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灰の預言者  作者: 吉越 晶
第4章
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6節 再開

 ヨハネスブルク支部を発った翌日。

 ヤコブたちは、再び英雄探しの旅に戻り、新たな『国』に到着した。


 そこは、ヨハネスブルク支部より北東の山奥に存在する場所。

 例に漏れず、その国もまた、『村』と呼んだ方が適切であろう規模の場所だった。


「なんか久々に感じるな」

「そうですね」


 その国の前で、ヤコブとフラムは中の様子を伺う様に立っていた。


 ローマ支部を出発してからはや2週間。

 最初に訪れた国を始めとして、幾つかの国を回り、見てきたヤコブにとっては、その中へと足を踏み込むのはやはり簡単なものではない。


 殆どの国が閉鎖的で、そしてその日を生きるのに精一杯だ。他所の人間を迎えるほどの余裕が無いのは、今の世界においては、どの国にも共通している。


 何よりヨハネスブルク支部で1週間ほど滞在していたのが、少しずつその現状に慣れてきていた感覚をリセットし、ハードルを初期の頃に戻してしまった。


 加えてアルカディアは外の国に嫌われている。

 今のヤコブは、そのことを初期の頃以上に重く受け止めていた。


 ヤコブの感じる緊張がどう言うものか、想像するのは容易だ。


「じゃ、行きますか」


 そんなヤコブの悩みなど笑うかの様に、フラムは中へと足を進める。

 その肝っ玉のデカさに感動すると同時に、また励まされるのは、もはや言うまでも無い。


「セクア、ローサ、私たちも行きましょう」

「うん!」

「……はい」


 少し離れた場所で待機していた2人にも声をかけ、ヤコブたちもフラムの後に続いた。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「おー!旅のお方ですか!どうぞどうぞ、ごゆっくりしていってください!!」

「………」


 国に入って開口一番、明るく自分たちを歓迎するその様子に、ヤコブは思わず呆気にとられる。

 入るのに躊躇っていたのは何だったのだろうか。


「なんだ、良い奴らだな」

「ええ……意外です。嘘をついているわけでも無い様ですし」


 実際、ここに住む人々は全員が笑顔に溢れ、和気藹々とした空気を作っている。

 そして生まれながらの性質、他者の感情が読み取れるヤコブだからこそ、嘘偽りの無い彼らの歓迎の気持ちに驚きを隠せない。


 するとふと、セクアが口を開く。


「……ここは中々に充実しています。自然豊かですし、小規模ながら農業や畜産もできています。狩りで使われるような道具も見受けられますし、自給自足の生活ができているのでしょう」

「確かに……今まで見てきたどの国よりも豊かな暮らしをしていますね」


 手製の弓や石槍、中には果実などを天日干ししている様子も見受けられる。

 文明レベルで言えば、よほど国などとは呼べないような場所ではあるが、しかしこうした自然の恵みを利用した生活は、見る者に少しばかりの安らぎを施す。


 ここはまさに、今の荒廃した世界に浮かぶ、砂漠のオアシスのような場所なのだ。


「にしてもここはすげー楽しそうだな!」

「うん!楽しそう!」


 好奇心の強い子供にとっては、特にこういった場所は、テーマパークの様な場所にも映るだろう。

 それを証拠に、先ほどからフラムとローサは目を輝かしている。


「ではそろそろ、ここの人たちに聞き込みを始めましょうか」

「よし来た!」


 言われて真っ先に、フラムが飛び出していく。

 本来の目的である“英雄探し”を忘れている様な気もするが、しかし純粋なフラムの行動は、それをどこか許せてしまうほどに微笑ましい。


「ねえ……」

「?」


 声をかけられ、ふと振り向く。

 かけてきたのは、先ほどまでフラムと一緒に目を輝かせていた少女ーーーローサだ。


「どうしましたか?」

「うん。そう言えば、ヤコブたちはなんで旅をしてるのかな?って思って」


 言われて気づく。ヤコブはまだ、ローサにこの旅がどういったものかをちゃんと説明していない。


「えーと……簡単に言うと“人探し”をしているんです」

「ひとさがし?」

「はい。……とは言っても、どんな人か分からないんですけどね」

「だから聞き込みなんだ!」

「はい。そう言うことです」

「じゃあ私も手伝うよ!」

「え」

「だって、それがヤコブの旅の目的なんでしょ?だったら手伝う!」


 とても純粋で、それでいて真っ直ぐな少女の言葉。

 他者の感情が読めるヤコブの目を、その光はどこまでも照らし、ヤコブも笑顔で応える。


「ええ、お願いします」

「うん!じゃあ、その探してる人の特徴教えて!」

「ええと……特別な力を持ってる……とか?」

「ヤコブみたいな?」

「そうですね」

「分かった!じゃあ行ってくるね!」

「はい。気をつけて」


 手を振り、ローサもまたフラムに続いてかけていく。


「……さて、じゃあセクア。僕たちも行きましょうーーー」


 見れば、すでにセクアは聞き込みを開始していた。


「……僕が一番最後か」


 呟き、進めるその足は、しかしどこか嬉々としたものを孕んでいた。


読んでいただきありがとうございます。

面白いと感じて頂けたら、ブクマ、感想、評価の方よろしくお願いします。


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