表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔公女Ⅱ ~ゆるふわアクマ旅情~【書籍化&コミカライズ】  作者: 春の日びより
第三部 第四章・【奈落編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

157/193

4-01 奈落―アビス

お待たせして申し訳ございません。再開します。


挿絵(By みてみん)


画が適当……



「………【奈落(アビス)】……?」


 その言葉が口から零れて、私は世界の果てまで続くような黒霧の世界に目を向ける。

 聖王国に裏からちょっかいを掛けて、内乱を引き起こしたシルベール教国。異世界から帰還した私は教国の悪巧みを挫き、人間と精霊と悪魔のキマイラという世界の理を崩すモノと戦闘し、私の内にいつの間にか寄生していた【真の魔王】に悩まされながらも教国の影響を聖王国から駆逐した。

 駆逐はしたけど教国をそのままにしておけない。キマイラを放置すれば世界のバランスが崩れて面倒なことになるし、それに【真の魔王】が反応すると世界もろとも私が消滅しかねない。

 真の魔王とは、【世界】が生み出すリセット機構だ。知的生物の文明が多少やんちゃした程度なら、世界中に大洪水を起こして文明を流しちゃったり(下剤)、大国の政治的トップの家族に【魔王】と呼ばれる裏【神の子】を送り込み、知的生物たちを争わせて滅亡させたり(虫下し)する。

 でも世界がどうしようもないほど汚染されたら、【世界】は【真の魔王】を生みだして、原初のドロドロの溶岩と酸の雨しか降らないような、深海の微生物程度しか生き残れない状態まで『リセット』する。

 ……なんでそんなモノの因子が私の中にあるんですかねぇ。

 そんな訳で内なる【真の魔王】を暴走させないためにも、キマイラなんてモノを創る教国をぶっ叩いておこうと思い立った。それ以上に私の『庭』を荒らされて引き籠もっていたら女が廃る。

 教国に向かう途中でちょこちょこと教国の計画を潰していると、その裏に潜むある存在の影が見えてきた。……いや、半分以上は『自称お兄ちゃん』からの電波(ちえ)なんだけど、その正体は、魔界最古の悪魔公三柱の一柱、人類発生前から存在し、数多の世界に知恵を授け、気まぐれに滅ぼしてきた古の蛇――【狂乱公女】シルベルタルだった。

 ふざけんな。化け物過ぎるだろ。

 そこから私とシルベルタルの大陸を盤上としたゲームが開始された。

 それからなんやかんやあって、光の精霊王さえ従えたシルベルタルから傘下に入れと脅されたけど、私も大事なモノに手を出されたのでそれを拒否。奥の手のさらに奥の手まで使って戦ったけど、地力が大人と幼児ほども違うのであっさり滅ぼされた。

 でも色々と準備しておいたおかげで、ギリギリで再生。本当にギリギリ……こんな宝くじの一等を二回連続で引き当てるような真似は、もう一度やれと言われても絶対に無理です。

 でも私は生き残った。完全復活には程遠い五歳児程度のちんちくりんになったけど、この私、悪魔ユールシアは生きてるぞぉおお。うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!


『……何やってんの、あんた』


 両腕を振り上げて全身全霊でガッツポーズをする私の足下から、呆れたような冷静な声が掛かる。

 見た目は蒼いフェレット、中身は悪魔。ローズは元々シルベルタル麾下の大悪魔で、色々面倒もかけられたけど、シルベルタルにあっさりと切られて私と一緒にここまで落ちてきた、意外としぶとい奴である。

『あんたが妙に力むから、あちこちから思念が反応しちゃってるじゃない』

 そういえば、私一人の心の雌叫びにしては随分五月蠅いな、と思っていたら、黒い霧の世界から怨嗟の呻き声が無数に響いていた。

「ローズ、アビスってなに?」

『知らないのっ!? あんた、一応(・・)、最高位悪魔でしょっ!?』


 一応は余計だ。いや、他の最高位悪魔から見ればそんなもんか。

 言っておくけど私の知識は偏っている。堂々と言うことではない。私の知識は人間だった頃の知識と、悪魔になって本能的に覚えた知識、リンネに教えてもらった知識、貴族としての知識、魔神となって増えた悪魔の知識、……そして半分くらいが、『自称お兄ちゃん』が異次元の果てから送ってくる電波だったりする。

