表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
37/37

第37話(最終章第12話 完):防衛線は次世代へ―『我が国の未来は明るい』

~最高の夕焼け


午後1700(ヒトナナマルマル)。


 作戦室リビングの窓から差し込む柔らかな夕焼けが、

我が国の領土(庭や街並み)を穏やかな橙色に染めていた。

かつて、夜泣きという名の夜間空爆とワンオペ育児という名の

兵糧攻めに耐えかね、このリビングの床で幾度となく

絶望の涙を流した日々があった。

 あの頃の我が家は、一寸先も見えない暗闇の中を、

たった一人で手探りで進むような過酷な戦場だった。


だが――今は違う。

夕焼けの光は、「今日もよく戦ったね」とそっと背中を

撫でてくれるように優しかった。


「おっ葵、ただいま。

もう夕方のリビング(作戦室)に詰めてるのか」


 声をかけてきたのは、夫で我が国の副官。

彼は冷蔵庫からお茶を取り出し、グラスへ注ぎながら、

穏やかな笑みを浮かべていた。


「今日の我が国の夕方スケジュールは順調よ、副官」


私がそう答えた瞬間、廊下の向こうから元気な足音が響いてきた。


「お母さん!図工の準備物、ちゃんと持って帰ってきたぞ!」


ピカピカのランドセルを背負った長男・リクは、

かつての“デストロイヤー”の面影を残しつつも、

すっかり頼もしい次世代兵士の顔つきになっていた。

(ふふっ……もう「デストロイヤー」ではないわね)


「よし、身だしなみチェック、異常なし。

リク、明日の集団登校の先頭任務、頼んだわよ」


「ラジャー!」


リクは力強く敬礼し、ランドセルを置いて手洗いへ向かった。


 続いて、我が国の“小さき司令官”となった長女・メイ(4歳)が

お気に入りのピンクの制服を揺らしながらトコトコと歩いてきた。


「おかあさん、みて!

きょうのほうせきばこ(お絵描き作品)、ほめられたんだよ!」


「おっ、メイ司令官も任務完了か。」


と、夫がメイの頭をなでると、メイは満面の笑みを咲かせた。


「えへへ、すごいでしょ~」


 玄関の扉が閉まり、夕焼けの光がリビングに静かに満ちていく。


――静寂が戻ってきた。

しかしそれは、かつての「孤独と絶望の静寂」ではない。

すべての任務を完璧にやり遂げた者だけが味わえる、

最高に心地よくて温かい「平穏の静寂」だった。


 私はソファに腰掛け、淹れたてのコーヒーを一口すすった。

深みのある香りが、これまでの長い戦いの歴史を優しく包み込んでくれる。


「……ねえ、副官」


私は隣に座った夫

―かつての頼りない一般兵から、我が家を支える最強の副官へと昇格した男―

に視線を向けた。


「なんだ、葵?」


夫は穏やかな笑みを浮かべ、私を見つめ返す。

私はコーヒーカップをそっとテーブルに置き、

これまでにないほど誇らしい笑みを浮かべて言った。


「―報告します。

我が国の『次世代防衛司令官』たちの育成、完了しました」


夫は深くうなずき、大きく笑い声を上げた。


「ああ、完璧な引き継ぎだったな。

お前が命を削って守り抜いたこの我が家の平和は、

間違いなく次の世代へと受け継がれたぜ」


専業主婦として駆け抜けた数年間。

目の前には、最高のパートナーである夫と、

逞しく育った子どもたち(未来の司令官)。


 恐らくこれからも、予測不能な嵐が吹き荒れるだろう。

しかし、私たち家族が築き上げたこの強固な絆と、

愛に満ちた防衛体制があれば、どんな困難だって乗り越えられる。


 夕焼けがゆっくりと夜へ溶けていく中、

私たちは温かいコーヒーを飲み干し、静かに微笑み合った。


――我が国の未来は、確かに明るい。



(最終章完)

お読みいただきありがとうございます

【専業主婦の『日常』は『戦争』です!~作戦開始時刻:午前0600(マルロクマルマル)~】

は、これにて完結となります。

第1章のワンオペ孤軍奮闘編から始まり、

第2章 夫婦同盟・内政改革編で、夫の覚醒と家事育児への参加協定、

そして

最終章で、子どもたちの成長と次世代への継承を、拙くも描いたのが本作です。


 見守ってくださっていた読者のみなさんのおかげで、

最後まで、最高のハッピーエンドとして、書き上げることができました。

本当にありがとうございます

 戦いはこれからも続いていきますが、きっと私たちの日常には、

いつだってかけがえのない笑顔と愛があふれています。

またどこかの戦場(作品)でお会いできるのを楽しみにしております


――作者:うつりゆく心持ち

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