剣匠は語る⑤
鍛治師殿への自宅への道のりは、容赦なく切り裂かれ倒された樹木から、ハッキリと足跡が残されていた。
だが帰らずの森の植物群の生命力は強い。
一ヵ月もすれば、この即席の道は森に呑まれてしまうはずだ。
政治的に鍛治師殿との繋がりは、我が領の生命線と言えよう。
少なくとも外交的には、懇意であると看做されている。
わたしは優先順位を履き違えることはない男だ。
領主として、500年ぶりの繋がりを途絶えさせてはならない。
そこでわたしは領の内外から人員を募り、鍛治師殿への自宅への道を突貫で造成した。
そのために都市の銀行屋から金を借り、仮の宿や食事処を造成し、無法者達を束ね職を斡旋する新たなギルドを立ち上げまでした。
以降、職の斡旋料で稼ぎ、銀行屋に借金を返して行く所存である。
帰らずの森に帰ってしまった気難しいハイエルフへの再訪。
…難しい課題だ。
考えた末に、手土産に幼馴染みの料理人を連れていくことにした。
その話をした時、幼馴染みは露骨に嫌な顔をしたが、領主として領民の為の施策の一環であるを説明し、正規の仕事として依頼し、最後は幼馴染みの苦境を助ける気はないのかとしつこくお願いして、ようやく渋々ながら頷いてくれた。
幼い子供の頃からの付き合い長いのに、なんて友達甲斐のないヤツだ。
まあ、わたしの領主の権威なんて、こんなもんだ。
我が領土は、帰らずの森を含めれば、大陸の数ある大国に匹敵するほどの大きさになるが、実質は港町一つとその周辺の寂れた村々とそこを囲む小さな山々だけの小領に過ぎない。
帰らずの森が、我が領土と他領から認められてるのは、森が使い道のない魔領であり、500年前に他領の干渉を嫌った鍛治師殿が、力無い小領主を窓口にしようとして、勝手に、森は港町の領内であると思うと微妙な言い回しで宣言した結果だ。
こういう宣言は内実は関係ない。
権威と実力を兼ね備えた鍛治師殿から言われたことが重要なのだ。
お陰様で広さだけなら、地図の上では他国の大国と遜色ない広さで記載されている。
伝説と化している鍛治師殿が、人類の歴史に現れたのは今回で二度目。
自称歴史家であるわたしとしては、是非鍛治師殿と仲良くしておきたい。
そしてこれは領主としてもかなった行動であると思う。
わたしは道が完成した翌日、準備を整えて鍛治師殿のお宅へと訪問したのだ。