 何か知らない知識や単語が出てきてのほほんとしていると、いつの間にかその知識を得ていて吃驚するけど、もう慣れた。

 ローズが最初に、悪魔でも認識出来ない魔界の底とか、穢れた魂が悪魔になる場所とか言ってたけど、そんな場所だと電波も届かないらしい。


「ローズ、教えて」

『……もぉ、仕方ないわねっ。この私が教えてあげるっ』

 溜息ついて文句を言いながらも、ローズは耳をピクピクさせながら教えてくれた。


 魔界の底……要するに妖精界・物質界・精霊界・魔界などある次元で、最も暗い場所にある魔界のさらに下にある次元らしい。下って言うのは比喩でしかないけど、要するに魔界が一番近場にある。

 だったらすぐに復帰出来そうな感じだけど、ところがそう簡単にはいかない。

 まずここは、穢れて穢れて汚れまくって悪魔の目からも逃げ延びた魂や、物質界や他の次元で滅ぼされた魂が落ちる場所で、落ちた魂はここでは無限に近い苦痛を受けながらぐちゃぐちゃのドロドロになって、障気の泉となり、魔界や物質界で悪魔として生まれ変わる。

 たまに自我が強すぎた普通の魂とか、魂の選別をする光の大精霊が驚いて落としちゃう場合があるらしいけど、それでも尚、自我を残した珍妙な魂は、魔界や物質界でポコンと湧き出してくる場合があるらしい。

 …………何故か微妙にディスられているような気がする。

 ちなみにローズは確認出来ていないけど、『天界』という良い子ちゃんな魂が行く場所があるという噂があって、そこから精霊の魂が生まれるとか。そこだと、麻薬のような快楽の中で魂をぐちゃぐちゃにされるらしい。何ごとも程々が良い。

 まぁ、要するに落ちてくるのは簡単だけど、他の次元に行くのには障気状態で障気溜まりから出ないといけないのが【奈落(アビス)】だった。


「あれ? 高位悪魔とかは意識を集めてまた復活するとか聞いたような」

『それってかなり長く生きた存在の場合でしょ。そういう連中って、何度も何度も滅びと再生を繰り返しているから、色々裏技を知っているみたい。私みたいな百年程度の大悪魔じゃ……今は下級悪魔相当だけど、無理無理。……あんたは?』

「同じね」

 本格的に困ったぞ。どうやって戻ろう? 障気溜まりから再生するのは転生と同じだから、自我を残せてもまた幼生体からだと、今の力をまた得られるか分からない。

「出口って言うか、その溜まった障気が物質界とかに出る場所って分かる?」

『……多分、障気の濃い方に行けば良いと思う。ここら辺はアトラに近い奈落のはずだから、落ちてくる魂も出る場所もアトラかそこに近い魔界のはずよ』

「それじゃ、とりあえずそこを目指しましょ。何かあるかもしれないし」

 どちらの方角だろうか、と辺りを見回したけど、どこを向いても空も地面もなく黒い霧しか見えない。

「霧ばっかりね。滅入るわ」

『あんた……物質界が長すぎて、悪魔の認識で“視る”の忘れてない?』

「あ、そっか」


 精神世界である魔界にも本来障気しか無いけど、悪魔達は魔界を荒れ地や曇天などの共通認識として持っている。正確に言うと、そういった認識が空間にこびり付いて、生まれたばかりの悪魔は本能的にそう認識する。

 私は目を瞑って空間に残った認識を読み取り再び目を開くと、そこには魔界にも似た荒れ地や岩石地帯などが拡がり、遠くには竜巻や嵐などが見えた。


『あの竜巻に見えるモノが魂をぐちゃぐちゃにしている奴だから、下手に触れるとあんたでも危ないわよ』

「へぇ……良く知ってるね」

『これでも私を創った【悪魔博士】と名高いゼフィルセル様より、【悪魔学士】の称号をいただいたからねっ』

 蒼いフェレットが自慢げに胸を張る。でも……あれ?

