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蛇の目/requiem  作者: ふゆはる


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第24話/闇の色

 科警研第二課は、藤堂修司の確保を終えたその足で、アーティストを追うための作戦を開始していた。都市の雑踏を抜け、監視カメラや通信ログを追跡するメンバーたちの目には、緊張と覚悟が宿っている。

 尋問室では藤堂が椅子に座り、深く息をつきながら俯いていた。吉羽恵美は柔らかい口調で問いかける。

「藤堂さん……アーティストの行動について、もう少し詳しく教えてくれる?」

 藤堂は小さく苦笑し、手を組みながら答える。

「……正直に言おう。あの男は俺たちの計画を超えていた。俺たちが遺体を流通させるだけなら、捕まらずに済んだ。だが、あのアーティストは、自分の傲慢とも言える所作で……勝手に遺体を処分し始めたんだ」

 吉羽は静かに頷き、やわらかい声で促す。「勝手に……処分? それはどういうこと?」

 藤堂は肩を震わせ、目にかすかな恐怖を浮かべる。「……俺たちはあくまで遺体を好事家に流すだけだった。だがアーティストは、手元にある遺体を、彼の美学に従って勝手に“作品として完成させる”ために処分し始めたんだ。俺たちの計画とは無関係に……」

 片瀬が画面を凝視し、低くつぶやく。「それじゃ、遺体の行方や場所も予測不能になる……」

 藤堂は舌打ちをして続ける。「そうだ……俺は悔やんだよ。流通させるだけなら、少なくとも法の目からは逃れられたかもしれないのに……あの男のせいで、すべてが暴かれることになった」

 吉羽は目を逸らさず、柔らかくも確信を込めて告げる。「……藤堂さん、あなたの協力で、私たちはアーティストを追える。あなたの情報がなければ、手がかりは得られなかったわ」

 藤堂はわずかに肩を落とし、苦々しくつぶやく。「……分かった。俺のせいで逃げられなかったと思え。あの男の傲慢さが、すべてを台無しにしたんだ……」

 吉羽はUSBを机の上で軽く確認し、柔らかい口調で言う。「……ありがとう、藤堂さん。あなたの証言がなければ、アーティストの行動は永遠に闇の中だった。次は彼を止める番よ」

 渡辺が静かに頷く。「これで、アーティストの行動パターンや拠点の手がかりがつかめる。すぐに動こう」

 吉羽も立ち上がり、窓の外の街を見つめる。「……誰も傷つけさせない。芸術家、藤堂……すべての闇を止めるために、私たちは行くわ」

 尋問室には、藤堂の悔恨と恐怖、そして科警研第二課の揺るがぬ決意が入り混じり、次なる決戦への静かな緊張が漂った。藤堂の吐露は、チームにとって最大の手がかりとなり、アーティスト追跡の鍵を握ることになる。


 科警研第二課の捜査室には、USBや監視カメラ映像、藤堂修司の尋問記録が散乱していた。机の上には彩香の証言の写しや法人の資金記録も並ぶ。窓の外の朝の光は柔らかく、室内の緊張を際立たせる静寂を照らしていた。

 吉羽恵美は椅子に座り、深く息を吸ってから柔らかく口を開く。「……アーティストの顔はまだ分からない。でも、これまでの情報から少しずつ輪郭が見えてくるはずよ」

 秋山室長は静かに頷き、モニターを起動する。「藤堂の証言、彩香の内部資料、監視カメラのログ――全てを統合すれば、犯人のプロファイルが完成する。蛇の目を起動」

 人工ニューロンネットワーク「蛇の目」が起動すると、冷たい青い光が室内に反射し、淡々と解析が始まる。ディスプレイ上の膨大なデータは、瞬く間に整理され、行動パターンや心理傾向が図式化されていった。

