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ひとりごと

リヒトは青い桜のいた場所を訪れた。根こそぎ消えた、その尊き存在に想いを馳せる。


「ようやく、逝けたんだね」


いなくなった桜に彼は語りかける。無駄な行為とは分かっていたが、そうせずにはいられなかったのだ。


「僕は今日、お前のお陰で彼女に会えたよ。お前がその巨大でたくましい幹と枝で守ってくれなければ、星に見つかってしまっただろう」


彼は散らばった青き花びらを拾い上げる。


「弟は相変わらずだったなぁ。短絡的で、感情的で、全然成長していない。まぁ、それはそれであいつの良い所なんだけれど」


リヒトは失くしたはずの心が疼くのを感じた。両親や仲間を飲み込んだときから、自分の心はどこかにおいてきたと思ってきたのに。


「あいつの怒りはもっともだ。僕が全てを飲み込み、あいつから幸せを奪ってしまったんだから」


あの時、爆発したナオトの怒りを素直に受け止めることができたら、それはそれで良かったのに。


「そうすれば、お前のように安らかに逝けたのに」


リヒトは緩んだ自分の決意を再び戒める。心はここに置いていこう。そうでなければ、彼はすぐにでも星に飲み込まれるような気がしていた。


「リヒト様・・・」


背後にはチェキがいた。心配そうにリヒトの背中を見つめている。


「パーティはもうすぐ終わります」

「そうか。カオル達はもう帰ったのか?」

「はい」


チェキの返事を聞いて、リヒトは安堵の表情を浮かべ、腹の底に溜まっていた息を吐き出す。


「そう。よかった。あとは彼女が僕を信じて行動してくれればいいけど・・・」

「マリルが、きっと貴方に協力してくれますよ」

「あの時助けてやったんだから、借りを返してほしいよ」


そううそぶいて、リヒトはぼんやりと「あの時」のことを思い出す。

あの、自分がコアとして生まれたあの時のことを。


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