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「ハァハァハァ…。」


「ハァハァハァ…。」


「ハァハァハァ…。」


ハァハァハァハァハァハァ……。


チュンチュンという鳥のさえずりが聴こえてきそうな、空気の澄んだ朝の目覚め。


そんな中聴こえてきたのは、このようなメ…女性たちの発情したような吐息。


僕こと、ケーニッヒ・シルドバーダ。このシルドバーダ帝国第一王子がマナーとばかりに、「んっ…んん~っ。」と、目覚める素振りをすると、蜘蛛の子を散らすように頭上や耳元から、熱の籠もった吐息たちが霧散する。


ケーニッヒは目元を擦りながら、身を起こす。すると、この城のメイドたちが一糸乱れぬ仕草で挨拶をしてくれた。


「「「おはようございます、殿下!」」」


この先ほどとは打って変わった様子に、正直、苦笑が漏れ出そうになるが、それはマナー。


ケーニッヒは笑顔を作ると、優しく微笑みかける。


「おはようございます、皆さん。今日もよろしくお願いしますね。」


ビクン!


「「「……ひゃ、ひゃい…♪」」」


「……。」


…えっ…今何か……いやいやいや、マナー。マナー。


それからケーニッヒがベッドから出るなり、身なりを整えるためにと、彼女たちがセクハラまがい…いや、完全に通報レベルのセクハラをしつつ、身体を拭き、服を着せてくれる。


…具体的に言うならば、ある者は手際よく職人並みのスピードで服を脱がせるなり、その衣服に鼻を当てスーっとまるでヤクでも決めるかのようにして、恍惚とした表情を浮かべビクンビクンしたり…。


また、ある者は濡れた布で汗を拭きながら、胸元やお尻、さらには男性の急所にまで狙いを定め、流石にそこは…と、ケーニッヒは布を奪い取ると、素早くそこを拭き、それをどうするか迷っていた。


すると、最後のもう1人が、まるで王によって騎士に任じられ、短剣でも受け取るかのを待つかのように片膝をつき、両手を差し出してきているので、恐る恐るそれをそこに乗せた。


「ご褒美感謝……いえ、それでは私はこれで。2人とも、そろそろ殿下にお召し物を…。お風邪を召しては大変です。では…。」


そうして、1人が流れるような仕草で全ての服を抱え、逃走。すると…。


「……(さっさと服を着せてヤツを追いましょう)。」


「……(ええ、そうね)。」


顔を合わせた2人はこれまた数秒と経たずにケーニッヒに服を着せると、「「失礼します!」」と一礼して、ドアを閉め…。


ドタタタタッ!!


「……。」


ドアが閉まり切る前に瞬神の如く上司であろうメイドを追いかけ走り出す者など見えなかった。


うん、見えなかった。見えなかった。


「……。」


……。


「……。」


……チュンチュン。


「…ああ…なんて最悪な目覚めなんだろうね…。」


ケーニッヒは両手で顔を覆い、しばらくそのままでいると…。


コンコンコン。


…どうやら他のメイド(あの一幕もまた予定に組み込まれているため)がやって来たらしいので、最後に「はあ〜〜……。」と大きく溜め息を吐き、顔を上げ、軽く両頬を叩き気合いを入れた。


……よし!!今日も頑張るぞ!!


「…どうぞ。」


これが転生者ケーニッヒ(肉体年齢10歳、精神年齢プラス17歳)の日常的な朝の始まりである。


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