001 知らない悪魔のいた世界
ここから物語とは全く関係のない、だらけた話になります。
この作品の基本コンセプトである『数多の物語の一登場人物として、物語を根本から破壊できる化け物が、何食わぬ顔で潜んでいる』内容にしますので、パロディも多く含みます。
色々とご容赦下さい。と言うか、ごめんなさい。
私、ユールシアはシルベルタルを倒して人の世界で女王となり、女神として崇められるようになった。
数十年後か数百年後には魔界の悪魔公たちと戦争になるけれど、今はのんびり暮らしてもいいかも。……なんて思っていたけど、女王って案外忙しい。
周辺国からひっきりなしに面会とか謁見とかあるし、大部分はノアとかローズに丸投げしてるけど、それでも顔くらい見せないと帰ってくれないし、生粋の悪魔たちに全部任せているといつの間にかその国がとんでもない状態になっていそうで怖い。
だからといって現実から目を逸らすために頻繁に実家に戻っても、あまり世間体がよろしくない。
女神として崇められていても、信者たちは毛の薄い男性か、胸の薄い女性ばかりなので、求められる要望がかなり切実というか、切羽詰まったようなギラギラした瞳で祈られるので、正直彼らの顔が怖い。
そんなわけで、せっかく神を超える力(物理)を手に入れたのだから、従者たちの眼をかいくぐってこっそりとお出掛けすることでストレスを発散することにしました。
***
色々な属性を得たけれど、私の基本は、数多の次元にある数多の世界を旅して、騒ぎを起こす愉快犯……じゃなくて魂を集める【魔神】である。
まぁ、高位の存在なんて九割は愉快犯的な連中なんで、適当にいいリアクションをしてあげれば満足して帰っていくので、機会があったらお試しあれ。
そんな感じで、私がくじ引きを引くような感覚で適当な次元に飛び出すと、とある方角から“悪魔”の気配を感じた。
でも、ちょっと違う? 私たち精神生命体である悪魔とは何か違う。(曖昧)
私や従者たちは三次元での身体を持っているけど、基本は精神体で、寄生というか、三次元の物質を核にして“依り代”としている。
でも、その方角から感じた“悪魔”の気配は、もっと物質界寄りというか、生物的な種族というか、存在的には私のような悪魔に近いんだけど、もっとなんか……そうそう、『生々しい』感じがしたのです。
そこで私はその存在を『生もの悪魔』と仮称し、その興味を持った存在が何なのか確かめるために、その『異世界』にお邪魔することにしました。
降り立ったその世界は、地球にある“日本”に酷似した世界だった。
……っていうか地球? いやいや、ちょっと違うか。何となく“空気”が違うし、どことなく昭和臭がする。
テレビも電話もあるけど携帯できる情報端末はない時代だ。
そんな場所で、十代半ばのパツキンゴスロリ少女なんて歩いていたら、目立つこと請け合いである。なので私は、こんなこともあろうかと社員たちに作らせていた、風邪用のマスクとサングラスで誤魔化すことにした。
……我ながら怪しさが爆発している。でも私が素顔を晒すと気の弱い人は魂が抜けかけるので、無いよりマシだった。
例の『生もの悪魔』の気配は一体ではない。というか、これ何万体いるんだよ。大部分は人の振りをしているらしいけど、悪魔の性である残酷性が出てしまっているので、微妙に隠れてない。
もしウチの社員が同じことしたら、三年間は乾燥ワカメに混じった極小の海老と蟹をピンセットで取り除く部署に回すところだ。
そんな極小海老蟹も纏めて袋詰めにすると結構良い値段で売れるとかそんなことはともかく、私はこの世界で奇妙な存在感を持つ二人の少年を見つけた。
何となく目を惹かれる二人組。物語なら主人公とその相棒というところだろうか。
気弱そうな高校生くらいの少年と、危なそうな目付きの美少年。
美少年のほうはトレンチコートの下に猟銃とか持って、普通に自動車を運転しているのでやっぱり知っている日本とは違うのかもしれない。
二人が車で移動したので、私もストーキングを開始する。徒歩で。
悪魔も健康第一である。朝一番で採れる新鮮な魂と上質なワカメで作られた私の身体は、自動車に徒歩でついていくことなんて訳はない。
だが、少年二人は不健康にもクラブ的な場所に入っていった。部活のクラブじゃなくて、若い大人たちがお酒を飲んで踊りまくるアレである。
これはいけない。真面目そうな気弱少年にはまだ早い。なのでその建物ごと私の気合い一発で“無かった”ことにしてしまおうかとソワソワしていると、美少年のほうが暴れはじめて周囲の人に袋だたきにされていた。
なんでも『悪魔を呼び出すために理性を失う』必要があるらしい。
……高校生にもなって厨二病かしら?
