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灰の預言者  作者: 吉越 晶
第3章
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31節B change of mind. side セクア

 やけに、(まぶた)が重かった。

 

 ようやく来た出発の日。

 待ち望んでいたはずなのに、やけに怖く、震えている。

 顔を洗うのも億劫で、飯を喉に通すのも憂鬱で、袖に腕を通すのも面倒で。

 扉を開け、視界に入る自分と同じ髪色の空を見てため息が出て、一歩足を進めるのも嫌だった。


 変わる、変わる、変わる、変わる。

 環境が、常識が、仲間が、憧れが。


 一歩踏み込むごとに足取りも重くなり、それが余計に視界を悪くする。


 ……スキップでもすれば、この気持ちは晴れるのだろうか。


「……おい」

「ん?」


 隣に立っている、()()()()()に声をかける。

 いつもなら出てくる悪口も、なぜかその時は全く頭に浮かんでこない。


「お前は……気づいていたのか?」

「何が?」

「……教皇様の真意に」

「ん〜〜〜」


 口を押さえて明後日の方を見る彼女に、自分はまるで動じなかった。

 おそらく、いや間違いなく分かった上での質問だったのだ。


「まあそうだな! だってあいつ、置いてくって言ってるのに悲しい顔してたしさ!」

「……」

「何より、毎日ローサのために病院行ってただろ? 流石にわかりやすいって!」

「……そうか」


 いつからだろう? 周りが変わり始めたのは。

 ローサという少女が現れてからだろうか? 最初の国であった盗賊のリーダーのせいだろうか?


 ──それとも、初めから何も変わってなどいなかったのだろうか。


「にしても相変わらずヤコブはめんどいよな〜。あんなに分かりやすい()()()だしてたのにさ!」

「……サイン?」


 なぜだか、嫌な予感がした。

 見てはいけないような、開いてはいけないような。


「ああ! 気づいて無かったのか?」

「……いや」

「?」

「……」


 ここで「分かっている」と言ってれば、少なくとも、まだマシな結果になっていたのだろうか。


 だが私は、何故だが聞きたくなってしまった。

 否定して欲しかった。罵倒されたかった。


 病院で見た光景が、ただの思い過ごしであると、自分の見間違いであったのだと。


「分かってないようだし教えてやるよ! ほら、あいつ今日までずっとローサに会いに行ってただろ?」


 誰よりも平和を愛し、平等に他者を気遣って行動する。そのためなら、どんな自己犠牲も厭わない。


「あの怪我を治すヤコブの魔力! あれを使って、今日に合わせて少しずつ治療しててさ!」


 人々が思う「神」という姿を、存在を、その身に表した存在。それが教皇様だ。


「アタシもたまに会いに行ってさー、そん時、バレバレなのに隠してるつもりでやっててさ〜」


 だから、目の前で少女と戯れている姿も、病院に毎日足を運んだのも、決して特別扱いなどではない。


 現代に生まれた現人神、救世主、それこそが、ヤコブ教皇という存在で、全人類に平等に、対等に、決して誰か1人のために行動するなど、そんな俗物のような人間的な存在では──


「自分の魔力使って怪我直してたの、この病院で()()()()()だったのにな〜!」」

「──」


 ぐしゃ。


「? ……セクア?」

「………………フラム(・・・)

「おお………え!?!?!?」


 初めて口にしたその名前は、別に大した感想も浮かばぬほどにするっと出て──


「……私はもう、お前のことを馬鹿にしない」


 ──目に映る『奇跡』の姿は、それは平凡な輝きになっていた。

これにて3章完結となります。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

面白いと感じて頂けたら、ブクマ、感想、評価の方よろしくお願いします。


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