手紙と旅立ち
設定は、意識朦朧としながら、夢みたお話。だから短編で終わる予定…多分。最初の評価ありがとう。
手紙にしたためてあった内容は、さる高官の息子が、故事に因んで、ワルプルブスの刃を使い、ローストビーフを切り分けて食べたところ食中毒をおこし、生死の境を彷徨っているとかで、刃の持ち主宛に抗議が来たらしい。
ところが、このワルプルブスの刃の所有者がハッキリしない…なにしろ、イーハトーボは所有を放棄した言動をしているが、当の本人も目撃者も既に雲の上。ならば会談場所を提供し、刃をそのままにしているワルプルブス荘なのか?高官の権力を恐れた荘の主は、お客様が置き忘れていっただけと抗議をかわし、ならばワルプルブス市政府であるのか?政府は、この件に一切関知しないという。こうして抗議の鉾先が周り回って、イーハトーボが所属していたハイエルフ村の連合政府に回ってきたと言うわけだ。
…
なんて…実にくだらない事案だ。
イーハトーボは、僕の甥。
その刃は、僕が創ったものです。
…
…僕がなんとかするしかないのか。
やらねばならないのか…いやでござるな…でもしなければならぬのか…面倒であるな…いやだな…やめるか….やめてもよいよね…やめちゃう?
外出着に袖を通しながら、気分は晴れず、実に行く気になれない。
皆が避けた事案解決に行くのだから、僕は正義の味方だったのか?
…それとも英雄か?
ふむ…正義の味方とは、出立する際、皆、このような心持ちであるのか…??
実に暗澹たる心持ちです。
ならば、イーハトーボよ、僕には、とても英雄は務まらないよ。
職業としては、あまり上等とは言えないし、どちらかと言うと忌避したい職種である。
この役割りは、僕には向かない。
…僕には向かない。
…僕には向かない。
念仏のように、天を仰ぎながら、繰り返し心中で唱えるが、事態は変わらなかった。
…残念。
僕としては、やりたくないことを、天にアピールしたつもりだが、我が創造主殿には上手く伝わらなかったらしい。
…
僕は、神や創造主は存在してると思っている。
でなければ、おかしいと思える箇所がチラホラと世界のアチコチに存在しているから。
だから、今のは存在の証明のお試しであります。
僕に物語の主人公は、務まらないし、なる気もない表明でありますれば。
自己の意志を明らかにするのだ。
だが、現実に事案の始末はつけねばならないなぁ。
…面倒くさい。
外履きのズボンを履き、装備品を身に付ける。
実は、手紙の内容を読んでみて、僕が一番適任であるとは分かっている。
たが、世の中には適任者じゃなくとも、なんとかなることなど、ままあるし、この様なくだらなき事案な無視しても良い類いのものであるのは明白。
だが、僕が無視すれば、弱い所に責任の所在が回り、誰かが詰腹を切らされるに違いないと思う。
それは、寝覚めが悪い。
やれやれ…些か人社会に精通し過ぎて、人の悪辣な習性を熟知し過ぎた。
昔、使っていたバックパックを物置きから引っ張り出して、中身を確認して、いくつか入れ替える。
最後にガス、電気、戸締りを確認し、この事案が、僕の趣味の鍛治を妨げた事実を心に留め置く。
…
こうして僕は、数百年ぶりの引きこもりに終止符をうった。




