道程
思い立ったが吉日。
良い日旅立ち♪と、そらで謡いながら扉を開けた。
あれ?
扉を開けたら、そこは鬱蒼とした樹々が茂った森の中でした。
ふむ…。
一旦扉を閉めてから。
…
…また開けた。
…
ああ…変わらないね。
僕の拙い記憶では、僕の家は広場に面して、あちらこちらに店や住居があったはずなのに。
…森と化していた。
既に村としての体裁は成していない。
…廃墟だ。
いや、村全体だから、廃村であるな。
いまやこの村に、生きて住んでいたのは、僕だけだった事実。
ちょっとショックで、両拳を握り締めてた。
…振り向けば、僕の家も幾重の蔦や繁った緑の葉に覆われている。
…あらら。
郵便屋さんも、よくも配達先が分かったものだと感心する。
流石、プロフェッショナルは一味違う。
500年ばかし趣味の鍛治に没頭するあまり、村が一つ滅んだことに気がつかなかった。
…
…
…
うん…これって、たしか、ハイエルフあるあるですね。
僕より年長のハイエルフに、この類いの話しは聞いたことがある…自ら体験するは、2回目かも。
一瞬、廃村に驚きに目を丸くするも、さして珍しくないことに気づく。
そう、これまでも、これからも…
比較的緑が空いているラインが道であると仮定して、植っている植物を掻き分けて進んでみた。
掻き分けるだけでは、ままならないので、鉈を出す。
こりゃ、山を降りて、開けた場所に行くまでが一苦労しそう。
当然に、苦労に対する単純な心の反射…不平不満が付き纏う。
この僕が、この様に苦労してるのは、いったい誰のせい?
500年たとうが、精神的に成熟してるとは限らない。
逆に執念深さが増してるようだ。
緑は、観る分には良いが直近に立ち塞がるが如くあると、この上なく鬱陶しい。
植物をラッセルするが如くに掻き分け押さえ付けて鉈を振り回して倒していく。
体力と精神力がみるみる消耗していく。
因みに、僕には植物に対する罪悪感はない。
コイツらは、ゾンビなみに不死身のタフネスをほこっている…侮って痛い目をみるのはコチラですから。
容赦なく切り裂いていく。
…額から汗が滴り落ちたり。
自然とは、癒しではない。
自然とは、厳しさの象徴であり、克服して生き残るための山や壁であるから。
…
麓の町まで、出るのに半日掛かった。




