第13話/候補
解析実行日時:第10話解析セッション(内部時刻同期)
解析端末:KAZUHAコア(蛇の目) v.██.██
対象商品:ブランド“エンジェルカラー” 型番 “スモーキーグレー” ロットA(販売開始:4年前)
解析手法:通販決済ログ、配送メタデータ、匿名転送サービスログ、受取拠点CCTV/出入記録、地域の不動産賃貸契約データの統合突合
蛇の目は、被害者群に装着されていた同一型番コンタクト(ロットA)が特定の通販ルート→匿名転送経路→地域受取拠点を経由して配布されていることを突き止めた。配送経路の重なりから 受取拠点(転送ハブ) 3箇所 が共通であり、そこを経由した購入履歴と、被害者の居住圏・行動圏との重なりが高い。さらに、エンバーミング処置の高度さに合致する 「安全圏」候補(倉庫、借家、貸し工房の長期契約) を契約記録ベースで抽出、上位候補を提示する。
以下、解析結果を匿名化データ+根拠+確度評価の順で詳述する。
A. 該当コンタクト 購入履歴(匿名化)と受取転送拠点一覧
注:個人の実名は匿名化(P#)し、受取拠点は拠点ID(H#)で表記。解析に用いたデータは販売業者提供の注文ログ、決済プロバイダ、物流事業者の配送メタ情報、匿名転送業者ログを突合。
A-1. 概観
総購入件数(該当ロットA、過去2年分): 124件(国内)
被害者と同一ロットで購入が確認された匿名購入者: P-014, P-027, P-033, P-049, P-082, P-091, P-104(このうちP-014、P-033、P-082が被害者本人の購入と一致)
購入のうち 37件(約30%) が匿名転送サービス経由(転送→受取ロッカー等)を使用。被害者群の購入傾向と重なるのはこのグループ。確度:S(高)
A-2. 受取転送拠点 — 上位3拠点(解析による頻度順)
(※拠点名は捜査上の便宜名。実際は各拠点の映像・入出記録と突合のうえで令状を取得して照合すること)
H-01:東灘転送センター(県南東部の匿名受取ロジ)
出現頻度(該当ロットAの配送ログに占める割合):37%
特徴:匿名転送→複数コンビニ受取へ再転送する多段ルートの集約点。CCTVにおける配送車停車記録多数。
確度:S
H-02:姫路中継BOX(地方小規模中継ロッカー群)
出現頻度:22%
特徴:地方在住者・観光客向けのロッカーを多用。夜間受取の痕跡が多い(23:00〜03:00帯での受領記録が比較的多い)。
確度:M→S(被害者発見地点の地理的分布と合致)
H-03:淡路匿名受取ロッカー(島内の民間転送業者)
出現頻度:11%(ただし被害者群との交差率が高い)
特徴:島内の観光地近郊。受取者IDの一部は複数回同一ロッカーのP/O履歴を持つ。
確度:M
(残りの配送はメーカー直送/大手EC通常配送/個人間転送などで分散)
A-3. 購入履歴サンプル(匿名化・抜粋)
(蛇の目の出力フォーマットを再現)
Order O-2024-0173
Purchaser: P-014(「匿名転送」使用)
Order date: 2024-03-12
Payment: クレジットカード(トークン化ID)→第三者決済(匿名化)
Shipping route: メーカー倉庫 → 匿名転送業者 → H-01(東灘転送センター) → コンビニ受取(指定)
Note: 同アカウントは過去12か月で同ロットを計3回購入。被害者Xの購入履歴と一致。
疑義点:配送最終受取の時間帯が深夜帯(00:20)傾向。
Order O-2023-1109
Purchaser: P-033(本人購入と一致)
Order date: 2023-12-02
Shipping route: メーカー→直送(住所登録)→受取(宅配)
Note: P-033はSNSでカラーコンタクトの着用を公開していた。SNSと通販アカウントのクロス照合で接点確認。
Order O-2024-0210
Purchaser: P-082(匿名転送→H-02受取)
Order date: 2024-04-05
Payment: プリペイド振替→匿名転送(モール経由)
Note: H-02の受取履歴と一致。周辺CCTVにて不審車両の出入りが検出されている。(ログID: C-02-042)
(上記は抜粋。蛇の目は全124件を照合し、上記ハブに繰り返し出現するパターンを抽出)
A-4. 購入傾向の統計的特徴(蛇の目解析)
購入者群の 年齢推定(推定アルゴリズム):主に20代〜30代が占める(分布のピーク)。確度:M
購入時間帯:深夜帯(00:00〜04:00)に二次ピークあり(匿名転送利用者に多い)。確度:M
支払方法:匿名プリペイド・第三者決済・ギフトカードの利用率が高い(約28%)。確度:S(匿名化回避の傾向)
地理的分布:県内南部〜中部(H-01周辺)に集中。確度:S
B. 「安全圏」候補(倉庫・貸家等) — 照合済みリスト(上位)
