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尚、士気については旺盛であります!  作者: 固太 陽
第一章
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第97話 復 讐 〜火の用心〜

 復讐は気持ちが良いものだ。『やられたから、やり返す』というそれだけの理由で、正義を執行出来るからだ。

 復讐はエリクサーだ。すべてのモヤモヤとしていた感情をゼロにすることが出来る。薬物のように依存することなく、一回で全回復することができて、最高な気分になれる。

 復讐は優劣を平等にする行為だ。子供の頃、『○○ちゃんも謝ってるんだから、許してあげようね?』と言われたことがあるだろうか。子供ながらに『何故、大人の事情で復讐の機会を奪われなければならないのか』と思うだろう。普通に考えて許すわけが無い。やられたらやり返さなければ気が済まない。やられた側は不平等を感じ、やった側は優位性を残して終わる。()()()しかない。だからこそ、やられた側はやり返さなければ終わらないのだ。


 例え、有能で優秀な自衛官であっても、一人の人間である。酷いことをされれば心は傷つく。庄野哲也も同じである。この世界でこの国のために戦い、国のために手足を失った人間が国から追放され、例え呪いのせいだとしても、暴言を吐かれ、酷い仕打ちを受けた。当然思うだろう。『なぜこんな思いをしなければならないのか』、と。

 現実の話で、そういった自衛官の在り方について『自衛官なんだから何言われても我慢しろ』と言う人間がいる。そういった事を言う人間に文句を言っても『俺は自衛官じゃないから』と逃げるような意見を言い返してくる。組織からはそれに対して『民間人に言い返すな』と厳しく指導を受ける。

 


 自衛官は常に復讐の機会を奪われている。

 


 そのしがらみを、今日、庄野哲也は破ろうとしている。自衛官である庄野哲也は初めて『自衛官』という職業を捨て、人間に復讐を決行しようとしていた。






(まずはコピードール達の回収を実施する。俺はソーラに入れないから、どうにかしてコピードールが外に出るようにしなければならない。

これだけの施設を短期間で造ったのなら、外壁の構築もコピードールが関与したことが考えられる。外壁を破壊すれば多少問題が生じるかもしれないが・・・それでどうにかするしかないだろう。)


 庄野は森の中で沢山の草木を集めていた。


(人を呼ぶには火災が一番だ。魔法で鎮火は出来ても、燃えた壁の修復は簡単じゃない。ぱっと見たところ、外壁は鉄製だろう。燃やして少しでも溶解すれば良いんだが・・・。

日はまだ高い。やるなら昼過ぎまでには実行をしよう。)


 火災とは、日中に発生しても気が付かないことが多い。明るく天気が良くて風が少ない場合、じわじわと小さい火のまま燃えていき、夜になって燃えた炎の明るさと大きさに初めて気が付き、鎮火した頃には全焼しているというケースがよくある。庄野はそれを意図している。

 

(外壁に近づくだけなら、門から入ろうとした時みたいに吹っ飛ばされることは無いみたいだ。


よし、外壁の側に大量の枯草と木の枝を敷いた。あとは火をつけるだけなんだが・・・。

近づいて見ると、壁の構造がお粗末すぎる。高さが20m位の同じ大きさの鉄板を地面に刺してるだけで、隣の外壁と全く引っ付いてない。こんな壁なら、ちょっとした爆風で全部吹き飛ばされるぞ。

コピードールに鉄板だけ大量に作らせて、知識が無い連中で適当に組んだだけなんだろうが・・・これなら、土嚢に土入れて壁造ったほうがまだ強度があるだろう。


俺はもう自衛官じゃない、魔物だ。ソーラの人間(こいつら)がどうなろうが、俺の知ったこっちゃない。知識が無くて勝手に壁に潰されて死ぬのはこいつら自身だ。俺じゃない。

さて、そろそろやるか。)



 庄野は火をつけ、その場から離れ、森の中から様子をうかがっていた。小さな火は少しずつ大きくなるが、人目につくほど大きくはならない。そうならないように庄野は草木の量を調整しているのだ。

