私こそが頂点に立つのですわー!
キサルピナ「ママはすごいよ」
そして族長会議、もとい私のお披露目に集まったのは百人くらい?の族長だった。
数万人いるにしては少ないですね。ガルバドス傘下の族長であってそのまた傘下がいないとかそういう話ですかね?
私の登場でざわつく族長たちと平静そうな族長たちが別れる、まぁ後者は決闘を見ていたのかもしれませんね。
さて気合を入れ直して……。
「蛮族の皆さまー!私がガルバドス前大族長に変わってこの部族をまとめる新しき大族長!エリーゼ・ライヒベルクですわー!よろしくお願いしますわー!」
やりながら果たしてこの感じでいいのかと思うが、威厳が必要そうだから仕方がない。
「あの新族長……ガルバドス前族長は?引退でしょうか?」
「私が決闘で討ち取りましたわー!目撃してたみなさんも証言してくださいませー!」
「族長シュライヒャー、正々堂々とエリーゼ大族長が前族長バルバドスを見事に討ち取ったことを証言いたします」
「族長リスクス、同じく山の神に誓い証言します」
「族長ベルベル、同じく一族の誇りに誓い証言いたします」
ざわついていた族長たちがその言葉を聞くと居住まいを正し頭を垂れる。
本当に族長決闘での勝利は従う理由でしかないのですのね……。
「私の就任に反対するものは族長決闘を申し込むことを許しますわー!」
いませんわね……。
「私が大族長エリーゼ・ライヒベルク!ここで決闘を申し込まなかったやつは口をつぐみ続けるがいいですわー!」
「大族長、前族長に心酔して服従した部族はいないのでわざわざ反発しません」
「あら?えーと……」
「族長ユグルタ、御前に……」
「ユグルタ族長、どういうことですの?」
「族長決闘や食料事情による服属以外にその族長に心底惚れ込んで服属する場合があります、その場合はその族長が族長決闘敗北後の傘下部族は決闘を申し込むことが来ます」
「では、通常は族長決闘後は全員傘下になりますの?」
「心酔して服従してなければ大抵はそうなります。もっとも心酔してると嘘をつけば大抵はバレバレなので名誉ごと穢されます。そもそも心酔する理由は強さのほうが多いので……族長決闘で勝った方に再度心酔するほうが多いので無意味というか……」
強さ以外の価値観がありませんの?絵画とか見たらこの角で頭ぶつけたらいい武器になるとかいうのかしら?
ガリアが本を書いてたり文化的な謎が深まるばかりですわね。
「では!私が大族長に反対の方はおりませんのね!反対者は挙手!」
しませんね、よし!これで文句言ったらあのとき黙ってたくせにと突き上げてやりましょう!
「あの……大族長……傘下の30部族が食糧危機なので援助をお願いできませんか……」
「構いませんわ!何人ですの!」
「うちは3000人くらいです」
多いですわね……単純計算で100人一部族ですか?その傘下もいたら面倒ですね……。
「大族長、うちも商人から早く物を売って欲しいとせっつかれてるんですが!」
「全員捕らえておきなさい!」
「大族長!山向うの部族が代替わりを聞いて妙な動きをしています!」
「望むところですわ!かかってきなさい!族長決闘なら受けて立ちますわ!」
「大族長!南の蛮族が攻めてくるという話は本当ですか!」
「貴方達のいう南の蛮族が私ですわ!」
「「「「「「「「えぇ!?」」」」」」」」
えー……そこから?最初に挨拶したじゃありませんの蛮族の皆さまーって……。
「大族長は蛮族だったのですか!」
「南の蛮族は族長決闘を受けない小物ばかりかと!」
ひどい言い草ですわね……。彼らの価値観的にはそうなんでしょうけど。
「おいくつですか?」
近所のおじさんみたいな感覚できましたね……。
「4歳ですわー!」
「南の蛮族もこんな隠し玉がいたのか!」
「うーむ、たしかに3歳で族長決闘は断るしかないか……かといって4歳で……4歳か……その年齢で独り立ちとは我々より南の蛮族は厳しいのですな」
蛮族的にも論外じゃないですか……。あたりまえですね……。
「大族長はガリア大族長を騎士にしていた方だぞ!」
「そうです!父は騎士でした!」
「南の蛮族で手強い称号であるあの騎士か!」
「南の蛮族の精鋭である騎士だと!」
「前のガリア大族長とエリーゼ大族長のご関係は!?」
なんで面倒な煽りをするんですかあなた達……。
「私の(哲学と戦闘の)恩師にして(心理学や交渉の)弟子にして最初の騎士ですわー!」
「おお、なんてことだ……」
「娘の私が保証します!ママは父を騎士にして立派な葬儀もいたしました!」
「ママ?そうなのかキサルピナ」
「ガリアは新しい嫁を取ったのか?言われてみれば確かに……口調と態度がイルディコさんににてるな……。4歳を嫁にしたのか!」
「ガリア……あいつ……そこまで……やばいやつだったんだな」
蛮族的にも4歳の嫁がNGと知れてよかったですね。ガリアの株が下がってますけど。
ん?私の株も下がってません?
