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蛇の目/requiem  作者: ふゆはる


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第23話/藤堂修司

 朝の光がまだ柔らかく街を照らす中、科警研第二課のメンバーは緊張を隠せずに作戦会議を行っていた。瀬川彩香の証言により、医療法人の黒幕である藤堂修司が資金や遺体流通の全権を掌握していたことが判明した。だが、最新の監視カメラ映像では、藤堂が羽田空港に向かい、高飛びする準備を進めていることが確認されていた。

 吉羽恵美はUSBを手元で握り、静かに指示を出す。「……みんな、彼はもう飛行機に乗ろうとしている。遅れたら逃げられてしまうわ。冷静に、でも迅速に行動するの」

 秋山室長が淡々と情報を整理する。「空港の保安経路、チェックイン状況、搭乗予定便……全て把握済み。追跡チームを分散させ、出口を封鎖すれば確保可能だ」

 渡辺が拳を握る。「よし、俺が入国管理と連携して搭乗口を抑えます」

 片瀬も画面に目を凝らす。「私が搭乗カウンター前で待機します。吉羽さん、あなたは中央通路から制圧を」

 吉羽は小さく息を吸い、柔らかい口調で言った。「……分かったわ。でも、焦らないで。絶対に確保するのよ、誰も傷つけさせない」

 課は空港に向かい、監視カメラと連動した動きで藤堂の位置を特定する。ビジネススーツに身を包み、サングラスで顔を隠した藤堂は、悠々とチェックインカウンターに近づいていた。周囲には他の搭乗客がいるため、制圧は慎重に行う必要がある。

「今だわ、吉羽さん」

 片瀬の合図で吉羽は静かに歩を進める。柔らかい口調で声をかけながら、しかしその瞳には鋭い決意が宿る。「藤堂修司さん……少しお話をしましょう」

 藤堂は振り返り、驚きの表情を浮かべる。「……何だ、これは!」

「逮捕です。あなたは医療法人の資金を不正操作し、遺体流通に加担していました」

 吉羽の声は柔らかいが揺るがない。周囲の通行人に影響を与えないよう、彼女は冷静に距離を保つ。

 藤堂は一瞬逃げようとするが、渡辺と片瀬が瞬時に両側から制圧する。吉羽は柔らかく、しかし毅然と告げる。「抵抗しても無駄よ、藤堂修司。もう逃げられない」

 藤堂は数秒の間を置き、苦々しい表情で観念する。「……くそ……」

 その瞬間、課のメンバーは慎重に手錠をかけ、藤堂を確保する。USBのログ、彩香の証言、そして現場での確保――全てが繋がり、黒幕はついに追い詰められたのだ。

 吉羽は深呼吸をし、藤堂の肩越しに仲間たちに語りかける。「……これで、少しずつ闇の全貌が明らかになるわ。誰も、これ以上傷つけさせない」

 秋山室長が冷静に指示を出す。「警察に引き渡し、取り調べに回す。ここからが本当の核心部分だ」

 藤堂を連行しながら、吉羽は窓の外の光を見つめ、小さく決意をつぶやく。「……次は芸術家よ。藤堂だけでは全ての闇を止められない」

 空港の静かな朝に、科警研第二課の確実な一手が響く。黒幕の藤堂修司を押さえたことで、物語は次なる核心、芸術家との直接対決へと向かう――。


 科警研第二課の尋問室は、朝の柔らかい光が薄く差し込むだけで、静寂が張りつめていた。藤堂修司は椅子に座らされ、サングラスを外してもなお傲慢な表情を崩さない。だがその瞳の奥には、わずかに焦りと苛立ちが混じっていた。

 吉羽恵美は机の向こうに座り、柔らかい口調で切り出す。女性らしい声だが、芯には揺るがぬ決意が宿る。

「藤堂修司さん……少しお話を聞かせていただけますか。医療法人の資金の流れ、そして芸術家との関係について」

 藤堂は鼻で笑い、顎を撫でながら答える。「はあ……君たち、よくここまでたどり着いたものだな。でも、私が何をしたかなんて、たかが金の流れじゃないか」

 吉羽は微かに眉を寄せ、声を落ち着ける。「お金だけではないわ……遺体の流通についても知っている。芸術家から遺体を入手し、好事家たちに販売していたことも」

 藤堂の表情が一瞬、硬直する。しかしすぐに冷ややかな笑みを浮かべる。「……なるほど、君たちは“善きサマリア人”気取りで調査しているわけか。だが、証拠があるのか?」

 吉羽はUSBを机に置き、柔らかくも確信を持って語る。「もちろんあるわ。瀬川彩香の証言、監視カメラ映像、法人内部の資金記録……すべて繋がっている。あなたが逃げる前に、全貌は明らかになる」

