ご苦労なされましたわね……
「いや、全く地獄としか言い表せませんね。市井の王都民から貢がせようとしたり、女性を無差別で口説いたり、口説けないと誰だと思っているなんて喚いて問題なくてもお金で口止めしたり、レストランで食事して金も払わない、商品を強奪する、暴れる、商会から金をたかり、マッセマー商会もご存知でしょう?第2王子が出入り禁止なのは」
そんな事やってましたの?初耳ですけど。
シャーリーの方はやってないか、言わずともワタクシとの関係でこないと思ってるかかしら?
というか、マジでクソですわね……小説のテンプレクソ貴族みたいですわ。
これ婚約者から愛想尽かされてNTRされるやつですわ。
可哀想な婚約者……ワタクシじゃないですの!
「いやぁ、ララさんが来てからはだいぶマシになりまして……救いの女神ですよ……バレないし、店から蹴り出されないし、自費で賠償しなくて済むし……あとから陛下に報奨という形で補填はありましたがストレスも溜まりますし……何より人間性がとにかく……はぁ……第1王子殿下が亡くなった後でも派閥ができない理由はそういうところです。王太子夫妻になったあとで教育するから耐えてほしいと言われたんですがね、流石に亡くなった時に辞表を出しました。心が折れたので……それでも引き継ぎでしばらくは働きましたが……」
「それは大丈夫でしたの?」
「実際あの時の本業は国王陛下のマッサージ師でして……副業は第2王子の尻拭いでしたが。そのため腕を磨きたいと……王宮医師団統括で父の跡を継いだほうが巡り巡って未来の王太子殿下の為になるでしょうと」
「未来の王太子殿下ね……」
「ライヒベルク公爵令嬢次第ではなにかあるかと思いましたが、あの謁見を見て、沈む船から逃げ出せたとホッとしました」
決断が早いですわね……。
「辞表はいつ?」
「第一報でお二人が亡くなったと聞いた時に即座に出しにいきました。第1王子殿下とブランケット侯爵令嬢の死亡を知らなかったフリをして……第1王子の側近達がそのまま移動するでしょうと。政治に慣れてる彼らのほうがよろしいでしょうと盾にして先程の言い訳で逃げました。まぁ……第1王子側近達はだいたい近衛騎士にいましてね、お察しの通りで」
ワタクシたちが粛清ついでに殺しちゃいましたわね♡
でもまぁ敵だし仕方ありませんわ、そもそも不正が大半だからどの口で言ってるんだかって話ですしね。
「そもそも先が見える人間は第1王子殿下を弔いたいと職を辞して……あの謁見の話が出回った際に領地に逃げました。なんなら今年の入学式以降も静観していた人間も慌てて何とかしてくれと中立派を頼ってますが。真っ先に逃げて賢者を気取っていた人間なんぞ嫌われて当然ですな。特に第2王子の側近を続けながら逃げ道を確保している人間からは……私は第2王子入学時の引き継ぎ完了まで働いていたのでどっちに見られてるんでしょうね」
「中立や静観が一番敵を作る状況は多いですからね、どちらも一理あるや、肩入れしたらまずいなどではなく漁夫の利を狙う場合や、思い切りが悪い場合は。領地に逃げた人間のほうが評価も上がるし……出来が悪いと言うか」
「あれは愚物というのです。あなたほど功績のある方だと大体がそう見えるかも知れませんが。時として評価される人間は誰よりも愚物になる、成り果てるものです」
「肝に銘じておきますわ」
ワタクシがそうならないためにね。
「超法規的措置で完全に中立派が愛想を尽かしましたね、それと司法省制圧おめでとうございます、あれはどうやって?」
「前司法大臣の遺言と推薦ですわ,本当にね……ワタクシの派閥でねじ込もうと思ったんですけど、息子のほうが駄目すぎたんですね」
「王城に来ない人間のことはあまりわかりませんが……まぁその程度だったんですね」
まぁ、どうしょうもないですからね。あの体たらくでは。
「それで結局、決定的なものはなんでしたの?第2王子はそうでしょうけど」
「ポート伯爵子息が女装して第2王子に会っています」
「は?キモッ」
「まぁ否定はしませんが」
ちょっと心の声が漏れてしまいましたわ。
なんでわざわざ女装を?あの感じではかえって目立つのでは?細いといえば細いですけど無理がありますわよ?
