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灰の預言者  作者: 吉越 晶
第3章
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22節 フラムvsプリディスア

 エッグプラントの機体の中、プリディスアは紫色に光っているメモリを見つめる。

 先ほどとは違い、その表示は『残量60%』となっている。


(最初の爆発で5%、先のパンチで3%と言ったところか……)


 思考する外側、突如、機内の無線機が鳴り響く。 不審に思いながらも、プリディスアはそれに応答した。


「誰だ」

『第8師団を率いている分隊長、キリア・ティゴスです! ただいまプリディスア特別大佐と同じ炭鉱内、まさしく真下に位置しており、人質の奴隷たちを確保しております!!』

「そうか」


 答えながら、プリディスアは自身のいる真下、点々とまばらに散っている人影を確認する。

 そしてその中でも特に端の方、出入り口の場所に多くの人影が溜まっているのを視認した。


『人質を使ってその女と交渉すれば、被害を最小限に抑えながらこの場を占拠できると考えます!!』

「いや、人質は使わない。そのままそこで待機していろ」

『え……し、しかし……』

「上官の言うことが聞けないのか?」

『……いいえ。了解しました』


 そう言い残し、無線が切れる。

 プリディスアの視線は、再びフラムの方へと向いた。


(人質か……奴には有効だとは思えんな。何せ周りの被害を何も考えていない)


 先ほどの攻撃然り、フラムの視線は、以前としてプリディスアだけを見据えている。


(……どちらかと言えば、視界に入っていないと言うべき……か……)


 思考の終わり際、天井を蹴り飛ばしてフラムが肉薄。


「──ッ!」


 すぐさま小型ミサイルを放つも、しかしフラムはそれら全てを空中で身を捻りながら回避し、エッグプラントの機体へとしがみつく。


「クソ……!」


 引き剥がそうと動き回るが、しかし接着剤で繋がっているのかと疑うほどに、フラムの体はびくともしない。


「!」


 そして、再びフラムの拳に熱が集まる。

 プリディスアの脳裏に過ったのは、先ほど殴り飛ばされた光景。

 すぐさま踏ん張りを効かせるため、壁に足をつけ、固定する。


(この攻撃で減る()()は僅か3%……! 踏ん張れば問題ない……!)


 受けの姿勢を構えたプリディスアに対し、フラムはただニヒルに笑い、()()()()()()


「……『灼羅拳(ピルグスィア)』」


 発火、炸裂。


「──ッ!?!?!?」


 放たれたパンチは、先ほどなど比べ物にならないほどの威力を見せ、エッグプラントの背後、踏ん張りを効かせるために足を付かせた岩壁に巨大なクレーターを作ってみせる。

 何よりプリディスアが目を見張ったのは、先ほどは僅か「3%」しか減らなかったエネルギー残量が、今回は「6%」も減ったこと。


 揺れる機体、肌を焦がす熱の中、ふと思い出したのは、決戦前、エクリエイから聞いた()()()()()


『魔導士は普段無詠唱で魔法を使う。詠唱する手間が無駄だと感じてね。……けれど実際、詠唱した時の魔法の威力は、無詠唱で唱えた時とは比べ物にならないほどの威力になる』

『何故だ?』

『詠唱はね、導線の役割を担ってるんだ。無詠唱ではバラバラに拡散されたエネルギーが、詠唱込みだと一つの指向性を持って攻撃される。完全詠唱なんてした時には、使用者の実力にもけれど、小さい村ぐらいなら簡単に吹き飛ばせる……』

『……』

『だから気をつけなね。詠唱された魔法には』


 フラムの口にした言葉。威力の上がった魔法。


(こ……これが……詠唱か……!)


 パンチの衝撃で、両者にわずかな間隙(かんげき)ができる。

 その隙を、プリディスアは見逃さない。


「おっ」


 すぐさま離れ距離をとったプリディスアに、フラムは頭をかきながらエッグプラントの装甲を確認。


「ダメージ入ってねーよなー多分」


 されど、再び痛みが走る自身の拳を軽く動かしながら、彼女の笑みは深まる。


「まあ、壊れるまでやればいい話か」


―――――――――――――――


「クソ!」


 なんとか距離をとったプリディスア。いくら攻撃が無効かされてようと、その衝撃までは消すことができない。

 落ち着きを取り戻そうと地面に着地したその瞬間、感じたのは、背筋を凍らす、冷たい殺気。


「──ッ!」


 後ろを振り向いて見れば、フラムが壁を走りながらこちらへと向かっている。


『クソがっ!!!』


 再び射出する幾つかの小型ミサイルを、しかしフラムは綺麗に交わし、さらには殴り飛ばしてミサイル同士をぶつけることで無効化。


「化け物がっ」


 距離を取るため、エッグプラントの足に付いている走行用タイヤを回し地面を走る。

 その様子を見たフラムは、まるで狩りを楽しむハンターのように、目を細めて加速。


「そんなんじゃすぐ追いつくぞ〜〜……と!?」


 だが、か加速しようと地面を踏み込んだその瞬間、不意にフラムの足元が爆発した。

 それは、プリディスアの逃げ際、エッグプラントの足元に格納されていた地雷。

 通常であれば人の体など粉々にするであろうその威力。


 起動した爆発を、プリディスアは固唾を飲んで見守るのみ。


「……ッ」


 そして間も無く、爆煙が晴れ、揺らめく人影が現れた。


「あー痛かった」


 喰らった本人であるフラムは、多少汚れた程度であり、傷の一つも確認できない。


『……ッ……ならば……これでどうだ!!!」


 次にフラムへ向けたミサイル。それは、教会でヤコブに向けて放って見せた、エッグプラントの持つ最高火力の武器。


『吹き飛べーーーッッ!?』


 スイッチを押し、射出するその瞬間、しかしプリディスアは確かに見た。


「『魂眠りし煉獄よ 地獄の輪廻 その刃を持って屠たまえ』……」


 ()()()()

 フラムの隣、そこに現れた、炎を纏いし地獄の番犬。


「『"獄灼獣(カサル・ティノス)" 【勾虎(ピルグリス)】』……!」


 エッグプラントよりも、更にひとまわりは大きいであろう白く輝くその獣は、プリディスアが放ったミサイルをそのまま喰らい、無力化。

 遅れて聞こえてきた極小の破裂音は、フラムの生み出した獣の腹から聞こえた音。


 絶望が、プリディスアの牙を折る。


「爆ぜろ」


 だが、放心状態のプリディスアに、フラムは容赦をしない。

 主の命令に従うように、白き獣はそのままエッグプラントへとしがみつき、自身の体を爆散。


「──ッ!!!!!」


 強烈に輝く閃光。

 炭鉱内の温度は急上昇し、銃を持っていた兵士たちは、熱せられたその武器の温度に耐えきれず、次々と地面に落としてしまう。

 

 その光景を、その場にいた誰かが、後に語った。

 「その時見た閃光は、私たちが昼間、地上で見る太陽に、とても似ていた」


読んでいただきありがとうございます。

面白いと感じて頂けたら、ブクマ、感想、評価の方よろしくお願いします。


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