表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰の預言者  作者: 吉越 晶
第3章
60/180

23節 "魔導士殺し"

 炭鉱内にいた群衆の一人がゆっくりと目を開ければ、そこは先ほどと何も変わらない炭鉱の景色。

 しかし、直前の爆発による光が強すぎたためか、少しばかり暗く感じてしまう。

 そして視線の移す先は、爆発を起こした張本人である赤髪の少女と、ところどころ傷ついている、丸い機体。


 機体の方が巨体のはずなのに、少女の方が大きく見えてしまうのは、気のせいなのだろうか。


 そして当の本人である少女──フラムは、エッグプラントの中の操縦者、プリディスアに対して問いかける。


「威力を抑えたって言ってもよ、あれも効かねーのか。一体どういうカラクリだ?」

「……」


 フラムの問いに、プリディスアは口を開かず、別の方を見つめる。

 その視線の先には、紫色に光り輝くメモリ。そこには、『残量10%』と表記されている。


(ここまでか……)


 対魔導士用決戦兵器〝エッグプラント〟。

 その秘密は、ある()()()()()で作られているところにある。


 その物質の名は、"魔素胆礬(まそたんばん)"。別名──"魔導士殺し"。


 胆礬たんばんと呼ばれる鉱石に、空気中に存在する魔素が混ぜ合わさることで自然的に生まれたそれは、人体そのものへの影響は皆無。

 特質すべきは、()()()()()()()()()()()()()

 そのため、魔法はもちろんのこと、常日頃より魔力をその身に多く宿し、鍛錬を積んでいる魔導士には、()()()()()を発揮した。


 加工が非常に困難であり、そのコストも馬鹿にならないほどかかるため、魔素胆礬(まそたんばん)を使用した対魔導士特化の兵器を作るのは困難であり、結果生まれたのが、試作品『Y-AM4E6(エッグプラント)』。

 生産の過程で魔導士への猛毒性を失い、魔力をかき乱すという性質のみが残った産物。

 しかしその効果も、エネルギー残量が無くなれば消えてしまうもの。

 

 残りの残量は『10%』。力の差も歴然。

 もはや、プリディスアに勝機は無かった。


「……まあ、答えなくてもいいや。とりあえず、中から引き()り出せばいいもんな」


 そう言い、フラムがエッグプラントへと手を伸ばしたその瞬間──


「ま、待て!!!」

「?」


 ふと、誰かに呼ばれる声が聞こえた。

 聞こえた方をフラムが振り返ってみると、そこには、すっかり存在を忘れていた、帝国軍人と人質の奴隷。

 声をかけた軍人は、右手に持ったナイフを人質の首に押し付けている。


「そ、それ以上動けば、こいつの、こいつの命は無いぞ!」

「……」


 それは、あまりにも無謀で、滑稽な作戦だった。

 人質作戦が意味を成さないことは、先の戦いで分かっており、何より、頼みの綱であったエッグプラントも敗北した。


 何をしようとも、この状況が覆らないのは明らか。

 実際、他の兵士たちは(みな)、呆れてその場に座り込んでいる。


「いいのか!? こいつが死ぬぞ!!」

「あのなぁ〜……お前バカなのか?」

「うるさい! 黙れ! 動くな!!」

「……」


 話ても無駄だと悟り、フラムがその兵士を殺そうとしたその時、突如、後ろのエッグプラントが動き出す。


「「「!」」」


 見ていた全員が気づく中、フラムだけは何故か振り返らない。

 幸か不幸か、起き上がったその機体は、そのまま行き着く暇もなく、フラムの背中へと複数の小型ミサイルを射出。


「──だから……当たんねーって」


 しかし、現実とはかくして不条理。

 フラムが振り返らなかったのは、()()()()()()()()()()()から。


 そしてそれを証明するように、フラムは背を向けたまま小型ミサイルを回避。


「そんで、次はどうする──」


 しかし、勝負とは最後までどうなるかわからない。

 

「キャーーーーーッッ!!!」

「!?」


 突如聞こえた叫び声。


 それは、あまりにも偶然だった。

 

 プリディスアの放った小型ミサイルの放たれたその先に、偶然、そうたまたま、彼らが、人質の奴隷と兵士たちがいたのだ。


「……」


 着弾までの刹那、フラムは考える。


(……別にあいつらが死のうが知ったことじゃない。無視だ無視)


 そう、無視でいいのだ。それこそが、フラムの最善手。


(そもそも、なんでアタシが雑魚の面倒を見なくちゃいけないんだ)


 変わるはずのない、自分の在り方に従って。


(ああ……死んでいい……)


 分かっているはずだ。


(──じゃあなんで、アタシは今走ってる?)


 思考とは裏腹に、フラムの身体が動き出す。

 止まらないその足は、すぐさま小型ミサイルを抜き去り、そして人質や兵士たちとの間に立つ。


(大丈夫。これくらいのミサイルなら対処できる)


 魔力を練り、拳に力を入れ始めたその瞬間、ふとフラムの視界に入ったのは、自分と同じく(みな)を守ろうと、隣に並んだ()()()()()


 自分とは違い、魔法の使えない、生身の少女。


「──ッ!!! バカやろーーーーッッ!!!!!」


 フラムが少女に覆い被さり、練っていた魔力が乱れ出す。


 次の瞬間、それら全ての小型ミサイルが爆発し、再び鉱山全体が大きく揺れた。

 人々が、そして少女が目を(つむ)り、耳を抑える。

 その中で僅かに感じた、鼻を霞む焦げた匂い。


 そして、流れる血液。


読んでいただきありがとうございます。

面白いと感じて頂けたら、ブクマ、感想、評価の方よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