1-00 第二部 プロローグ
※ご注意
書籍版は連載時より相当な時間が経過しており、現在の私の文章力と違っておりますので、ストーリーは変わりませんが全部書き直しております。
書籍版は最新の設定を盛り込んで加筆もしており、多少設定が異なる部分があります。
本作は二章まで制作した同名作品のリメイクとなります。
そちらも消さずに残して欲しいとご要望があり、新しく別に書くこととなりました。
私の我が儘で申し訳ございません。
ストーリーは大幅に変わりますが、三章始まりの時点でほぼ同じになります。
では、よろしくお願いいたします。
激しい時空のうねり、人間の魂など砕けてしまいそうな次元の奔流。
それは何も無い空間に荒れ狂う虚無の嵐。
その激しい渦の中で“私”は夢を見る。
綺麗で優しい両親……貴族のような生活……笑顔を向ける召使い達……。
金色の髪…黒い髪……小さな友人達。
大きなお城……立派な王様……ふてくされた顔の小さな男の子……。
剣を握る真っ直ぐな瞳の少年……。
そして…
溢れる血潮の甘い香り……。
暗い空……暗い世界……。
私の前に跪く、数千もの異形の化け物達……。
四人の少年と少女……。
巨大で……闇のように暗い、豹のような獣……。
その瞳に映る……
金色の猫。
静かにそっと夢を見る。
一つの大きな力が“私”を阻むように壁を作り、
一つの大きな力が“私”を求めて呼び寄せる。
誰かが呼んでいる。
知らない声……? 知っている声。男の人……? 女の人……?
微かに聞こえる“獣”の唸り声。
あなたが……私を呼んでいるの?
「……あ、起きたっ」
瞼ごしに感じる白い光に目を開けると、まだぼんやりと霞む景色の中で、誰かのそんな声が聞こえた。
まだ若い女の人…? でも何故かとても懐かしい。
身体がうまく動かない。ずいぶん寝ていたような気がする。
「あ、待って、すぐ起きちゃダメよ」
身体を起こそうとする私を、その女の人が抱きしめるように押しとどめ、私の額と自分の額を合わせてきた。少し……冷たくて気持ちいい。
「うん……熱は下がってるね。凄い熱が出て昨日の朝から寝たままだったのよ。お母さん達が騒いで大変だったんだから。ねぇ、お腹は減ってない?」
「……ううん」
小さいけど声が出た。でも少し感じが違う。熱が出たからだろうか、そう言えば病気になるなんて久しぶり……。
「そうなの……? それじゃ果物でも剥いてこようか? 何かお腹に入れないと良くならないからねっ」
少しずつ見えてきた視界の中で、一人の女の子が私に微笑みかけていた。
中学生くらいの……黒目で黒髪の元気そうな女の子。
知らない人……? でも、知っているような気がする。
懐かしい笑顔。どこかで見たことがあるような明るいお部屋。
花柄の壁紙。クレヨンの落書き。カラフルな絵本。クマの縫いぐるみ。
色取り取りの大きなクッション。小さな白い椅子と机。
その光景に……そのあまりの懐かしさに、自分でも気づかないうちに瞳から涙が零れていた。
「どうしたのっ?」
女の子が驚いた声を出して私を静かに抱きしめ、頭をそっと撫でてくれた。
大きな手……ううん、私が小さい。
「怖い夢を見たのね……? もう大丈夫よ、……柚子……」
本日は五話ほど投稿予定です。1時間置きに予約を入れてあります。
プロローグは短いですが、次からは3000文字~4000文字前後を予定しています。
六話目からは、二日に一度の更新になりますが、余裕がある場合は前倒しで更新します。