22節 フラム・バルバルス・レックス
更新遅れてすみません。
今日からまた、更新時間不定期になります。
なるべく毎日、21時ごろにあげれるようしますので、よろしくお願いします。
「……お」
空を飛ぶ1人の男を視界に入れて、スキンヘッドの男は反応する。
「どうやら向こうは決着がついたらしいな。兄さんとやらとはしっかり話せたんかね?」
振り向き、男は自分の相手を、フラムの方を見る。
「……まあ、決着という意味では、こっちもおなじようなもんか」
男の視線の先。そこには、傷だらけで力なく壁にもたれるフラムの姿が、痛々しく映る。
「それで、どうするの?」
フラムの背後から、正面に立つスキンヘッドの男と同じ容姿の男が現れる。
「このまま死ぬか。それとも、俺らと一緒に来るか」
「……」
「ーーー無視すんなよ」
そして、詰めるようにフラムへと顔を近づける、少女と瓜二つの姿をした赤髪の少女。
「また一緒にやろうぜ〜。弱い者いじめ」
「……」
笑う少女の言葉。
現状を逃避するように薄れる意識の中で、フラムは、なぞっていた。
これまで歩んできた、自分の道をーーー。
ーーーーーーーーーーーーーーー
生まれのことは知らん。
ただ、奪わないと生きていけなかったことだけ覚えてる。
だから、奪ったんだ。生きるために。
必死に毎日を生きて、魔法はなんか知らんけど使えるようになってて、とにかく戦って勝つことが、アタシの全部だった。
それ以外に、一々構っていられなかった。
「なるほど。まるで、昔の自分を見ているようですね」
ある時、よく知らん奴らが目の前に現れた。
「末恐ろしい才能……確かに、戦力になる」
気に入らなかったから、そいつらからも奪うことにした。
「隊長。俺がやろうか?」
「いいえ、私1人で十分です」
そんで、負けた。ボコボコにされた。
「……さて、やっと落ち着いたようですし、提案です。貴方、私たちの組織に入りませんか?」
「……何言ってんだ……お前……」
「そのままの意味です」
「……分かんない」
「……」
負けたアタシを、そいつらはどこかに連れて行った。
そんでそこは、今までのどこよりも良い場所だった。
腹が減ればいつでも飯を食えるし、向かってくる奴を倒しても、誰も怒鳴ったり文句を言ったりしなかったし、何なら全員笑ってたし。
「そういえば貴方、名前は何と言うのですか?」
「知らん」
「無いのですか?」
「考えたこともねーや」
「……」
ただ本当のことを言っただけなのに、そいつは何だかすごい悲しそうな顔してて、変な奴、なんて思ったりした。
「……貴方の綺麗な赤髪……それに、見る人を眩しく照らす魔力……“炎”……」
「?」
「………“フラム”。それが、今日から貴方の名前です」
多分、初めてだったと思う。
負けたのに、何も奪われなかったのは。
負けたのに、何かを与えられたのは。
他の奴らは皆嫌いだけど、その人だけは、好きになった。
そんで、思ったんだ。
アタシは、その人の、隊長のために生きようって。
「“フラム”。今日の任務、頑張ってね」
「ああ!隊長が自慢できるような結果出すよ!」
言われたことはぜんぶやった。隊長が、喜んでくれるから。
「洗礼名?」
「はい。正式に『聖天騎団』に入ることになったので、式たりとして決めないとダメなんです」
「めんどくせー」
「難しく考えなくて良いんですよ。フラムの尊敬している人や、なければ天使の名前などから拝借すれば良いんです」
「じゃあ隊長の名前にする!」
「え」
「アタシ隊長のこと一番尊敬してるし!」
「……ありがとうございます」
照れた顔も好きだった。自分の言葉で喜んでくれるのが、すごく嬉しかった。
「隊長!あいつが帰ってきてるよ!隊長がよく話してる人!」
「ーーーえ!?いや、ていうか、何でそれを私に!?」
なんかあったら全部隊長に伝えた。その時に見える隊長の色んな顔が、見てて嬉しかったから。
「隊長?」