「そっちのアレでしたの?」
「いえ、あれはただの女好きですよ。意外とバレてないみたいですね、いまの第2王子周辺は無理やり呼びつけられて無茶振りをされる貴族も令嬢も多いので。誰かは知りませんがなんか変なのが呼ばれてると思ったか、無理やり女装してこいと言われ呼ばれたんだろうとしか思ってないのでは?」
「そこまでですの?」
「権限もないのに司法大臣執務室勤務の遺族全員に断絶と財産没収宣言するようなバカですよ?」
「…………」
全く否定できませんね!
「まぁ、アレでまた離れましたね、むしろ今から第2王子派から寝返ろうと思ってもヘイトを買いすぎて一緒に死ねとしか思われてませんし」
「モレル前伯爵のように?」
「ええ、父のように……まぁ父は国王派でしかないので第1王子殿下すらもどうでもいいとしか思ってなかったでしょう」
「そうですの……」
「まぁ、どうあがいてもこの国自体がお先真っ暗ですからね、明らかに王都に来る人間が増えています。見覚えのない肉体が日に日に増えているのです。そしてひっそり消えていく。超法規的措置といい杜撰な計画続き、そして唐突なポート伯爵子息の頻繁な訪問に自分を忠臣と訴え我々に取り入ろうとする始末、よく私に取り入ろうと思ったと感心しましたね」
あら、わかっていたんですのね?都市部への流入と、一部流出。
まぁアドマイン・ポートはねぇ、その程度のことも調べてないんでしょうけど。
「それと、寝返りですが言葉を正すのならモレル伯爵家自体は公爵閣下からは免除を2年前に頂いていますが……」
「あら、そうですのね、初耳ですわ」
なら別にいいと思いますわ、処断対象でもないでしょう。
「私が寝返りたいのは公爵家というよりはあなたに寝返りたいのですよ、エリーゼ・ライヒベルク公爵令嬢。北方蛮族方面、動かないんでしょう?」
ケルステン・モレル「え?第2王子の教育を約束して引き止めていた第1王子と婚約者が事故死?」
ケルステン・モレル「じゃあな!」
第1王子側近・候補「判断早すぎるだろ未来の王太子だぞ」
第2王子側近候補「我慢すれば国王側近だぞ?我慢が足りないな」
エリー一派「腐りきった近衛騎士の皆さまー粛清ですわー!摘発ですわー!」
第1王子側近・第2王子側近候補達「「ぎゃあああ!」」
エリー「会ったけどクソ第2王子でしたわー!」
第1王子側近・第2王子側近候補「逃げなきゃ……」
ノーマン・第2王子「超法規的措置!」
第1王子側近・第2王子側近候補「え?」
国王「死刑!事故死!」
ノーマン「」
司法大臣執務室勤務遺族「関係者は絶対に許さんぞ……司法省の総力を上げて摘発してやるからな」
第1王子側近・第2王子側近候補「ぎゃあ!」
司法大臣「もう終わり、逝くね。あと関係者遺族は無罪だからな」
エリー「葬式わっしょい!葬式わっしょい!」
民衆「国王カス!」
ジーナ「はい、こいつら全員処罰ね、死刑OKで」
シュテッチ子爵・ルーデンドルフ侯爵「はーい」
第1王子側近・第2王子側近候補「誰かー!助けてくださーい!」
ヘス伯爵「いやでーす!死んで下さーい!」
公爵「無様に死んでくださーい!」
ケルステン・モレル伯爵「あっぶねぇ……」




