エリーちゃんで~す(お茶会終了)
「まぁ、話を戻しましょう。それでゲルラッハ『子爵』の裁判はどうなりそうですの?」
「勝てるよ、王家に届くかはわからないけどね(小声)」
「届かんか」
「皆死んだっすからねぇ、実行役達もゲルラッハ『子爵』を真っ先に売って、王家の命令だと思ったって言ってるみたいっすから」
「ん~?じゃあ王家が貴族の暗殺してること白日にさらせばいんじゃね?」
「そのメンツか前近衛騎士団長と使用人(小声)」
「殺して当然過ぎて追求しても仕方ないか……アレなら……ってなりますね」
「それで?司法大臣執務室勤務の人間の件は?」
「ゲルラッハ『子爵』の命令だそうだ、残念ながら証言に矛盾がないから本当に指示役だな……前近衛騎士団長の『病死』は王命で直接降されたことは証言したがな。あとは途中からゲルラッハ『子爵』が命令を下したそうだ」
最初だけ直接命令したせいで、間にあの程度の人材を挟むのかと突かれると面倒ですわね、ワタクシなら宰相に任せるとか言いますし、引き込みますわね。
やれやれ、昔から狡いのだけは得意ですわね。
どう突くか、できたところで崩せるか……法廷戦術はジーナに任せたいですが……忙しすぎて検察側に立てるかわかりませんわね。
にしても実行役はペラペラ話しましたね、拷問にしては命かかってるとはいえどっちも死にますわよ?その道は。
「なんで話しましたの?」
「王家の命令だから許されると、王家の命令を偽装しての殺人はゲルラッハが悪いと」
「なるわけないやろ……ないよな?貴族的にはセーフなんか?」
「アウト(小声)」
「王命でもアウトだ……」
「暗殺自体が……駄目……」
「そんな理屈がまかり通ったら皆で反乱祭りですわ」
「騎士団と近衛騎士団の仕事に暗殺業務が加わるし……やってないとは言い切れないけどさー……流石に貴族相手には……むしろさー、前の近衛騎士団長だったら騎士団か近衛騎士団に命令が来てもまぁそうだろうなって思うけど……さすがにね~?」
「まぁ、そういうことです。仮にやったとしたらまっ先に内務大臣やその息女が狙われるでしょう」
「そしたら返り討ちで王宮焼き討ちできますのに……」
「真っ先に反乱を起こすし指揮するから政略で追い落とそうとしてるんだ、そもそも何でもありでエリーに勝てるやつは王国の中にいないと断言できる。ルールはエリーへの枷なんだ。切り合いでも組み手でも弓でも剣術でもエリーに勝つ方法はあるが戦争で何でもありだったら勝てない、戦争による決闘は加勢以外は何でもありだからな、殺し合いで急所を狙うことを非難するか?試合なら駄目だろうが命の取り合いでそんな事を言い出すやつは……まぁ、死ぬだろう」
「素手は?」
「ワタクシ素手の殴り合いは自信ありますわ」
「素手は……ちょっと勝てそうなのが浮かばないな、マーグは?」
「む~り~、クラウ?」
「素手だけなら無理っす、素手といいつつ毒針とかなら……ただエリーに気づかれたら何でもありになるんで勝てないっす」
「蛮族から……学んだことが多すぎる……」
「教えたことも多いですわよ?私は大族長ですし、ただ皆でピクニックに行った時に降した蛮族が私のことを変な呼び方してるくらいで」
「バーバリアン?」
「ああ、そうそう。そんな感じの」
「むしろそれ以前の蛮族にはなんと言われてるんだ」
「多かったのは大族長とかですわね、キサルピナ……ワタクシの騎士長がちょっと統一させましたの、いまでも別のいい方もありますけど、私は自主性を重んじますので」
「ああ、あの王国武道会で総合優勝をずっとしていた方だな。私も優勝はしたが少女部門と若年部門だからな。今年からは出ないから対戦できないのが残念だ。まさか5年連続優勝で名誉枠で参加できないとは……」
「戦うだけならセッティングしますわよ?」
「本当か!マーグ!一緒にどうだ!?」
「やめとくー、ルールありでもなしでも絶対勝てないしさ~」
「強者と戦って自らを磨くのが武人だろう?」
「パス!」
私の娘は強いでしょう?もっと褒めるがいいですわー!
「まぁ武人は置いといて、他の呼び方ってなんだったん?」
「ママですわ」
「儘ですか、自然体ですしね」
「猫被って接してないもんね(小声)」
「なんかアレみたいな言い方っすね」
ママって自然体ですの?まぁ母親経験はないしお母様はクセがあるので一般家庭のことはよくわかりませんけど。
最近はママと呼んでくれないことが悩みのタネなんですけど、どうにかならないものですかね?
「そういえば公爵家の騎士は動かさんのか?」
「いまは蛮族対策ですわ、というより前倒しですわね……北方組合で一度停滞したので……」
「勉強しまっせー」
「全部買いですわー!それと商会で新しいバイトを雇う話ですけど」
「シャーリーの商会で人雇うんっすか?」
「ああ……まぁ、しゃーない……当初はもっと早く雇う予定だったんやけどな」
「誰を雇うんですか?」
「平民のエリーちゃんや」
「へぇ……どんな感じ?(小声)」
「さぁ、知らんな」
「どういうことですか?」
「裏方……?」
「私が~シャーリー商会長のもとで働くエリーちゃんで~す」
ワタクシがそういうとまるで汚いアブラムシを見るような、ともすれば後ろに裏切りもが立っていたときのような目で見るワタクシのお友達の皆様。
何を驚いてますの?
「どうかしましたか~?マッセマー商会のシャリー商会長の支部で働くエリーでぇ~す」
「エリーだよな?」
「間違いなく……そうだと思う……」
「エリーちゃんで~す」
「姿形は変わってないのに脳が受け付けない!」
「ジーナ、声張りすぎじゃね、まぁ気持わかるけどさ~喋り方同じじゃね?」
「違いま~す。エリーちゃんは王都出身で~す、うだつの上がらない父と優しい母の間に生まれた女の子で~す」
「変装が得意とは言ってましたけど……何も変えずこうも雰囲気が変わるとは……っす!」
「これ部下に来るんか?怖いわ……」
忘れたようにいいましたわねクラウ。
キャス?ご感想は?
「………………」
「キャスが機能を停止した(小声)」
「じゃあ今日はお開きでいいな」
「モレル新伯爵の調査、元次長検事の子供をどうするか、暗殺者達の処遇、元次長検事の裁判関係、暗殺者周りで王家に届かせる情報があるか、これは期待薄。やれそうなのはモレル新伯爵くらいですわね。解散!」
「急にもとに戻るなよ(小声)」
「気味が…………悪い」
ボロクソですわね?自信あったんですけど?
商会職員「エリーちゃんよく働くし評判いいですよ」
シャーリー「そうか、よかったわ……」
商会職員「シャーリー商会長と呼んでマッセマー商会の統括と区別してるので古参の評判もいいです」
シャーリー「せやろ?うん……能力はあるんや」
商会職員「何か問題でも」
エリー「ただいま~さっきのお客さんですけど~売った宝石はキャンセルで新たに追加購入と定期購入をお願いしたいそうで~す。商会長お願いしま~す♡」
商会職員「なるほど、嬉しい忙しさですね!むしろいいことでしょう?」
シャーリー「せやな……(そのうち商会乗っ取られるんちゃうか?)」