「……ああ……“フラム”」
「どうした?何か嫌なことあったのか?」
「……いいえ。大丈夫です」
「……」
隊長の悲しい顔は見たくなかった。見たら自分まで、苦しくなったから。
「“フラム”。シュリアム様からの大事な任務です。1ヶ月ほど、教皇様護衛の任務についてくれませんか?」
「えーやだ」
「何故です?」
「だって隊長と会えなくなるじゃん」
「……フラム。これは、非常に重要な任務なんですよ?」
「え〜でも教皇って偉い奴だろ?偉い奴は弱いから、そいつのおもりとか嫌だよ〜」
「あら、教皇様はとても強いですよ?」
「え?隊長より??」
「はい。仮にフラムが協力してくれても、勝てないと思います」
「えー!?そんなに!?」
「はい。そんなにです」
興味が出た。アタシが尊敬する人でも勝てない奴が、どんなすごい奴なのか。
「……隊長は、アタシがいなくなって寂しく無い?」
「……寂しいですよ。でも、それ以上に活躍してくれるのは、他に変え難いほどに嬉しいことです」
「……!じゃあ行くよ!アタシ!」
「頑張ってくださいね」
「うん!!」
それで、アタシは教皇の、ヤコブとか言う奴の護衛についた。
セクアとかいうメガネかけてる気に食わない奴もいたけど、まあヤコブが強いって言うのなら我慢する気にもなった。
ーーーでも
「ーーー僕が、貴方を助けます」
最初の国に行った時に、倒すべき敵に対してヤコブの言った言葉は、訳がわからなかった。
誰よりも強くて、何でも思い通りになる力があるのに、何でかいつも複雑な顔をしていて、それがアタシには、すごく気持ち悪かった。
「君は、この光景を見て、本当に何も思わないのか?」
最初の国を救った後、メガネがそんなことを聞いてきた。
「……別に」
思う訳がない。
だって、あいつらは弱かったから負けたんだ。それ以上も以下もない。
だけどその時から、やけに周りのことが気になるようになった。
今までは無視してたことが、やたらと視界に入るようになった。
道端にある植物やアリ。森で暮らす動植物たち。町の景色やそこで暮らす人々の暮らし。
全部が、新鮮に感じた。
それが心地よくて、何だかすごい楽しくて、アタシは毎日が充実してて良かった。
「………」
……そんで、同時に怖くもなった。
昔の、力を振るって、負ける奴が悪いと、弱い奴に、ただひたすら理不尽に、力を使っていた自分が。
「ーーービビったんだろ!」
ハゲに言われた言葉。
ドキッとした。その言葉が、あまりにも的確に感じて。
「弱い者いじめ!」
分かってた。自分が、弱い奴に対してだけ厳しくしてたことを。
でも、最近は変わってたんだ。弱いやつにも弱い奴なりの暮らしがあって、そこを否定するのは良くないって。
「ーーーなあ、アタシって変わったかな?」
「僕は、フラムのこと好きですよ」
不安だったから、前の国で、あんな弱音を吐いた。
ヤコブなら、肯定してくれるって分かってたから。その優しさに、漬け込んだんだ。
「ーーーなあ、知ってるか?」
戦いの最中、ハゲ頭が話しかけてきた。
「お前らの親玉はさ、特別な力を持ってるんだよ」
知ってる。そんなこと。
「魔力を分け与えた相手の感情を、優しく、柔らかくする力。洗脳のような、相手の価値観を変えてしまう恐ろしい力」
でも、目を背けたんだ。
「つまりお前は、自分で変わったんじゃない。ラースの兄貴の魔力で、弱いものいじめが嫌と感じるように、変えられただけなんだ。お前の底の部分は、何も変わってない」
……ああ。分かってたよ。でも、認めたくなかった……。
だって、それを受け入れてしまったら、結局アタシは、何も変わってない、嫌いだった、半端者ってことになるじゃん。
でも、やっぱり目を逸らすことはできないんだな。
……少しだけ、弱い奴の気持ちが分かったよ。
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