方法:空き家契約の公租公課データ、貸倉庫の長期契約データ、レンタル工房/貸しスタジオの入退契約記録、不審契約の通報履歴を蛇の目で突合。物件は匿名化して「S-#」の物件IDで提示。付記は契約の核となるメタ情報と“疑義”のポイント。
B-1. 安全圏 S-01(確度:S:高)
種別:廃業中の小規模倉庫(改装済)
所在域:県南東部(H-01の半径20km圏内)
契約概要:過去1年以内に短期「用途変更」申請あり。名義は法人(小規模物流会社)→但し実質的な使用実態は個人事業主の長期占有(6か月超)。
根拠:倉庫内の電気消費パターン(非定常で夜間使用が確認)、近隣CCTVで深夜に黒色バンの出入り履歴(該当車両はHUBの転送車両と一致)。同倉庫近辺から該当ロットの配送通知が複数回発生。
備考(捜査示唆):家宅捜索令状取得のための消費電力ログとCCTV映像確保を推奨。
B-2. 安全圏 S-02(確度:M→S)
種別:貸し工房/DIYスペース(長期利用契約)
所在域:県中部(H-02圏)
契約概要:会員制の貸し工房。会員IDで複数の夜間滞在ログ(非整合)を検出。借受名義は法人名だが利用者ログは個人アカウント多数。
根拠:工具類の動線(機材搬入のトラックログ)、近隣ゴミ置き場から分析用試薬缶片(防腐剤容器に一致)と推定されるプラスチック容器の発見。
備考:会員名簿の請求、夜間出入記録の差分解析を推奨。
B-3. 安全圏 S-03(確度:M)
種別:長期賃貸の別荘/貸家(山間部、一時占有)
所在域:淡路島周辺(H-03圏)
契約概要:観光シーズン以外に短期利用される例が多いが、過去6か月で特異な長期占有(貸主への届出なし)を示す記録がある。電気使用量の突発的上昇あり。
根拠:近隣住民の証言(深夜に人の出入り)、ロケーション的に移動経路と一致。
備考:貸主への事業者確認、契約書の真正性確認を推奨。
B-4. 安全圏 S-04(確度:L→M)
種別:小規模冷蔵倉庫の一画(短期賃借)
所在域:県北部(播磨地域)
所見:契約履歴で不自然な名義変更(同一住所で複数回)。防腐処理に使われる冷蔵保存が可能。だが確証は不足。
備考:現地立入調査と電力使用履歴の確認が必要。
C. 照合根拠のまとめ(蛇の目の論理鎖)
被害者の装着するロットAの購入履歴が H-01/H-02/H-03 経由で集中すること → 供給線の中枢が存在する。
配送・受取の時間帯(深夜)と受取方法(匿名転送→コンビニ受取等) → 匿名性の確保、非対面引取を好む行動パターン。
エンバーミングの為の設備・薬剤が確認される場所の消費ログと、受取拠点の地理的近接 → 購買→受取→保管・作業の一連動線が成立。
被害者の購入傾向(SNS指向・ファッション志向)と犯人の“視覚演出欲” → 被害者選定と供給線が機能している。
D. 確率評価
「H-01(東灘転送センター)」が供給線の最も重要なノードである確度:S
「S-01(倉庫)」が犯人の実作業拠点である確度:S
「被害者は通販→匿名転送経由で選定されている」確度:S
「犯人はネット経由でターゲットを選定し、作品化を行っている」確度:M〜S
E. 捜査上の優先アクション(蛇の目推奨:短期〜中期)
(1)即時(短期):H-01・H-02・H-03 の受取拠点について、捜査令状に基づく配送ログ・CCTV・受取者IDの開示を要求。特にH-01の深夜受取ログを優先取得。
(2)直近(短期):S-01(倉庫)について電力・水道使用履歴の差分(平常時との比較)を証拠として確保、近隣CCTVのフレーム回収。
(3)中期:貸し工房・貸家の会員名簿・契約書の照合(S-02、S-03)、過去の不審契約の突合。
(4)広報戦術(慎重):犯人の観測欲を計算に入れ、捜査が一定のプレッシャーを示すが、具体的手口や拠点を晒さない形での情報発信(被害者支援と警戒喚起)を検討。
(5)補助調査:被害者のSNSフォロー先、通販のカート遺跡、コメント履歴の深掘り。
UIが点滅し、最後の分析を弾き出した。
F.
「私は既に該当拠点と購入者群の重ね合わせを行い、上位候補リストを作成しました。次段階は、法的手続きを通じた正式なデータ取得と現地押収です。被疑者の確定に向け、配送ログと電力消費・CCTVのタイムライン照合を優先してください。私の次の出力では、(優先)H-01に紐づく受取者の行動時刻別クロスチャート、(優先)S-01倉庫の電力使用時系列と深夜アクセス者IDを提示します(確度推定付き)。」
吉羽:「H-01をまず抑える。あそこがキーね。」
渡辺:「倉庫へ直行だ。夜間の動きが怪しいってんなら、今度はこっちが監視網になる。」
片瀬:「データは出る。次の出力を待ってください。蛇の目と連携して、受取者の行動を秒単位で追います。」
慎一郎:「法務課と県警の物流担当と連絡を取れ。令状取得の要件を早急に整える。時間が勝負だ。」




