ワルプルブスの刃
騎士アルゴが、連合政府からの特命を受けたのは、アルゴが一振りの短剣を打ち終わった時だった。
うん…なかなか良い剣だ。
打ち終わった短剣を頭上に掲げ、この僕もなかなか捨てたものではないな…と悦に浸りながらニヤニヤとしてた時、郵便屋から連合政府の蝋印で封印された手紙を受け取った。
アルゴが手紙を受け取った途端に、郵便書留の魔法が発動して、半透明な小鳥となり、空を駆け抜けていった。
あの魔力で作られた小鳥は、手紙の送り主の元へ、手紙が送り先に無事届いたことを知らせに行ったのだ。
アルゴは、その光景と連合政府の蝋印を見て、ぬかった…と思った。
どうせ、政府からの、よからぬ用件に違いない。
元老院の糞暇な爺いどもは、自ら動くことはせず、直ぐに人に火中の栗を拾わせようとする。
次回からは、送り主を確認してから、受け取ることにしようと心に決める。
アルゴは、手紙を見ずにこのまま、炉に焚べてしまおうかとも考えたが、書留の魔法が発動してしまったからには、どうにも言い逃れが出来ないに違いない。
まるで、こちらの行動を見透かされてるようで、面白くはないが、観念して手紙の封を開ける。
ふむふむ…なるほど…。
読み進めるほどに、くだらなき案件だと分かる。
だが、ある一点において、アルゴに関係があった。
甥のイーハトーボの刃が火中の栗であること。
そして、当の本人は既にヴァルハラへ旅立ち、その刃は、アルゴが打ちて、村から旅立つ奇特な甥に生前、贈ったものだった。
ああ…なんてことだ。
村を出立するたった一人の甥に、守り刀となるように刃を贈って、数百年経ってから、この様な事態になるとは…長生きなどするものではない。
やれやれ、イーハトーボよ、やはり村外に出るものではないぞ…碌なことがない。
アルゴは引きこもり体質のハイエルフの中でも生粋の引きこもり、ここ数百年は趣味の鍛治ばかりかまけて、部屋から出たこともないほど。
ハイエルフは、空気中から森林の精気を吸収すれば、死ぬことはない。生活の糧に働く必要はないのだ。
以前は、姉の一人形見である甥のイーハトーボを育てるために、いろいろと入用であったが、今はそんなこともない。
そんな甥も、数百年前に故郷を旅立ち、二度と帰ることはなかった。
僕の甥は、数百年前に起こりし、世界大戦を終息せしめた大英雄の一人として名を馳せた。
だが、その後、…故郷に帰ることはなかった。
だから、言っただろうに、イーハトーボよ。
人世界にかまけても碌なことにならないと。
…イーハトーボとは僕が名付けた。
以前、読んだ超古代人の遺跡から発掘された童話から、平和の象徴を感じて、そう名付けたのだ。
結果、甥は世界に平和をもたらした。
… … …
出立の朝、普通に、行ってきますと言って旅立った甥の顔も、今では記憶が薄れてしまっている。
もう、数百年すれば、きっと忘れてしまうだろう。
時の流れを旅するハイエルフにも儘ならぬことはある。