仕方ないので私もこっそり混ざって、袋だたきされている美少年のほうを踵で踏んでおいた。
気がつくと気弱少年が“悪魔”になって周りを皆コロコロしていた。
おお、カッコイイ。正統派悪魔って感じのデザインは正直憧れる。次に私が悪魔を育成するときは真似しよう。
気弱少年が人型に戻って厨二美少年を探し始めたので、私も慌てて隠れると、気弱少年はボロボロになった厨二美少年を抱きかかえて、俺を残して逝くな、的なことを言って泣いていた。
あ、ごめん……踏みすぎたみたい。
どうやら二人の目的は、隠れている悪魔たちに対抗するため、人の自我を残したまま悪魔化して人類を守ることらしい。
なんて立派な理由なんだろう……。行き当たりばったりで悪魔になって、今も適当に刈った野良殺人鬼の魂を拾い食いしている自分が少し恥ずかしくなる。でも手は止まらない。だって食欲は別だもん。摘まみ食いする魂、ウマー。
でも自我は残せたみたいだけど、気弱少年は暴力性が強くなったせいか、原色真っ黄色に赤文字で“A”と書かれた派手なTシャツを着るようになった。
そんな気弱少年を、悪魔化に失敗した厨二美少年が惚れ惚れとした危ない目付きで見つめる。ヤバい。
とりあえず私は、気弱少年のほうを『A少年』と仮称することにした。
数日後、ちょっと目を離した隙にA少年がピンチになっていた。
私も毎日、彼らをストーキングしているわけじゃない。神社に居座って色々と身体の一部が“薄い”人達に救いを与えて、おせんべいやお団子などの“供物”をもらう大事なお仕事をしていたのです。
抱えきれないほどの温泉饅頭を抱えて現場に到着すると、A少年は頭から翼を生やした、エッチぽいお姉さん悪魔と戦っていた。
うん、エロい。健全な一途なA少年ではまともに戦えまい。いざとなったら手を貸してあげようと、右手にちょっと強めに魔力を込める。……ちょっと込めすぎて山が消し飛ぶかもしれないけど、根拠はないがたぶん大丈夫。たぶん。
この魔力を撃って本当に大丈夫かどうかドキドキしている間に、A少年の勝利で終わっていた。良かった。辛勝でも勝ちは勝ちである。
千切れたA少年の腕を厨二倒錯美少年が拾ってくっつけていた。気絶したA少年を見つめる厨二倒錯美少年の目付きがヤバい。
……このままいけないシーンが見られるのだろうか? 私にその手の趣味はないけど映像化したら貴族子女に高値で売れるかもしれない。
……ち、何もなかった。
どうやらあちこちで隠れていた悪魔が暴れはじめて、人間たちの間で“魔女狩り”ならぬ“悪魔狩り”が流行っているらしい。
度胸あるなぁ~。本物の悪魔だったらどうするんだろ?
でも、人の自我を残した悪魔だと戦ったり人を殺したり出来ないそうだ。……あ、あれ? 私も人の自我を残しているけど普通に笑いながらヤってた気がする……。
そ、そんなことはどうでもいいのです。問題はこっちの世界のことなのです。
どうやらA少年はそんな自我を残した人たちを集めて、軍団を作って悪魔たちと対抗するみたい。
それから少し経って、A少年の周りで不幸はあったけど、私は元気です。
二種類の悪魔たちが世界を二つに分けて戦っていた。
なんと驚くことに、あのヤバい厨二倒錯美少年が悪魔の親玉だったことが判明した。
なんとヤバい厨二倒錯美少年は、神に見捨てられた『生もの悪魔』を救うために色々やってたらしい。
……ホント、神さまって自分勝手だな。
私も世界中の核兵器を潰して回っていたのであまり見ていなかったけど、まともな人類はもうほとんど残っていないようだ。
……もしかして私が人類の戦力を削いじゃったとか?
でも、核なんて使われたら近海で魚介類が獲れなくなるじゃないですか。
私の召喚する魚介類は、あらゆる世界のあらゆる時代の海から召喚されるので、汚染されたモノは商品にならないから困るんですよ。(切実)
しばらくして、私が南海の孤島で魚の餌として乾燥ワカメを撒いて時間を潰していたら、どうやら悪魔たちの戦いは終わったみたい。
……どっちもほとんど全滅してるじゃねーか。
なんか、羽根つきヤバい厨二倒錯美少年が、上半身だけのA少年に色々話しかけている。それを遠くからタコスルメを囓りながら見つめる私。
するとお空の上から、キラキラ光る神さまみたいな連中が降りてきた。
はぁ~……いるところにはいるんだねぇ。本物っぽい神さま。
あ、ヤバ。適当にしてたら端のほうにいた神さまに見つかった。
仕方ないので、魔界最速の私は瞬時に動いて、その神さまの背後に回り、チョークスリーパーを決めながら首をへし折る。今の私にかかれば、実体があろうと無かろうと、“折る”と決めたらタコの骨でも折ってみせる自信があるのです。
でも、そのせいで神さまの隊列に穴が空いてしまった。これはマズい。
神さまたちもせっかく格好良く降臨したのに、これじゃ格好がつかなくて、やらかしてしまった重責から私の気も重くなる。
なので、私がその首を折った神さまの代わりに、その位置について光っておいた。
ふぅ~~……なんとか誤魔化せた。
この世界の人類はほとんど消えてしまった。
あの場から気まずくなって逃げたわけじゃないけど、……気まずくなって逃げたわけじゃないけどっ、一人海岸線に立ちこの世界の行く先を真面目な顔で考える。
一応、精霊王の力を使って、死んだ魂はちょっと摘まみ食いした後で世界に循環させている。けれど、種として人類がいなければ人は産まれない。
だけど、そんなことを考えていた私を励ますように、海から幾つもの人影が現れたのです。
ウボー……
なんとそれは、私が海に撒いていた乾燥ワカメたちでした。
世界を再生させたシルベルタルもこんな気持ちだったのでしょうか……
循環させた魂と結びつき、新しい人類となったワカメたちは、『この世界のことは俺達に任せろ』と自らを鼓舞するように胸を叩き、海に帰っていきました。
それを見て私は安心して自分の世界であるアトラに帰ることにしたのです。
……けして気まずくなって逃げたわけじゃありません。
***
「……主様、今までどちらに?」
「ちょっと異世界まで、世界を再生しに……」
書類を抱えてにこやかに私を威圧する、ノアとギアスの執事二人に、私は静かに目を逸らした。
どこの物語でしょうね・・(目を逸らす)
次回はまた不定期で。





