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灰の預言者  作者: 吉越 晶
第4章
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22節 フラム・バルバルス・レックス

更新遅れてすみません。

今日からまた、更新時間不定期になります。


なるべく毎日、21時ごろにあげれるようしますので、よろしくお願いします。

「……お」


 空を飛ぶ1人の男を視界に入れて、スキンヘッドの男は反応する。


「どうやら向こうは決着がついたらしいな。兄さんとやらとはしっかり話せたんかね?」


 振り向き、男は自分の相手を、フラムの方を見る。


「……まあ、決着という意味では、こっちもおなじようなもんか」


 男の視線の先。そこには、傷だらけで力なく壁にもたれるフラムの姿が、痛々しく映る。


「それで、どうするの?」


 フラムの背後から、正面に立つスキンヘッドの男と同じ容姿の男が現れる。


「このまま死ぬか。それとも、俺らと一緒に来るか」

「……」

「ーーー無視すんなよ」


 そして、詰めるようにフラムへと顔を近づける、少女(フラム)と瓜二つの姿をした赤髪の少女。


「また一緒にやろうぜ〜。()()()()()()

「……」


 笑う少女の言葉。

 現状を逃避するように薄れる意識の中で、フラムは、()()()()()()


 これまで歩んできた、自分の道をーーー。


ーーーーーーーーーーーーーーー


 生まれのことは知らん。

 ただ、奪わないと生きていけなかったことだけ覚えてる。


 だから、奪ったんだ。生きるために。

 必死に毎日を生きて、魔法はなんか知らんけど使えるようになってて、とにかく戦って勝つことが、アタシの全部だった。


 それ以外に、一々構っていられなかった。


「なるほど。まるで、昔の自分を見ているようですね」


 ある時、よく知らん奴らが目の前に現れた。


「末恐ろしい才能……確かに、戦力になる」


 気に入らなかったから、そいつらからも奪うことにした。


「隊長。俺がやろうか?」

「いいえ、私1人で十分です」


 そんで、負けた。ボコボコにされた。


「……さて、やっと落ち着いたようですし、提案です。貴方、私たちの組織に入りませんか?」

「……何言ってんだ……お前……」

「そのままの意味です」

「……分かんない」

「……」


 負けたアタシを、そいつらはどこかに連れて行った。

 そんでそこは、今までのどこよりも良い場所だった。


 腹が減ればいつでも飯を食えるし、向かってくる奴を倒しても、誰も怒鳴ったり文句を言ったりしなかったし、何なら全員笑ってたし。


「そういえば貴方、名前は何と言うのですか?」

「知らん」

「無いのですか?」

「考えたこともねーや」

「……」


 ただ本当のことを言っただけなのに、そいつは何だかすごい悲しそうな顔してて、変な奴、なんて思ったりした。


「……貴方の綺麗な赤髪……それに、見る人を眩しく照らす魔力……“炎”……」

「?」

「………“フラム”。それが、今日から貴方の名前です」


 多分、初めてだったと思う。

 負けたのに、何も奪われなかったのは。


 負けたのに、何かを与えられたのは。


 他の奴らは皆嫌いだけど、その人だけは、好きになった。


 そんで、思ったんだ。

 アタシは、その人の、隊長のために生きようって。


「“フラム”。今日の任務、頑張ってね」

「ああ!隊長が自慢できるような結果出すよ!」


 言われたことはぜんぶやった。隊長が、喜んでくれるから。


「洗礼名?」

「はい。正式に『聖天騎団』に入ることになったので、式たりとして決めないとダメなんです」

「めんどくせー」

「難しく考えなくて良いんですよ。フラムの尊敬している人や、なければ天使の名前などから拝借すれば良いんです」

「じゃあ隊長の名前にする!」

「え」

「アタシ隊長のこと一番尊敬してるし!」

「……ありがとうございます」


 照れた顔も好きだった。自分の言葉で喜んでくれるのが、すごく嬉しかった。

 