 時間が経ち、あっという間に日は落ち、夜になった。夜になってもソーラの人間は全く気が付かないので、庄野は火種を追加し、さらに火を大きくした。

 しかし、ソーラが外壁を燃やされていることに気がついたのは翌朝の事だった。『元々商人でやってきた国だ。夜襲対策の知識もないだろう』と、庄野は大きめの木々も投入し、壁の下部分は容赦なく燃え盛っていた。


「早く消火しろ!」


 一人のソーラ人が叫ぶ。カァン、カァンと警鐘が鳴り、杖を持った魔導士と思われるソーラ人が十数人も集まり、火に向かって同時に大量の水魔法をが放たれる。水が火に被さるように発射されると、バキィンと大きな音がした。しかし、魔導士はその音を気にもせずに水を発射し続ける。


(・・・バカが。大人数でやりすぎだ。)

 

 時間と共に、火はどんどん消えていく。今にもその火が消えようとしているその時、再びバキィンと大きな音がした。外壁はくの字に折れ、地面を激しく叩き、地響きが唸り声をあげる。


「浮遊魔法でどかせ!」 「まずは明かりだ!光魔法を!」

(混乱した状態で指示を二つ以上出してどうする。)


「見えなくても浮かせられるだろ!」

「私が光を・・・ひっ・・・わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

(結果的に一人が行動したが・・・混乱した状態での作業は危険だぞ?)



「おいっ!明かりを消すな!」

「見えないけど、浮かしていいのか?浮かすぞ!」

(同じ空間にいるのに別次元で作業しているみたいだな。)



「待て!まだ上げるな!」

「何?じゃあ、下すぞ?」

(・・・ひどいな。安全管理は良いのか?)



「がっ!」「ぎゃ・・・。」

「おい・・・どうした!?」

(人が潰れた時の独特の破裂音と骨が折れる音。最悪だな。)



「医者を!回復魔法を使える奴を呼べ!」

「今から何も浮かすな!目を瞑ったまま光を出せ!」

(俺が殺したわけじゃない。結果として、自分たちの行いで死んだんだ。助ける義理もない。)


 光がその惨劇を暗闇から映し出す。数人が外壁の下敷きになり、その端からは手足が少しだけ見えている。その光景がさらなる混乱状態へと誘う。


(魔法で便利な生活に浸ってたんだ、個人プレーヤーしかいないのは当然の話だ。アパッチと戦う時、サリアンの対応は酷かった。だが、ソーラの火災への対応はそれ以上に酷い。こんな奴らにコピードールを貸していたのか。宝の持ち腐れだな。)



「連れてきたぞぉ!」

(医者が来たか。俺が世話になった先生だったら気が引けるな・・・。)


 やってきたのは、庄野の知らない一人の屈強な男だった。手には大きな手提げのようなものを持っており、それは白い布で覆われている。


(・・・医者には見えんな。筋肉ですべてを解決できそうなタイプだが・・・。)


「待たせた!ヘヘヘ・・・。」


 ニタニタと笑いながら、屈強な男は白い布を取る。布がかかっていたのは手提げではなく、動物を入れて運ぶ小さな檻だった。中には三匹の茶色の動物が詰められている。


(コピードール?!あんな狭い檻に・・・。)

「さぁ、出ろ!『治癒』を使え、ほら!」

「キュウ・・・。」


 まるでバケツに入れた水を人にぶっかけるような勢いでコピードール達は外に放り出され、足蹴にされた。2匹は衰弱しており、魔法を使える状態には見えない。やや体格の大きいコピードールだけが魔法を使おうとしている。



(ソーラ人はサリアン人(バカども)と違って話が出来ると思っていたが・・・所詮、この世界のゴミ屑だったか。回収は穏便に行こうと思ったんだがな・・・()()()・・・。)


 庄野は隠れていた茂みから出てきて、叫んだ。



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