真実の愛
春のあたたかな陽射しが、リアネット公爵家の庭園を包んでいた。
マリア・リアネットは、庭のベンチで本を手にしながら、目の前の騎士――ルイス・エインズワース王子を見上げた。 2人は物心ついたころから「将来の結婚を約束された婚約者」だった。
ルイスがふいに片膝をつき、小さな手を差し出す。 「マリア、こちらへどうぞ。お花畑を案内するよ」 「ありがとう、ルイス殿下。でももう、そんなにかしこまらないで」 マリアがくすりと笑うと、ルイスは少し照れて頭をかく。
周囲には見守るリアネット公爵夫妻や侍女たち。
誰よりも仲良し、と噂される王子と公爵令嬢の姿は、屋敷の誰にとっても心和む風景になっていた。
「来年から学園だね。同じクラスになれると良いけど――」
「でも絶対、お昼も一緒だし、手紙だって書くもん!」
未来のことはまだ“ちょっとだけ”不安。けれど今は――
いつも隣に、特別な約束の相手がいる。それが何より心強かった。
――だったはずなのに――
「マリア・リアネット。今を持ってお前との婚約を破棄する。」
「ルイス様これで私たちは婚約できますね。」
突然の宣言に呆然としていたマリア。そこに学園に特待生として入学したキャサリンが来て勝ち誇るような笑みを浮かべた。
「そうだねキャサリン。聖女として大変なこともあるだろうけど、これからは僕が居るよ。」
「ええ。私も、頑張りますわ。」
2人が仲睦まじく会話する中、マリアだけが、その話についていけなかった。
「マリア。僕は真実の愛を見つけたんだ…だからお前とはもう居られない。それにキャサリンから聞いた話だけど、キャサリンを虐めているそうじゃないか。」
「時期にお前を、この国の尊き聖女を貶めようとした罪で公開処刑してやる」
「誰かこの悪人を連れて行け」
「誤解です。殿下、誓ってそのようなことはしておりません。殿下!もう一度お話しを.殿下!でん…」
ドアが閉まりマリアの真実は、誰にも理解されないまま、公開処刑が行われた…