「隊長!あいつが帰ってきてるよ!隊長がよく話してる人!」

「ーーーえ!?いや、ていうか、何でそれを私に!?」


 なんかあったら全部隊長に伝えた。その時に見える隊長の色んな顔が、見てて嬉しかったから。


「隊長?」

「……ああ……“フラム”」

「どうした?何か嫌なことあったのか?」

「……いいえ。大丈夫です」

「……」


 隊長の悲しい顔は見たくなかった。見たら自分まで、苦しくなったから。


「“フラム”。シュリアム様からの大事な任務です。1ヶ月ほど、教皇様護衛の任務についてくれませんか?」

「えーやだ」

「何故です?」

「だって隊長と会えなくなるじゃん」

「……フラム。これは、非常に重要な任務なんですよ?」

「え〜でも教皇って偉い奴だろ?偉い奴は弱いから、そいつのおもりとか嫌だよ〜」

「あら、教皇様はとても強いですよ?」

「え?隊長より??」

「はい。仮にフラムが協力してくれても、勝てないと思います」

「えー!?そんなに!?」

「はい。そんなにです」


 興味が出た。アタシが尊敬する人でも勝てない奴が、どんなすごい奴なのか。


「……隊長は、アタシがいなくなって寂しく無い?」

「……寂しいですよ。でも、それ以上に活躍してくれるのは、他に変え難いほどに嬉しいことです」

「……!じゃあ行くよ!アタシ!」

「頑張ってくださいね」

「うん!!」


 それで、アタシは教皇の、ヤコブとか言う奴の護衛についた。

 セクアとかいうメガネかけてる気に食わない奴もいたけど、まあヤコブが強いって言うのなら我慢する気にもなった。


 ーーーでも


「ーーー僕が、貴方を助けます」


 最初の国に行った時に、倒すべき敵に対してヤコブの言った言葉は、訳がわからなかった。


 誰よりも強くて、何でも思い通りになる力があるのに、何でかいつも複雑な顔をしていて、それがアタシには、すごく気持ち悪かった。


「君は、この光景を見て、本当に何も思わないのか?」


 最初の国を救った後、メガネがそんなことを聞いてきた。


「……別に」


 思う訳がない。

 だって、あいつらは弱かったから負けたんだ。それ以上も以下もない。


 だけどその時から、やけに周りのことが気になるようになった。


 今までは無視してたことが、やたらと視界に入るようになった。


 道端にある植物やアリ。森で暮らす動植物たち。町の景色やそこで暮らす人々の暮らし。


 全部が、新鮮に感じた。


 それが心地よくて、何だかすごい楽しくて、アタシは毎日が充実してて良かった。


「………」


 ……そんで、同時に怖くもなった。

 昔の、力を振るって、負ける奴が悪いと、弱い奴に、ただひたすら理不尽に、力を使っていた自分が。


「ーーービビったんだろ!」


 ハゲに言われた言葉。

 ドキッとした。その言葉が、あまりにも的確に感じて。


()()()()()()!」


 分かってた。自分が、弱い奴に対してだけ厳しくしてたことを。


 でも、最近は変わってたんだ。弱いやつにも弱い奴なりの暮らしがあって、そこを否定するのは良くないって。


「ーーーなあ、アタシって変わったかな?」

「僕は、フラムのこと好きですよ」


 不安だったから、前の国で、あんな弱音を吐いた。

 ヤコブなら、肯定してくれるって分かってたから。その優しさに、漬け込んだんだ。


「ーーーなあ、知ってるか?」


 戦いの最中、ハゲ頭が話しかけてきた。


「お前らの親玉はさ、()()()()を持ってるんだよ」


 知ってる。そんなこと。


「魔力を分け与えた相手の感情を、優しく、柔らかくする力。洗脳のような、相手の価値観を変えてしまう恐ろしい力」


 でも、目を背けたんだ。


「つまりお前は、自分で変わったんじゃない。ラースの兄貴の魔力で、弱いものいじめが嫌と感じるように、()()()()()だけなんだ。お前の底の部分は、()()()()()()()()


 ……ああ。分かってたよ。でも、認めたくなかった……。


 だって、それを受け入れてしまったら、結局アタシは、何も変わってない、嫌いだった、半端者ってことになるじゃん。


 でも、やっぱり目を逸らすことはできないんだな。


 ……少しだけ、弱い奴の気持ちが分かったよ。


読んでいただきありがとうございます。

面白いと感じて頂けたら、ブクマ、感想、評価の方よろしくお願いします。


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