 藤堂はわずかに舌打ちをする。「……彩香か。あの女もなかなかの小間使いだったな。だが、真の価値を理解していなかっただけだ」

 吉羽は静かに目を細める。「藤堂さん……あなたの言う“価値”とは、遺体を好事家に流すことですか? 人の命を、芸術だとでも?」

 藤堂は少し言葉に詰まり、苛立ちを隠せない。「……芸術家も私も、ただ美を追求していただけだ。倫理だの法だの……くだらない」

 吉羽は柔らかく、しかし揺るがぬ声で言う。「……人を犠牲にして得た美に、価値はないわ。あなたがどんな理屈を並べても、誰も許さない。芸術家の協力者として遺体を流通させ、資金を操作していた事実は消えない」

 藤堂は一瞬沈黙した後、嘲るように微笑む。「……なるほど、君たちは人間らしい感情で私を裁こうとしているのか。だが、君たちには理解できないだろう。全て計画通りだったんだ」

 吉羽は目を逸らさず、静かに答える。「計画はもう終わったわ、藤堂さん。あなたは逃げられない。芸術家も、そして好事家も、すべて明らかになる。もう、誰も傷つけさせない」

 藤堂の口がわずかに開いたまま、次の言葉は出ない。吉羽の言葉により、彼の傲慢さは焦りに変わり、心理的に追い詰められていく。USBの光が机の上で淡く反射し、尋問室には静謐と緊張が入り混じった空気が漂った。

 吉羽は深く息を吸い、柔らかい声で最後の一言を告げる。「……次は芸術家よ。藤堂さん、あなた一人では止められない。全ての闇を、私たちで暴きましょう」

 藤堂は無言で頭を振るしかなく、科警研第二課の揺るがぬ意志に圧倒されていた。尋問はまだ始まったばかりだが、黒幕の心は徐々に崩れ始めていた。


 科警研第二課の尋問室は、朝の柔らかい光に包まれながらも、重苦しい緊張感が漂っていた。藤堂修司は椅子に座り、通常の傲慢さはどこか影を潜め、わずかに肩を震わせている。吉羽恵美は柔らかい口調で問いかけながらも、揺るがぬ決意を宿した目で藤堂を見据えた。

「藤堂修司さん……芸術家、つまり遺体を用意していた人物について、詳しく話してくれる?」

 吉羽の声は女性らしい柔らかさがあるが、核心を突く冷静さが滲む。

 藤堂はしばらく黙ったまま、顎をさすりながら小さく息をつく。やがて低く震える声で語り始めた。

「……あの男のことか……“アーティスト”と呼ばれる男だ。誰も知らないだろうが、俺だって正直、彼には逆らえなかった」

 吉羽は静かに促す。「どうして……?」

 藤堂は目を伏せ、声を絞り出すように続けた。

「……彼は、普通の感覚じゃ計れない人間だ。遺体を素材として扱うことに、異常な美意識を持っている。俺はただの金の手配役で、指示に従うしかなかった……いや、従うことしかできなかったんだ」

 片瀬が画面に目を凝らし、低くつぶやく。「……これは尋常じゃないな」

 藤堂は息を荒くし、机を軽く叩く。「彼は、冷静に計算するだけじゃない。遺体の形、配置、状態……すべてを見て、指示を出すんだ。その圧倒的な存在感、異常な観察眼……俺は畏れ、怯えながら手を動かしていた」

 吉羽は静かに頷き、柔らかい口調で続ける。「……つまり、芸術家が遺体を“作品”として作り上げ、藤堂さんはそれを法人を通して流通させていた、と」

 藤堂はうなずき、わずかに声を震わせる。「ああ……冷凍ユニット、処置、運搬……すべて彼の指示だ。俺は金を用意するだけだったが、正直言うと、彼の前では一歩も間違えられなかった。怒らせたら、どんなことをされるか分からなかった……」

 吉羽は目を逸らさず、柔らかくも確信に満ちた口調で言う。「……藤堂さん、あなたの証言で全貌がはっきりしてきたわ。芸術家の異常な美意識、法人の資金操作、そして遺体の流通……もう逃げられない」

 藤堂は俯き、かすかに唇を震わせる。「……分かった……俺は、もう逃げられないのか……」

 吉羽はUSBを机の上に置き、柔らかく告げる。「逃げても無駄よ。全て明らかにする。芸術家も、そして好事家も――誰も傷つけさせない」

 藤堂は小さく息を吐き、言葉が途切れる。尋問室には静寂と重み、そして藤堂が抱く芸術家への畏怖が張りつめた空気として漂った。吉羽の柔らかい口調が、逆に藤堂の恐怖を際立たせる。

 吉羽は窓の外の光を見つめ、静かに決意をつぶやく。「……次は芸術家よ。藤堂さん、あなた一人では止められない。全ての闇を、私たちで暴きましょう」


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