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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

赤い木。

作者: 火日野



「ああ、またやってしまった。」


一人の男はそう呟いた。


彼は考える。


何故、自分は同じ過ちを何度も繰り返すのだろうかと。

それはきっと周りには絶対に理解されないであろうことで……ようするに彼、飯田(いいだ)はおかしいのだ。


昔から飯田(いいだ)は人を一度も信用した事などなかった。これからもないと思っていたのだ。人など何を考えているか分からないからと。


それなのに恋をした。いや、してしまったのだ。


美しい女。それが彼女への第一印象。


どこをとっても欠点一つない女だった。


ようやく人を好きになれるかもと期待した。


そして、彼女を目で追ううちにどんどん惹かれていってしまったのだ。


「好きだ。付き合ってくれないか。」


必死で彼女にアプローチして、ついに告白をした。


付き合える事になったのだ。


……そのはずだったのだが、ふと暗い気持ちが頭を過ぎる。


不安になったのだ。


……彼女は本当に俺の事が好きなのだろうかと。


幸せな毎日を送っていた。これ以上にないくらいに。


「だ……大丈夫だろ。彼女はきっと俺の事が好きだ。」


必死で自分に言い聞かせるように呟く。


しかし、そのことに気付いた途端に真っ黒なドロドロとしたナニカが俺の頭を埋めつくしていく。


……信用できるか?



……。



即答できなかった。


分からなくなってしまっていたのだ。


周りからみたら俺はきっとおかしいのだろう。

人を信用できないなんて致命的だ、と。

昔から思っていたさ。俺はおかしいのだと。

分かっていたんだ。


だが、しかし、今……俺はなにを考えた。


考えてはいけない事を考えてしまったのではないかと。


彼女の事で全く眠れぬ日を過ごした。



気付けば、一週間が経っていた。


休日、気分転換にと外を歩いていた。


「……なんでだよ。」


男と一緒に歩いていたんだ。彼女が。

何かの間違いであろうと、そう思った。



……彼女が俺を裏切るはずない。

そう呟くが飯田(いいだ)の目は死んでいた。


あるはずがない。彼女がそんなことするはず……あるわけない。


この時には飯田(いいだ)には正常な判断というものがとれなくなっていた。



しかし、彼女は忙しくなるからしばらく会えないと言っていた。


そう、確かに言ったのだ。


「何故、何故なんだ?」


何故、彼女は俺以外の男とこんな所にいる?。


皮肉な事に、彼女は仲のいい男友達と偶然に会い、雑談をしていただけだったのだ。

しかし、ここにはそれを教えてくれる人もいない。








……そう、そうだよ。


なんで俺は気付かなかったのかな。


俺なんかよりも断然美しい顔立ち。コミュニケーション能力も高く友達も多い。

頭ももちろん良くて、スポーツも万能。スタイルだっていい。


俺とは真逆なのだ。


そう、真逆なのだ。


……あの男、かっこいいなぁ。


俺は遊びだったって事か。


涙を流した。


改めて思えば初めて泣いたような気もする。


彼女にそっと近づいた。






……その日はボロボロとベッドの中で一日中泣いていた。


朝、目が覚めた。不思議と気分はすっきりとしていた。


首を捻る。


「……?なんだこの臭い。」 


顔を洗う。


歯を磨く。


ふと、忘れていたと体を見る。

血がべっとりと付いていたので風呂に入る。



……そうか、これのせいだったのかぁ。


体を念入りに洗う。

こびりついた血は落ちにくい。

このTシャツは捨てなきゃな。

庭に穴掘って埋めるか。


死体と一緒に。















「ママー! あの木って赤かったっけ?」


「あら、本当ね……。 赤かったかしら?」








この会話が行われた数週間後、木の下に死体が埋まっている事が分かった。









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