「違うよ!ママはママだけど!イルディコママじゃないよ!パパのママはイルディコママだけでママはママだよ!」
「?」
「えー?つまり?」
そうなるでしょうね……。これも哲学かもしれない気がしてきましたね。
そりゃこちらを見るでしょうね。あーあ、どうしましょう。
「私は……私の支配下であるこの領土!族長!部族!蛮族!あまねく人々、すべての存在のママですわー!」
「…………」
うーん、当たり前だけど地獄の空気ですね。4歳のママってなんか怪しい響きですね。何かはわかりませんけど。
「私はこの世のすべての頂点に立つ女!私の子どもたちに貴賤も上下も差などありませんわー!等しく私の可愛い子どもたち!蛮族かどうかなんてどうでもいいことですわ!貴方がたも蛮族!私も蛮族!それでいいではありませんの!蛮族をすべてまとめ私の国を作りますわ!いわば蛮族国家!大陸総蛮族化ですわー!」
何言ってるんだろう?我ながら勢いで喋りすぎたかな。
これはまた地獄のような空気に……。
「「「「「「「「「「うおおおおおおーーーーーーー!」」」」」」」」」」
ならないんだ……。私、蛮族のこと理解できてなかった。
やっぱり私自体が蛮族になるしかないか。
「私は平和を作りだしますわ!貧困を滅ぼし!餓えをなくし!誰もが安全に過ごし!虐げられない国を作りますわ!私は大陸の支配者!貴方たちのママ!頂点に立つ唯一の存在!すべての敵を滅ぼすもの!まずは食料事情の改善!未開拓地域を開拓して食料を増産しますわー!蛮族の売るものは私がすべて買い上げそれを他で売り、蓄えに回しますわー!」
そうだ、商会も作らなければ……商人をやってる大叔父に一部任せてみよう。どういう形になるかまでは専門外だから任せよう。
今や公爵家の財源すら握れている私なら蛮族の戦闘や乱取りによる領民への補償で苦しむ下級貴族に貸し付けて影響力を講師することもできる。蛮族領域に接していないからと非協力的な貴族は私の庇護する価値はない、蛮族を通して差し上げましょう!
協力しなかったのだから私が手を差し伸べる必要はありませんよね?
「まず、武力によって族長になったものは私の騎士にしますわ!」
「おお、騎士とは」
「それでは合議でなったものは……」
「安心なさい!合議、人望で族長になったものは私の執事にしますわ!これは全部族共通!誰それの傘下など通用しませんわ!族長はすべて私の騎士か執事!功績あらば出世させますわ!役職の上下はあっても身分の上下は許しませんわー!」
「では傘下部族は……」
「全解体ですわー!騎士部隊は騎士と兵士に分けますわ!これがあなた達の言葉で言う部族!騎士の指揮する兵士や騎士を指揮する騎士が今までの族長ということですわ!食料・必需品ははすべて私が支給しますわー!執事たちは開拓業や商業、工芸品作製の方をメインでそのまとめ役を今までの族長ということですわ!実力を示せば傘下部族が増えることと同じですわー!」
「なるほど」
「そういうことなら……」
逆を言ったら戦争のうまい族長が個人で最強の族長より偉くなるんですけど……まぁそこはいいでしょう。そんな人間は勝手に台頭して、勝手に尊敬されて、勝手に認められます。
王国や周辺に嗅ぎつけられないように名義上はそのまま傘下部族と呼称させておけばいいでしょう。
「私はここに誓いますわ!蛮族領域を平定し、周辺国を飲み込み、王国を降し、この大陸を制覇することを!貴方がたを平和と貧困と飢えのない楽園に導くことを!」
誓う、大族長エリーゼが。公爵令嬢であるエリーゼ・ライヒベルクが。
貴族の誓いは絶対だ、形骸化してる面もあるがそれは誓いを守れなかった貴族が貴族を僭称する存在になっただけのこと。
私は貴族の誓いの命を懸けた神聖さと真摯さを信じているの!
「我が騎士ガリアに誓う!我が家名ライヒベルクに誓う!祖父母に誓う!両親に誓う!爵位に誓う!そして今を生きる愛すべき我が子達に誓う!」
これが私が命を懸けて誓えるものすべて
「私こそが頂点に立つのですわー!」
必ず我が子を、我が子にしてあげるから!
大叔父ベルク・ベルク「俺はどの世界線でも役に立たないぜ!」
エリー「実はどの世界線でも私が処断してますわ!」
ベルク「クソッ!何度やり直しても死んでしまう!」
エリー「(使えなすぎませんか?)」




