キリキリ吐くんですわよ!
「まずあなたの知ってる情報を上げてほしいところですわ」
「どのようなものでしょう?」
「元次長検事の対応」
「ああ……切り捨てですよ、もちろん。王家を守るために崇高な死を迎えるだろうと、お手伝いをしたいらしいです」
「それはどこからの情報ですの?」
「私の王城マッサージルームは王家派のサロン化しているのですよ、この状況から逃げ出せなかった貴族や上の状況がわからない下級貴族に……ロバツ王国国境の山に飛ばされる予定の近衛騎士達。好き勝手話してますね」
ガバガバですわね、まぁモレル伯爵家じゃ他から見たら王家の忠臣枠でしょうしね、親子ともども……。第2王子がそれを切り離したかと思うとなかなか……ワタクシたちからしたらファインプレーですわね。
もしかして最大の功績は第2王子?まぁ……無能な敵は味方みたいなもんですわね。
「殺せませんわよ?」
監視は厳しく毒見もしている中で殺せたら誰が殺し高まるわかりですわ。
「でしょうね、でも彼らはできると思っているようです。思うだけなら誰だって神様ですがそれでなれるわけではありませんよ。彼らは自分達が万能か、自分たちが命じれば自分たちが何もしなくても達成することができると思っているようです。それで出来ても自分のおかげというのですから王家派がいかに崖っぷちかがわかるかと」
「あらまぁ、褒美も出せないほど困窮してますの?」
「ろくでなししか残ってないだけですよ」
それは末期ですわね。無い袖は振れないのではなくあっても振らないのは違うでしょうに。
まぁ今更寝返れない人間もいれば、事情を知らず王家を守ることこそが義務と思っている人間もまだいるでしょう。
それこそ去年くらいのアンみたいな。1年でこうなる辺りやはり功績第1位は第2王子なのでは……?
「ま、勝手に人が離れてくれるならそれに越したことはありませんわ、かといっていらない人間に来られても困りますけど」
「タイミングを逃した人間はともかく部下まで無能というわけではないですよ、言い方を変えれば使われる側では優秀であっても使う側に回れば役に立たないなんてよくあることでしょう?」
「そうですね、商会でも営業は完璧でも運用側に立つと役立たずで第一線に戻す人間も多いですしね」
「そんなものです、使われる側で優秀な人間は使い道がありますよ。第2王子程度の人格なら優秀でも捨てればいいでしょうが」
「そこまで問題あるならいりませんわね、ロバツ国境の山へ飛ばしますわ」
「残念ながらこれは宮廷貴族でして……」
「下にも優秀な人間がいるわけですわね、まぁ……あたりまえですか。別に能力主義の国でもないのは上を見ればわかりますしね」
「ええ、まったく」
マッサージ師が筋肉美一つでワタクシの計画を見抜くように足元を救われることも十分ありますわね。
いや、計算外ですがなかなか面白い。こうでなくてはやりがいがありませんわね。
国を採り大陸を手にするのです、簡単にできればそれに越したことはありませんが……苦労なく手に入れたものは脆いともいいます。
ギャンブルで手に入れた金銭のようにワタクシの国を溶かしたら困りますからね。
「そういえば元次長検事の息子に関してはどういう扱いになりますの?」
「何も、きっと忠誠を貫くであろうと」
「そうではなくなにか支援をなさらないんですの?」
「今言った通り、何も。失敗した後王家が罰しなかったのだから慈悲だとでも思っているのでは?」
「5歳の子供相手にそれですか……?」
「なんなら親を口封じで殺してやっとすら思うでしょう、殺せないでしょうがね」
「5歳に忠誠を期待しても仕方ないと思いますけど、面倒も見ないのに忠誠心が生まれるとでも?」
「王国に生まれれば持ってて然るべきものだそうで」
「公爵家を見ていってるのかしら?」
「少なくとも先代国王がヘマを打たなければ持っていたのでは?」
「さぁ……?生まれたときにないものは仮定でも考えるのは難しいですわね。少なくとも祖父も父も持ってはいませんでしたけど」
「でしょうね、私がその立場でも持ちえません」
「しかし現国王陛下には持っているようですが」
「ええ、私が願うのは現国王陛下の処刑回避くらいです、恩がありますので」
悩ましいですわね……王家の人望が尽きたところでひっくり返して首をはねたほうがいいんですけど……。
そのために新聞を使って王家の信用を落としているんですけどね……。
「まぁ権力を持たせなくてもいいです、離宮で幽閉でも手荒に扱わず生かしていただければ恩くらいは返したことになるでしょう」
「なかなかリスクがありますわねぇ……」
「だから私はより一層働かなくてはいけません、この功績であればコイツの願いだ、生かすくらいは考えてやろうと。貴族を貴族であるというそれだけで重用はなさらないでしょう?」
もちろん、家が名家で大きいだけで配慮すると思ったら大間違いですわ。
それにしても物好きですわね、恩があるとはいえ苦難の道ですわよ?ワタクシ的にはそれで相殺したら本当に恩賞は出しませんわよ?
王家にとって……いいえ、国王にとっては本当に忠誠があるのはモレル新伯爵だったというわけですか。意外と見る目がありますわね。
まぁそうでもなければ元は小さな伯爵家だった宰相も重用しないでしょう。公爵家の恨みを手打ちにできるほどの器があればもっとうまく言ったんじゃないかしら。
実際小物で能力が低いものは重要な役職とは程遠いですから使いっ走りに過ぎないんでしょうね。
「では、王宮でもう少し詳しく調べる必要がありますわね」
「アルベマー伯爵令嬢やレズリー伯爵令嬢が調べているのでは?」
「深部を調べるのには直接見るのもありですわ、それの精査は2人の方が私よりも圧倒的に上ですけども」
「そういうものですか」
「そういうものですわ」
ワタクシの仕入れた情報を2人に渡して、情報を合わせて判断してもらう。
それをワタクシが推察していけばいいだけの話ですわ。適材適所、一人で全部できるわけないじゃないですの。
万能の天才なんてそうはいませんわ、人を使うことと調停に関してはぴかいちだったアーデルハイドがいたらもっと楽な場面はありましたわ、まぁ二省炎上に関しては計画的だったのではなく愛ゆえの暴走ですわね。
そもそもアーデルハイドがいたらこうもうまくいったのか、どうかしらね?
ベス→人脈で王宮の情報を仕入れる
クラウ→変装で王宮の情報を仕入れる
キャス→父から情報を仕入れる
王家「できれば王宮に来ないでね(学業が忙しく淑女教育も忙しいでしょうし、第2王子とのことも承知しているから自分を優先してくださいね)」
宰相「絶対に通常時に参内させない」
公爵「いいんじゃないか?」
エリー「私は王宮では何もしませんわ!(チッ!)」