「解析開始――」

 機械音が静かに響く中、吉羽は手元の資料を見つめながら、少し眉を寄せる。

 蛇の目が示した情報は、ただのデータではなく、まるで冷徹な観測者が犯人を見透かしているかのようだった。

 行動パターン:遺体は芸術的処理が施され、冷凍ユニットを経由して好事家に流通。藤堂や法人を通して資金操作を行うも、現場には直接姿を現さず、常に第三者を操る。

 心理傾向:傲慢かつ異常な美学を持つ。自己顕示欲が極めて高く、倫理観は希薄。自らの理想を優先し、他者の命や社会規範を軽視する。

 社会的背景:単独で行動可能で、高い知能と冷静な計画性を有する。資金や協力者を効率的に利用し、追跡困難な行動が可能。

 危険性評価:遺体処理の手法から、倫理観の欠如は極めて高い。通常の犯罪心理では測れず、“美学犯罪者”として分類される可能性。

 吉羽は静かに画面を見つめ、柔らかくつぶやいた。「……想像以上に冷徹で、危険な人物……」

 秋山室長は淡々と付け加える。「このプロファイルを元に行動範囲や心理的トリガーを推定できる。人間の直感だけでは到達できない領域だ」

 渡辺は息を吐きながら言う。「……これで追跡が具体的になる。時間との勝負だな」

 片瀬も画面を凝視する。「でも、こうして傾向を把握できれば、接触の可能性は高まるはずだ」

 吉羽は深呼吸をし、窓の外の街を見つめる。光は柔らかく降り注ぐが、その胸には決意の熱が満ちていた。「……人間だけでは見えなかった部分を、蛇の目が補ってくれる。アーティスト、必ず止めるわ。誰も傷つけさせない」

 その瞬間、藤堂の告白が重なる。「……俺たちは遺体を流通させるだけで良かった。だがあの男は勝手に処分し始めた……俺の計画を超えて動いたんだ」

 吉羽は心の中で静かに頷く。藤堂の悔恨と恐怖が示す通り、アーティストは計画性を超えた独自の美学で行動している。それは単なる犯罪者ではなく、制御不能な存在の予兆だった。

 モニターの青い光が室内を染め、藤堂の表情と吉羽たちの覚悟が交錯する。人間の情緒、恐怖、決意と、AIによる冷徹な解析。すべてが一つの線に結ばれ、アーティスト追跡の道筋が明確になった瞬間だった。

 吉羽はそっと呟く。「……次は、直接対決ね。アーティスト、私たちが止める。必ず……誰も傷つけさせない」

 冷徹なAIの光と、人間の熱い決意が交錯する科警研第二課の捜査室に、次なる戦いへの緊張が静かに、しかし確実に漂っていた。


 科警研第二課の捜査室には、前日の夜からの資料や監視カメラ映像、藤堂修司や瀬川彩香の証言が山のように積まれていた。朝の柔らかい光が差し込む中、室内の空気は重く、焦燥が張り詰めていた。

 吉羽恵美は椅子に座ったまま、深く息をつき、指でモニターの映像をなぞる。「……時間がないわ。アーティストの行動は予測不能。特定作業を急がないと、また誰かが犠牲になる」

 秋山室長は冷静に解析データを眺めながら言う。「藤堂の証言と流通ルート、内部資料から行動範囲はある程度絞れる。だが人物像は依然として不明。ここからはプロファイルと行動パターンを突き合わせるしかない」

 渡辺は肩をすくめ、少し焦れた声で言う。「……でも、この膨大な情報のどこに決定的な手がかりがあるのか、すぐには見えませんね」

 片瀬は画面を凝視し、低くつぶやく。「……アーティストの行動は極めて計算されている。監視カメラや交通履歴を突き合わせれば、次の拠点を予測できるかもしれない」

 吉羽は目を伏せ、柔らかい声で皆を鼓舞する。「……私たちは、時間がなくてもできる限りのことをやる。人を傷つけさせないために。アーティストを特定して、止める……絶対に」

 秋山室長が淡々と指示を出す。「藤堂の証言から、アーティストが独自の美学に従って遺体を処理していたことが分かる。この行動パターンを元に、可能性のある人物を洗い出す。社内データベース、過去の芸術関係者リスト、SNSの投稿履歴も突き合わせろ」

 渡辺がキーボードを叩きながら言う。「了解です……でも、あの男の異常性は予測不能ですね。単純に過去の経歴だけでは追えない」

 吉羽は机に置かれたUSBを見つめ、柔らかく決意を込めて言った。「……それでも、誰かが見つけなければならない。私たちがやるしかない」

 片瀬も画面のデータをスクロールしながら呟く。「……次に動く場所は、必ず手がかりがあるはずだ。急ごう」

 室内に流れるのは、焦燥と決意、そしてわずかな緊張感。冷徹な解析と人間の感情が交錯する科警研第二課の面々は、アーティスト特定作業を急ぐ。誰も犠牲にさせないため、そして闇の色を背負う存在を止めるため、チームは一丸となって奔走していた。

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