「ゼフィルセルって誰? ローズはシルベルタルの配下でしょ?」

『…………』

 何気なく質問するとローズの眉間に皺が寄る。

『……悪魔公であるゼフィルセル様が【暗い獣】に敗れて、配下の大悪魔は散り散りになって、私はシルベルタル様麾下の大悪魔に捕らえられて、忠誠を誓わされた』

「そっか……」

 リンネの奴、そんな事してたのか。悪魔の誓う忠誠は契約に近い。なるほどねぇ……そうやって配下を増やすんだ。あらためてジッとローズを見ると、以前と何か違う気がした。

「ローズ。……あなた、シルベルタルとの契約、切れてない? ついでに精霊の因子も消えているみたいだけど?」

『えっ!?』

 気付いていなかったのか、ローズが目を見開いて自分の身体を確かめ始めた。

 契約したシルベルタルに直接殺されたからか、一度滅ぼされたのが原因か、ローズからシルベルタルの匂いは消え、埋め込まれた精霊の因子も消えていた。

『やったーっ! 精霊の因子、すっごく気持ち悪かったのっ! 許さないわっ! シ…シル…シルベルタルっ!』

 威勢はいいけれど、シルベルタルを呼び捨てにする時、ローズの脚が産まれたての子鹿のようになっていた。

 まぁ、仕方ない。悪魔は体育会系縦社会。下位の悪魔は上位の悪魔を本能的に恐れるし、今の私達とシルベルタルは、見た目通り小動物と幼児と大人ほどの力の差がある。

「でも丁度良かったわ。ローズ」

『ん?』

「あなた、私の配下にならない?」

『……はぁっ!?』

 ローズがシルベルタルに開放されたと知った時より驚いている。

『な、何言ってんの? 私はずっとあんた達の敵だったのよっ! 今はこんな下級悪魔になってるし……』

 おやおや、気にするのはそこですか。この子は押しに弱いタイプね。ダメな悪魔(おとこ)に引っかかってヒモでも養いそう。(偏見)

「それでもあなたの知恵や知識は残るでしょ?」

 悪魔としてあまりそちら方面で褒められたことがないのか、視線が揺れて口元がわずかにほころんでいる。もう一押し。

「あなたが必要なのよ」

『……し、仕方ないわね。あんたの配下はノアって奴以外力ばっかりだから、私がついててあげるわよっ! 感謝しなさいっ、ユールシア…様……』

「うん、ありがと」


 私とローズとの間に繋がりが生まれ、ローズは正式に私の配下となり、その力もわずかだけど上がったように感じた。

 こうしてシルベルタルにぶっ飛ばされて奈落送りにされた私達の、悪魔主従二人旅が始まった。




現世でのリンネもヒm…いえ、なんでもございません。

けっこう絶望的な状況のはずなんですが、ユルの場面だけは、緊張感皆無でお届けいたします。


落ちるのは簡単と言っていますが、抜け出すのに比べてなので、悪魔でも意図的にアビスへ来ることはほぼ不可能です。滅びれば簡単に落ちることは出来ます。

聖王国でのリンネの生活は、すべてユルが賄っています。


次回、物質界アトラでの従者達。

だいたい不定期、週に1本ペースになりますので、よろしくお願いします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
上司が次々変わる三下悪魔少女ローズ。  上司や職場に恵まれていないと感じているのなら、オージンジオージンジ。 ユルさまの配下。 ウサギ、クマ、フェレット、と書くととってもメルヘン。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