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桃太郎外伝~ひょっとしたらあったかもしれない桃太郎~  作者: 狂気のマッドサイエンティスト
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第一章 鬼の少年 

 この世は桃太郎帝国によって支配されている。そう言っても過言ではない現状が、ここにはあった。帝国の人口は50億人を超える。そしてそのほとんどが、桃太郎を崇め奉っている。現人神としている。国自体が一つの宗教のような感じになっているのだ。それは鬼も例外ではなかった。かつては、鬼ヶ島のことで、桃太郎と鬼は敵対しあっていた。しかし今は、桃太郎と鬼は和平を結んだのだ。まあ、和平と言っても、決してそれが平和的になされたものではないのだが。

しかしそれを忘れている鬼たちにはあまり関係はない。今日も桃太郎を崇めながら生きるだけだ。しかし、鬼の中にも、他とは違うやつはいる。それがたまたま1人の少年だった。鬼の少年は考える。

(みんなみんな、桃太郎様のやることは絶対正義で絶対正しいって言うけど、本当にそーなのかな?俺はちょっと違う気がすんな。これだけの人数がいて、反乱分子がほとんどいないっていうのもおかしな話だ。)

前にこの考えを、少年は他の人たちに言ってみたが、相手にされなかった。みんな口を揃えて、何言ってんだ。桃太郎様が間違っているっていうのか?お前は実に馬鹿だな。もっと周りを見ろよ。と言われるだけだった。その光景を見て、若干の異様さを感じたものだ。皆が皆そういうのだ。おかしいどころの騒ぎではない。(狂気だ・・・)とさえ感じた。俺を産んだ親だ。せめて親にはわかってほしいと自分の考えを言い続けているが、まるで取り合ってくれない。しつこいと叩かれたことさえあった。

「諦めてたまるか。」

少年はそうつぶやいた。

もう一度行こうと決意し、両親の部屋をノックしようとしたその時、部屋から話し声が聞こえてきた。

「昔は素直ないい子だったのに。桃太郎様に逆らうような悪い子じゃあなかったのに、どういてあんなふうになってしまったのか。」

「なあに。すぐに自分の間違いに気づいてくれるさ。それでも気付かなかったら、あれをやってもらおう。」

「あれね?噂の。それでいい子に戻るかしら?戻るのだったら、今すぐにでも・・・。」

「君がそれでいいのなら、私は問題ないさ。あの子にいい子になってほしいのは私も同じだからね。」

聞いていてゾッとした。おそらくあれというのは噂に聞いたことがある、どんな反逆者も入れば桃太郎に忠実な人になって出てくると言われているあの場所だろう。学校で習ったこともある。中で何が行われているのかはしらないが、あんなところに実の息子を入れようとするなんて、うちの親は何を考えているんだろうと思った。同時に、そういう考えに至ることを容易にしてしまっている現状はやはり狂気じみていておかしいと考えた。そして、少年は恐怖しながら後ずさった。それがかなりまずかった。物音を立ててしまったのだ。

しかし、声は聞こえてこない。運良く音は聞こなかったのかなと思ったが、そんなはずはなかった。

ちょっとして、目の前の扉が開いたのだ。そこには父親が立っていた。

「やっぱりお前だったかー。いけない子だなー。盗み聞きしてなー。聞いていたのだからわかると思うけど、やっぱり桃太郎様のところに連れて行って、更生してもらわないといけないなー。本当は連れて行きたくないのになー。残念だなあ。」

そう言っている父親の顔は残念というには程遠く、歪んだ笑顔だった。ちらりと母親のほうも見たが、同様だった。

少年は逃げた。

父親と母親がおってくる。恐怖だ。

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

あれはもはや、自分がしってる父と母ではない。そう思った。いや、もとからおれのしってる父と母なんていなかったのかもしれない。あれが本当の姿で、前までの父と母は、俺が桃太郎様に逆らわなかったからいい両親というだけだったのだろう。それが今、狂気とかしている。廃人とかしている。恨んだ。両親をあんなふうにした帝国を恨んだ。しかし、恨んだところで、ただの鬼の少年でしかない少年に何ができるわけでもない。

「くっそ!おれにもっと力があれば!」

無力感に打ちひしがれた。しかしそう願ったところでマンガやアニメじゃあるまいし、覚醒とかしたりはしなかった。

「どーこーだー?むすこよ~。」

父親が迫ってきた。慌てて隠れる場所を探す。そして、ある部屋を見つけた。慌ててそこに入る。少年はそこで、あるものを見つけた。それはこの家にはあるはずのないものだった。

「なんでこんなもんがこの家に?まあ、いい。役に立つかもしれないから、持っておこう。」

父の声が近づいてきた。明かりが漏れるといけないので、部屋の電気を消して、壁にもたれかかった。その時、秘密の抜け道があったようで、頭から滑っていき、家の外に放り出された。

「やった!なんかしらんけど家の外に出られた!これで逃げられるるるるる・・・・あ・・・・・レ・・・・?」

そう喜んだのも束の間、意識が途切れた。途切れゆく意識の中で、声が聞こえた。

「ごめんね。少年。君のお父さんから連絡があったんだよ。あそこに連れて行くから、もし逃げたら捕獲して代わりに連れて行ってくれって。」

そこで少年の意識は途切れた。

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