めてくれたからだろうか? 泣いてる姿を見て、泣かせたくないと本気で思ったからだろうか。 

 きっかけは分からない。でも……。)


「俺が、サクラ姫の騎士だからですよ」

「……それだけ、なんですか?」


 当たり障りのない庄野の返答に、サクラは悲しそうな顔を見せる。庄野は心苦しさから、本心をさらけ出そうとするのをグッと堪えた。


(今ここで『好きだから』と一言、その5文字を言うだけで、どれだけ心が軽くなるだろうか。……でも、それを言うことは出来ない。

 異界から来た男が、国のお姫様に好意を寄せて、その想いを伝えてしまう。アニメや漫画ならよくある話だが、そんな事はできない。想いを伝えて、俺が困るだけなら良い。でも、困るのサクラ姫様だ。サクラ姫を困らせるようなことはしたくない。)


「……」

「てつや様?」


「中途半端な返答になってしまってすいません。……俺にとって、姫様はとても大切な存在なんです。だから、姫様がガラ王に侮辱された事に腹が立って、あんなことをしました。俺のワガママです、すいません」

「……わかりました。じゃあ、私もワガママを言って良いですか?」


「どうぞ」

「私は、てつや様には別の国に言って欲しくありません!……私も、てつや様の事が大切な存在なんです。だから、魔石事件を解決しても……西の都で、私の騎士としていてください」


「はい」

「あ……えっと……だから、我々で今回の事件を解決しましょう。でも……さっきのガラ王と戦う時みたいな無茶はしないでください。てつや様があんなにボロボロになるのを見るのは……辛いです」


「ワガママが二つになっちゃいましたね」

「あ……ごめんなさい」


「では、俺からもう一つ、良いですか?」

「私が聞ける範囲なら、良いですよ」


 庄野はスッと立ち上がると、サクラの目の前で片膝を曲げて跪き、サクラの手を優しく掴んだ。


「俺は弱いです。力も無いし、魔法も使えません。だから……姫様を守るときだけは、無茶をさせてください。おねがいします」

「……そんなの、ズルいです。無効です」

  

 庄野は「すいません」と笑いながら平謝りし、二人は夜通し話をした。庄野は元の世界と自衛隊について、サクラは魔法について、それぞれ説明をしていった。


「『治癒』の魔法と『治療』の魔法は同じ回復魔法でも、少し違います。

治癒は、その人の体内にある魔力の素を操作して、怪我をした人の回復力を強制的に向上させて、元の状態に戻す魔法です。治療は、自らの魔力を使って元の状態に戻す魔法です。

 私が使うのは『治癒』の魔法、だから、てつや様のように魔力を持っていない人にはほとんど効果がありません。今のように、痛みを和らげるくらいしか出来ません。だから、身体はボロボロのままです。この事は忘れないでください」

「はい。気を付けます」


ーーー翌朝。ガラ王は再び庄野を呼び出した。場所は昨日殴り合いをした荒野だった。


「来タか。構える必要はナイ。話ヲするダけダ」

「……」


「庄野哲也。おまえは今回の事件を本気デ解決するツモりなのカ?いくらオニトンボを倒セタトはいえ、魔法も使えない異界人がデきる事は無いゾ?」

「……確かに、俺に魔法は使えません。使い魔もまだ魔法を使える域に達していません。でも、何も出来ないかどうかはまだ決まった訳じゃないです。諦めるのは、全部やりきってからでも遅くはないと思います」


「フンッ……ダが、忘れるナよ?コの世界デは力が全テダ。志ダけデは何モ救えないトいう事を」

「肝に銘じます」


「……我が国の民が犯人ト思われる男を見タ。指に乗る大きさのオニトンボをサリアン城の前から放ッタらしい。何かを食べさせテいタ、ト報告を受けタ。後は自分デ調べるんダナ」

「ありがとうございました」


「次はソーラに行くんダろう?……あの女は曲者ダ。気を付けロよ」

「忠告感謝します」


 三人は荷物をまとめると、ソーラに向け出発した。

 

