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目を開くと、そこは異世界。


キラキラと輝く謁見の間の装飾が視界に入る。ケーニッヒはその眩さが時折嫌になり、柔らかくいい匂いのするところに顔を埋める。



…現在、彼は窮地に立たされていた。


いや、正確にはおそらく母親の腕の中で抱き抱えられていたわけだが、まあそれは今はいいだろう。


問題は…。


「け〜くん、どっちがいいかな〜?」


「ケーニッヒ様、どちらがいいでしょう?」


宰相が指し示した紙にはそれぞれ0と100の数字が描かれている。


これが何を示すのかというと…。


「どっちがいい?全員殺す?それとも生かしちゃう?」


可愛らしく、甘やかすような声でそんなことを告げられるケーニッヒ。


ここには彼女たちの他にも兵士たち、さらには今回そんな憂き目に遭うこととなった種族の代表者、銀髪、褐色肌の美女と美幼女2名がいた。


彼女たちはこの最凶最悪と名高い帝国で反乱を起こしたのだ。


いや、正確に言うならば、母親と思しき人物の姉である族長が…だが…。


それはいいとしよう。


問題はその処遇の選択方法である。


それがあまりにもテキトーだった。


それは端から見れば、かなり異常で恐怖心を煽るもの。なにせなにもわからぬ赤子にそれを委ねるというのだから。


ある意味運を天に任せるというやつに見えることだろう。


「「……。」」


女帝と、宰相のまるで服でも選ぶかのような選択を促すような声に固唾を呑んで成り行きを見守る2人。


…しかしながら、赤子とはいえ、ケーニッヒは転生者であり、要するに自我がはっきりとしていた。


つまり女帝たちが彼に促す行為というものは、ケーニッヒからすれば、自身が自覚した上での選択によって彼女たち一族の生死が決まるということであり、それは目覚めたばかりという現状において、あまりにも責任重大過ぎることだろう。


…これ…本当に僕が決めないといけないの…。


というのが、ケーニッヒの内心。


なんというタイミングで目覚めさせてくれているのだと、女神への恨み言の1つでも出てくるが、まったく自分の預かり知らぬところで…数百もの人物が無意識下で(物心つく前の決断によって)…消されたと聞かされるショックに比べればと思い、判断を下そうとするのだが…。


「や〜。」


とやはり無理だと決定することを拒否しようとするケーニッヒ。


「どうしたの?まんま、まんまが欲しいの?」


しかしながら、彼のそんな反応もご飯かと勘違いされるのみ。


ぐ〜ぐ〜ぐ〜。


「あらあら?お眠なの?」


「どうやらそのようですね。では、もう少し待ちましょう。」


「「……。」」


…寝たふりなんてことをしても、事態はまるで動かないどころか、じりじりと代表者2名の精神が追い詰められる結果となるだけだった。


ケーニッヒは仕方がないと、「だ!」と選択した。


その選択というのは…。


「…空間?」


そう、なにもないところを指し示すのだ。こうすれば、流石に自分が選択したという負い目とあるまい。


今回はこれで勘弁してほしい。なにせ情報も禄にない中、そんな人の生き死にの選択などできないのだからという、ケーニッヒの思い。


すると、宰相は興味深げに頷いた。


「…ふむ、なるほど…そういうことですか…流石ケーニッヒ様、ご慧眼お見事です。」


「どういうことかしら?」


「ケーニッヒ様が指し示されたのは、ちょうど0から100の70あたりのところ。つまりは7割は生かし、3割は殺せ。ということでしょう。この部族の反乱分子の割合はちょうど3割。つまり…。」


「つまりけ〜くんはそれをピタリと当て、その上で残りの者たちに慈悲を与えたということか?や〜ん、け〜くん、天才♪」


「…つ、つまりは私たちは…。」


「ああ、おったのか?そういうことじゃ、ケーニッヒに感謝するとよい。」


「「ハハッ!」」



それ以来、ケーニッヒはこのままでは絶対にやらかすと思ったのか、政治のことをそれなりに学ぶことになる。と結ばれると思っていたのだが、女帝が彼女たちを引き止めた。


「あっ、ちょっと待ちなさい。それはあなたの娘?」


「…は、はい…。」


「その子をけ〜くんのお世話係にします。置いていきなさい。」


「あだ…。(なに…。)」


「あら?ケーニッヒ様?どうかなさいまして?」


えっ…あの…えっ…?

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