006 書籍化しました。
ぎりぎり14日
「何をしているのですか?」
紙の束を抱えたメイド長であるティナは、城の中で通りかかった部屋にいた銀髪の少女に問いかける。
ティナの正式な役職は『侍女長』であり、紙の束など自分で運ばずとも手足となる社畜が掃いて捨てるほどいるのだが、ティナはどれほど偉くなろうとも、主人である黄金様の身の回りの世話をするのは自分だと、いまだにメイドを自称していた。
外見は十代の半ばを越えて、彼女も(胸部装甲以外は)成長しているのだ。
「ん~~?」
そんなティナに声を掛けられたファニーは、手にある〝物質〟を弄りながら、力の抜けそうな声で振り返る。
「二月だから」
「二月ですね」
この世界では『冬終わりの月』と言われるが、そんな呼び方がどこかの世界にあったな……とティナも思い出す。
「二月はお菓子の季節」
「なるほど」
よく分からない。それでもその世界の二月には色々行事があったことを思い出して、ティナがファニーの手元を覗き込むと、よく分からない物が出来上がっていた。
「うんとね。二月は豆を撒いて鬼を皆殺しにして、その血を煮詰めた物を『千代子レート』と呼んで、それで男を呪うと一ヶ月後には数十倍になって戻ってくるんだって」
「ずいぶんと珍妙な風習もあるものですね」
ファニーが煮詰めている鍋の中では、どろどろとした赤茶色の物質が鍋から逃げ出そうともがいて、怨嗟の呻きをあげていた。
「活きが良いですね」
これを食べるのだろうか? 人間なら食べる以前に近づくだけで魂が砕けそうな呪物だったが、これも特産物になるかと主人様の友人である吸血鬼にでも送ろうかと考えながら、ティナはここで良いかと紙の束を広げてガリ版刷りの準備を始めた。
「ティナちゃんは何をしてるの?」
「主人様を讃える本を作っております」
主人様を讃えるには手段が足りない。そこでティナは自分で本を刷って数多の世界に広げようと考えた。
悪魔公女
第一部 ゆるいアクマの物語
第一章 悪魔の見る夢
講談社 Kラノベブックス刊行
「これ、ティナちゃんが書いたの?」
「ペンネームは『春の日ぴろり』とかどうでしょう?」
「それはダメじゃない?」
***
『悪魔公女 ~ゆるいアクマの物語~』が、講談社Kラノベブックス様より、書籍化&コミカライズ決定しました!
題名はシンプルに『悪魔公女』です!
第一部が『ゆるいアクマの物語』となります。
六年前の作品なので、現在の私の言い回しや流行り廃りも変わっているので、内容は変えずにすべて今の文章で書き直しました。
最新話辺りまでに決まった設定も盛り込んで加筆しておりますので、一度読んだ方でも愉しめるような『完全版』となっております。
発売日未定のため、詳しいことは秘密ですが、それほどお待たせしないと思いますので、よろしくお願いします!
最新情報はTwitterでも呟きます。