「庄野さん、怪我は良いのかね?半日しか経ってないし、一旦帰って庄野さんは留守番しててもいいね」

「大丈夫です。無理はしないようにします」

「てつや様、もし何かあれば肩を貸しますから」


 痛みは無いが怪我は全く治っておらず、少し動きの硬い庄野にサクラが手を差し伸べる。

 その様子を見て、アルフはニヤニヤと笑って見ている。


「……ふーん、仲が良いね。何かあったのかね?」

「いや……何も、ありませんよ」

「うん、私も……心配なだけで……」


 しどろもどろに返答する二人に「ふーん、ま、 いいけどね」と不満そうに答えるが、ニヤニヤとした表情は変わらなかった。


(ここがソーラか。耳や羽の生えた人間、エラのある魚人、色んな人種が普通に住んでいる。サリアンもこれくらい寛容な制度でいれば良いのにな……)

「さて、早速城に行くかね……ワシ、あの嬢ちゃん苦手だね。」

「アハハ……小さい頃はよくサリアンに遊びに来て、アルフにイタズラばっかりしてたよね」


「そうねぇ……そんな子でも、今はソーラの女王だからね」

「うん。私よりも年下なのに、凄いよね」


 アルフとサクラの会話を聞きながら、庄野は今まで聞いた内容を思い出していた。


(現ソーラの王、カエデ女王。詳しい話は不明だが、先日、前女王が病気となり、王としての執務が出来なくなったため、姫であるカエデが女王として任命された……という経緯で女王となったらしい。

 カエデ女王を始め、ソーラ人は相手の魔法の制御を奪ったり、魔法を無効化するような相手を封殺する魔法を得意とする国だそうだ。今は武器開発をすすめているらしいが、何が目的なのか……まぁ、だいたい検討はつくが……。

 そういえば、サクラ姫ってアルフさんと話すときはため口なんだよな。俺にもフランクに話してくれないかな……なんてな。

 ……さて、着いたな。)


 三人は広い部屋へと案内される。部屋の中央には小さめのテーブルと椅子が用意されており、椅子に座って待つように言われる。


「さて、カエデ女王はすんなり情報をくれるかね?」

「わからない。とんでもないことを言わないきゃいいけど……」

(情報との条件は『庄野哲也と交換』だろう。情報を渡すって事は魔石事件解決の一番乗りを諦める事と同じだ。で、あれば……欲しいものだけを貰うだけ。俺がソーラの人間だったら、間違いなく吹っ掛ける。)


 数分待つと、ノックもせずにカエデが部屋に入り、カエデの身長にピッタリのこじんまりとした椅子にドカッと座り、話を始めた。


「わざわざ来てくれたのに、遅れてごめんなさい。まだ女王になったばかりで、色々と大変なのよ。で、魔石事件解決のための情報が欲しいって話でしょ?じゃあ、交換で庄野様をちょうだい☆?」

(……庄野様って呼ばれる事は置いといて……交渉はそうなるだろうな。使者を送って了承を貰えた時点でこうなる事は想定済みだ。後は、どこまで譲歩してもらえるか、だ。)

「それはッ……どうして、そうなるんですか?」


 眉にシワを寄せ、サクラの表情が固くなる。カエデはさらに追い打ちをかけるように言葉を並べていく。


「あのね、情報っていうのはとても価値があるものなの。魚人達は海の魔物を退けながら海の中へ、鳥人達は突風に巻かれながら空を飛んで、ソーラに住む者みんなが命をかけて集めたものなのよ。それをタダでくれなんて、虫が良すぎない?それと同等の価値のあるものを西の都が用意できるなら良いけど、何かあるの?」

「そ、それは……」


「あら、何もないの?じゃあ、情報は渡せないわ。情報を貰うなら、代わりに庄野様を貰うのは当然だと思うけど?」

「……話は分かります。でも、てつや様は渡せません!」


「あっそう。そこまで言い切るんだ……あーあ、あの時強引に連れていけば良かったなー」

「あの時?」


(……嫌な予感がする。)

 庄野はゴクリと固唾を呑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