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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

王と魔術師

不動の呪いをかけられた王太子

作者: 日暮蛍
掲載日:2026/05/31

「君の娘の求婚者、犬にしちゃった。どうしたらいい?」

「こんのばかぁ!!!」


王はとんでも無い報告をしてきた友人であり直属の部下である魔術師に向けて怒鳴った。


「何してくれちゃってんのお前!? 国際問題だぞ!!」

「仕方ないじゃん。正当防衛だよ。」

「…何があったんだ?」


魔術師のした事はとんでもない事だが、理由もなく魔術を使う事は無い、と信じたい王はひとまず魔術師から話を聞く事にした。



◆◇◆◇◆



王女の事を軽く説明しよう。

まず、王女は色々とやらかして勘当され逃げ出した王子に変わって王位を継ぐ事になった。

そして血筋を残す為に婿を取る事になったのだが、問題がある。


王女は、モテる。


愛らしい容姿。

聡明で努力家であり自己研鑽を怠らない。

周囲の人や民達を想いやれる。

そんな素晴らしい人物な為王女は幼い頃からモテていた。


しかし、モテすぎるのも大変であった。


婿の話が出る前の幼い頃から王女の元には熱烈な求婚やお見合いが後を絶たなかった。求婚者の中には王と歳の変わらない者までいたが歳の差が激しいのは王がきちんと断っていった。他の求婚者達に対してはあまり王女に圧をかけないでほしいと抑制した。

求婚以外でも王女に対して尋常じゃない執着を見せる者が男女問わず大勢おり、護衛が少しでも隙を見せれば王女を手に入れようと近づいてくる。誘拐未遂は数え切れないほど。

護衛だって王女の魅力に負けて手を出そうとする輩も出てくる始末。


そんな人の正気を奪ってしまうほどの魅力を持つ当の本人はというと、それすらも自分の武器にして着々と自分が王になるための下準備として利用していた。王女はかなり強かな人物だった。

王女の心の健康には問題なかったし、王女の身の安全は王と魔術師も加わって徹底的に守り、王女自身に護身術を学ばせていた為これまで切り抜けてきた。


が、ここでとんでもない人物が現れた。

留学生としてやって来た他国の王太子である。


この王太子もまた王女に惚れて自身の妻にしようとアプローチをかけようとした。

しかしこの時すでに王位を継ぐ事が決まっていた王女に他国に嫁がせるわけにはいかない。王女も王も他国の王太子の求婚をきちんと断った。


しかしこの王太子、諦めなかった。

なんだったらこれは恋と障害と余計に情熱を燃え上がらせた。加えて王女は王位を継ぐ意思などない、俺の助けを待っている、という自分にとって都合の良い妄想を真実だと信じ込んでしまった。

だから王女達の都合など関係無しに強引に嫁にしようとさらに強いアプローチをかけた。


しかし王女はこの手の相手には慣れていた。嫌な慣れである。

他国の王太子に鉢合わせないようスケジュールを調整し、顔を合わせないよう距離を取った。

護衛達も王女と他国の王太子を必要以上に近寄らせないよう牽制をした。

王と魔術師も他国の王太子の目に余る行動に対して強く注意し、王太子の国に対して王太子の王女に対する言動への苦言の手紙を送った。


しかしこの王太子、めげなかった。

恋は盲目という言葉の通りか自分の立場が悪くなってもそれに気づかず、王女自身にも王女の周囲にも王太子の護衛にも何度も止められても止まらなかった。


そしてとうとう王女の貞操を奪おうとした時、たまたま居合わせた魔術師が魔術によって王太子を犬に変えてしまった。



◆◇◆◇◆



「というわけ。」

「…マジかよ。」


一部始終を話した魔術師は話疲れたのかソファにだらけて座る直す。

王も深い深いため息を吐いて椅子の背もたれに寄りかかる。


「えー。とうとう王族までこんな事をする奴が出てくるなんて。」


王は額を手に当てて項垂れる。

実はというと、王女の貞操を奪って王女を我がものにしようとしたものは数多くいた。中には魔術師もびっくりのとんでもない魔術を使ってまで王女を手に入れようとする努力の方向性を間違えた輩までいた。


「…とりあえず抗議はして、その犬にした奴はどこにやった?」

「とりあえず首輪をつけて庭の柱に繋いでるよ。」


ほらあそこと魔術師は窓の方に指を向ける。ちょうどそこから庭が見えるのだ。

立ち上がった王が窓に近づき視線を向けると確かに犬がいる。

2匹。

2匹の体勢を見て王は思考を停止した。


「あれあれ。君の愛犬に跨ってるのが例の奴。」


同じように窓に近づいて犬になった王太子に指をさし、そして気がついた。


「…あれってもしかしてこう」

「止めろ止めろ止めろー!!!」


魔術師が言い切る前に思考を取り戻せた王は急いで愛犬と馬鹿野郎を引き離すよう魔術師に命令した。


幸い、未遂で済んだ。


そして愛犬を救い出した後、王は魔術師に新たな命令を下した。


「人間に戻した後、あいつのものをたてなくしろ。」

「了解!」


王の命令をきちんと理解した上で魔術師は忠実に命令を実行した。



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